希少難治性筋疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201510061A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性筋疾患に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-079
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 林 由起子(東京医科大学・神経生理学)
  • 小牧 宏文(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院小児神経学)
  • 高橋 正紀(大阪大学大学院医学系研究科・神経内科学)
  • 平澤 恵理(順天堂大学大学院医学系研究科老人性疾患病態治療研究センター)
  • 大野 欽司(名古屋大学大学院医学系研究科・神経遺伝情報学)
  • 杉江 和馬(奈良県立医科大学神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
16,882,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では希少難治性筋疾患として
(1)周期性四肢麻痺、非ジストロフィー性ミオトニー症候群といった筋チャネル病
(1’)先天性筋無力症候群
(2)Schwartz -Jampel症候群
(3)Danon病や過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチーなどの「自己貪食空胞性ミオパチー」
(4)封入体筋炎
(5)先天性ミオパチー
さらに、平成25年度より
(6)縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRVまたはGNEミオパチー)
(7)眼・咽頭遠位型ミオパチー
(8)三好型ミオパチー
(9)Marinesco-Sjögren症候群
(10)べスレムミオパチー
を対象として扱う。
診断基準を作成し、全国での患者数の把握、診断ガイドラインの策定を行ってきた。さらに診断基準・ガイドラインの策定や患者数調査にとどまらず、患者検体(DNA、筋生検サンプル、線維芽細胞)を合わせて収集することで、今後の病態研究の基盤整備を行った。診断精度の向上を目的とした遺伝子診断の診断体制の整備も、次世代シークエンサーを用いたスクリーニングを含めて行った。
研究方法
封入体筋炎については新たな診断基準に基づき患者登録、患者検体の集積およびそれを利用した解析研究を行う。三好型ミオパチー、眼咽頭遠位型ミオパチーについても診断基準を確定する。三好型ミオパチーについては次世代シークエンサーを用いた診断も追及する。ベスレムミオパチーについては当施設凍結生検筋レポジトリーにおいて、べスレムミオパチーと考えられる例を抽出し、西野班で報告した例も加えて臨床情報を解析した。縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーについては患者血液または骨格筋よりゲノムDNAを抽出し、サンガー法により全エクソンおよびエクソン・イントロン境界領域のシークエンス決定を行った。先天性ミオパチーに必要かつ十分な診断条件とは何か、について検討し診断基準作成を行った。Marinesco-Sjögren症候群の臨床的特徴を明らかにすることによって、診断基準および重症度分類の作成をめざした。先天性筋無力症候群に関しては、平成25年度までに作成した診断基準の検証・改定を行い、指定難病への登録に向けて、臨床調査個人票案(新規・継続)を作成するとともに、難病指定医向けテキストを作成し、難病情報センターウェブページの原稿を作成した。Schwartz -Jampel症候群に関しては臨床診断・遺伝子診断方法を確立し、本邦における発症者を掌握し、その臨床的特徴、経過などを調査した。筋チャネル病(周期性四肢麻痺、非ジストロフィー性ミオトニー症候群など)疑いの症例について、既知の原因遺伝子についてサンガ―法によるシークエンス解析を施行した。自己貪食空胞性ミオパチー患者の臨床病理学的特徴をもとに診断基準を作成した。また、新規を含めた自己貪食空胞性ミオパチー患者の生検筋の筋病理学的解析を行った。
結果と考察
診断基準・ガイドラインの作製を行ってきている。
また、難病情報センターホームページに上記、2, 3, 4, 6-8, 10の疾患に関して一般向けの病気の解説、医療従事者向けの診断・治療指針を掲載した。また、平成27年1月からウルリッヒ病、自己貪食空胞性ミオパチー、Schwartz -Jampel症候群は、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患に、さらに遠位型ミオパチー、先天性筋無力症候群、封入体筋炎、べスレムミオパチーは指定難病とされることになり、個人調査票の作製に貢献した。診断基準についての学会承認についても、後発の5疾患について2015年度に日本神経学会の承認を得ている。指定難病の書式についても改訂に際し、協力している。
各疾患における診断精度向上の試みについての記述は、各研究分担者の報告書に譲る。また封入体筋炎に関しては、班形成の歴史的な流れがあるため、研究協力者が各々の進展状況を別記、報告している。この中には診断マーカーとして有用な可能性のあるcN1Aについての報告もあり、論文等にもまとめていく予定である。今後多施設での検討結果が待たれるところである。
結論
今後も継続して前向き調査での病態解明や患者数把握が必要である。同時に診断基準の精度についても検証していく。さらに患者血清・筋サンプルを用いた病態解明を行っていく。公費負担を含めた社会的支援も重要であり、指定難病制度の実際の運用にも協力していく。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510061Z