難治性炎症性腸管障害に関する調査研究

文献情報

• 文献番号: 201510051A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
• 研究課題名（英字）: -
• 課題番号: H26-難治等(難)-一般-067
• 研究年度: 平成27(2015)年度
• 研究代表者(所属機関): 鈴木 康夫(東邦大学医療センター 佐倉病院 内科学講座)

研究分担者(所属機関)

• 安藤　朗(滋賀医科大学　消化器内科学)
• 池内　浩基(兵庫医科大学　炎症性腸疾患学講座 消化器外科学)
• 岡崎　和一(関西医科大学　内科学第三講座　消化器内科学)
• 緒方　晴彦(慶應義塾大学医学部　内視鏡センター　消化器内科学)
• 金井　隆典(慶應義塾大学医学部　消化器内科学)
• 杉田　昭(横浜市立市民病院　炎症性腸疾患センター　消化器外科学)
• 仲瀬　裕志(北海道公立大学法人　札幌医科大学医学部　消化器・免疫・リウマチ内科学講座)
• 中野　雅(北里大学北里研究所病院　内視鏡センター　消化器内科学)
• 中村　志郎(兵庫医科大学　炎症性腸疾患学講座　内科部門　消化器内科学)
• 西脇　祐司(東邦大学医学部　社会医学講座　衛生学分野)
• 福島　浩平(東北大学大学院　医工学研究科消化管再建医工学分野　外科学)
• 穂苅　量太(防衛医科大学校　消化器内科学)
• 松井　敏幸(福岡大学筑紫病院　消化器内科学)
• 松岡　克善(東京医科歯科大学　消化器内科学（消化管先端治療学）)
• 松本　主之(岩手医科大学医学部　消化器内科学)
• 渡邉　聡明(東京大学大学院　医学系研究科　腫瘍外科血管外科　外科学)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究（難治性疾患政策研究）
• 研究開始年度: 平成26(2014)年度
• 研究終了予定年度: 平成28(2016)年度
• 研究費: 16,707,000円
• 研究者交替、所属機関変更: 研究分担者交替 長堀正和(平成27年4月1日～平成27年6月30日)→松岡克善(平成27年7月1日～平成28年3月31日） 所属機関異動 研究分担者 仲瀬裕志 京都大学医学部附属病院(平成27年4月1日～平成28年1月31日)→札幌医科大学医学部(平成28年2月1日～平成28年3月31日）

研究報告書（概要版）

研究目的

本研究班は、1973年以降「難治性炎症性腸管障害」に関する研究を長年に渡り牽引してきた研究班の継続とさらなる発展を目指し、いまだ原因不明で難治例・重症例を数多く有するにもかかわらず患者数の増大が著しい炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)・クローン病(CD)の診断、における治療法の確立と患者のQOL向上、および医療経済の適正化を図り国民福祉と社会貢献を目指すものである。

研究方法

研究骨子は、１）本邦におけるIBDの包括的疫学研究を発展させ医療の適正化に寄与すること、２）IBD患者のQOL向上と診療の標準化を目指す治療・診断指針を作成・最新化すること、３）各種臨床的課題を解決し質の高い診療レベル実現に向けた各種臨床試験を立案・実施すること、４）研究成果を広く発信し、実地医療における適正な診療の普及を図ること、５）IBDの重要性に関する国民的認知の普及に努めること
の５つの研究骨子達成を目指し各種プロジェクトを立案した。

結果と考察

平成27年度においては、本研究班の研究立案に沿って十分な成果が得られた。
１)疫学研究においては、逐年的臨床調査個人票に基づく包括的疫学解析を施行しUC,CD
の医療受給者数から有病率・発症率の持続的上昇傾向にあることを明らかにし、UC患者総数は世界第二位となった。UCにおける外的発症要因を探る症例対象研究が昨年度で終了し、CDにおける外的発症要因を探る対象研究を開始中である。また、新難病法に基づく新規電算化用臨床個人調査票の改訂版を作成した。本年より難病疫学班との全国規模の共同研究が開始、一次調査が終了し本年度より二次調査が開始される。
２）新規治療法の登場や本邦における診療の現況に即し、逐年的な内科・外科・小児治療指針の改訂を実施し公表した。日本消化器病学会と共同でIBD診療ガイドライン改訂作業がほぼ終了した。
３）各種多施設共同臨床研究の中で、画像診断法・新規バイオマーカー・治療法・術式に関する多数の臨床研究プロジェクトが立案し実行されている。UC関連大腸癌早期発見に関するサーベランス法の比較試験が終了し、現在論文投稿中である。腸内細菌叢研究の一環として活動期UC患者に対する便移植法の臨床研究成果が報告され、治療成果は認められていない現状で実施法や結果分析など多くの検討課題が明らかにされた。
４）IBD専門医と一般医との医療連携システム構築のモデル型として、北海道における電子化されたIBD病診連携システムの運用を東京医科歯科大学においても試験的運用の試みがスタートした。一般医向けIBD診療冊子「一目でわかるIBD」の改訂作業が終了し、広く国内へ配布する目的でCD化された。
５）国民に向け啓蒙活動として、患者向けに治療内容を解説する冊子「潰瘍性大腸炎の皆様へ-知っておきたい治療に必要な基礎知識」「クローン病の皆様へ-知っておきたい治療に必要な基礎知識」の改訂版を作成し発刊した。新たに妊娠とIBDに関するQ＆Aによる冊子「妊娠を迎える炎症性腸疾患患者さんへ-知っておきたい基礎知識Q&A」の作成と刊行がなされた。

結論

本研究班においてはIBD診療に携わる内科・外科・小児科全ての領域における専門医を網羅した研究体制が構築されている。研究班においては、班研究代表者・分担研究者・協力員および関連研究者全員がスムーズな協調体制を保ち、臨床的活用をめざす各種研究課題を立案し実行に向けて着実に推進されている。今後はより一層、立案された研究課題を推進し意義ある研究成果を数多く生み出し、IBD患者のQOL向上と適正な診療体制を確立すること、医療経済の健全化および広く国民に向けた正確なIBD医療情報の発信すること、が可能になることが大いに期待できる。

公開日・更新日

• 公開日: 2017-03-31
• 更新日: -

収支報告書

• 文献番号: 201510051Z