血液凝固異常症等に関する研究

文献情報

文献番号
201510048A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症等に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-063
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
村田 満(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 冨山 佳昭(大阪大学医学部付属病院)
  • 松本 雅則(奈良県立医科大学)
  • 森下 英理子(金沢大学)
  • 桑名 正隆(日本医科大学)
  • 羽藤 高明(愛媛大学医学部付属病院)
  • 和田 英夫(三重大学 医学部)
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究センター)
  • 宮川 義隆(埼玉医科大学)
  • 小嶋 哲人(名古屋大学 医学部)
  • 宮田 敏行(国立循環器病研究センター)
  • 小林 隆夫(浜松医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
17,006,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はエビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類の作成や改正、診療ガイドライン等の確立や改正及び普及などを目的としている。領域別基盤研究分野「血液系分野」の中で、特に止血血栓領域を対象とし、平成27年度は特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血栓症(先天性血栓性素因)を取り上げた。
研究方法
<ITP>疫学研究に関してはITP臨床調査個人票を基に、新規発症症例数、更新症例数、発症年齢、性、分布、さらには罹病期間、治療内容、合併症、現在のQOL,等を解析した。個人票改訂作業については国際的な動向を考慮し、さらに臨床医に対して記入の労力を軽減すべくより簡便に記載できるように配慮した。ITP診断法の標準化と病態解析を基盤とした新規診断法を検討した。
<TTP>1)本邦の血栓性微小血管症(TMA)の症例集積の継続と症例の特徴の解析、2)Upshaw-Schulman症候群(USS)におけるADAMTS13遺伝子解析の継続、3)TTP治療ガイドラインの作成、4)難治性、再発性TTPに対するリツキシマブの保険適応の拡大、5)ADAMTS13検査の保険収載と測定キットの体外診断薬承認、に向けて活動した。
<特発性血栓症>特発性血栓症の先天的要因である「先天性血栓性素因」の診断基準ならびに重症度分類を作成した。次年度以降に「先天性血栓性素因患者の診療ガイド」や「先天性血栓性素因患者の周術期診療ガイド」の作成に向けて、先天性血栓性素因についての実態調査やアンケートを計画している。
結果と考察
<ITP>臨床個人調査票:平成25年度分をまとめた。発症年齢、更新年齢とも中高年の男女に最も多い事が確認された。医療受給者証所持患者は24,956人であり、過去5年間ほぼ同数であった。今年度解析可能であった臨床調査個人票は13,126人分(53%)であり、新規患者数は2,071人、更新患者数は11,055人であった。本研究班にて作成した「妊娠合併ITP治療の参照ガイド」は、血液内科医以外の診療科の医師も参照できるようにフリーアクセスとした。医師主導型治験として行ったITPに対するリツキシマブ療法に関して、論文発表を行った。個別研究として1)ITP診断におけるIPF%測定の有用性、2) 血小板減少状態での血小板機能解析法の検討、3)抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞検出法の実用化に向けた試みなどが実施された。
<TTP>1)本年度はTMAの中でADAMTS13活性著減TTPを中心に集積した。1998年から開始し、2015年12月末で総数が、1369例となった。2015年1年間での新規登録患者数は46例であり、後天性TTPで23例、膠原病合併TMAで14例が新規登録された。2)USS患者3例においてADAMTS13遺伝子解析を実施し、新規遺伝子異常を3種類同定した。3)昨年度のTTP診断ガイドラインに続き、TTP治療ガイドを作成した。4)医師主導治験の結果をもとに保険適用拡大を目指した活動を行った。5)ADAMTS13検査キットの臨床性能試験を現在実施している。この成果をもとに、次年度は診断、治療ガイドを含んだ診療ガイドラインを論文としてまとめ、それを実際の臨床で生かせるようにADAMTS13検査の保険収載とリツキサンのTTPに対する保険適用拡大を目指して活動を継続する。
<特発性血栓症>「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の診断基準ならびに重症度分類を作成した。作成に当たり「新生児・小児における特発性血栓症の診断、予防および治療法の確立に関する研究班」の研究代表者である山口大学の大賀正一博士の協力を得て、小児の年齢別活性値の下限値などを用い新生児から成人まで用いることができる診断基準を作成した。これら診断基準ならびに重症度分類を用いて「指定難病」の申請を行った。「アンチトロンビン抵抗性に関する研究」では、無症候性PT異常症患者から同定した2種類の変異について活性低下にも関わらず無症候である原因を検索した。「先天性AT欠損症の遺伝子解析」ではAT欠損症疑い10症例のSERPINC1遺伝子解析を行った。「プロテインS-K196E変異の酵素学的解析に関する研究」において血栓症発症の分子メカニズムを検討した。「先天性プロテインS欠損症患者の妊娠管理および女性ホルモン剤使用に関する診療ガイドラインの策定」ではPMDAのデータベースを用いて日本における女性ホルモン剤の副作用としての血栓塞栓症の発症について調査した。
結論
診断基準、重症度分類、診療ガイドの作成、調査票による実態調査や基礎研究を通じ診断・治療法の確立を目指す研究を遂行した。次年度(平成28年度)からは非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)についても本研究班で取り扱うことが決定している。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-12-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510048Z