神経皮膚症候群に関する診療科横断的検討による科学的根拠に基づいた診療指針の確立

文献情報

文献番号
201510039A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的検討による科学的根拠に基づいた診療指針の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-049
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐谷 秀行(慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門)
  • 倉持 朗(埼玉医科大学医学部皮膚科)
  • 太田 有史(東京慈恵会医科大学皮膚科)
  • 筑田 博隆(東京大学附属病院整形外科)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学総合医学講座皮膚科学講座)
  • 吉田 雄一(鳥取大学医学部皮膚病態学分野)
  • 松尾 宗明(佐賀大学医学部小児科)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学整形外科)
  • 今福 信一(福岡大学医学部皮膚科)
  • 齋藤 清(福島県立医科大学医学部脳神経外科)
  • 水口 雅(東京大学大学院医学系研究科発達医科学)
  • 金田 眞理(大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学疫学、予防医学、公衆衛生学)
  • 森脇 真一(大阪医科大学医学部皮膚科学)
  • 林 雅晴(東京都医学総合研究所脳発達・神経再生研究分野)
  • 上田 健博(神戸大学医学部附属病院神経内科)
  • 中野 英司(神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
21,662,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
対象疾患である神経線維腫症1型(NF1)、神経線維腫症2型(NF2)、結節性硬化症(TSC)および色素性乾皮症(XP)はいずれも現時点では根治療法はなく、症状の発来する臓器が多岐にわたるため診療科横断的なアプローチが必要となる。本研究は(1)NF1・NF2・TSCの近年明らかとなった知見を踏まえて、多様な臨床評価を用いた重症度評価を加味した診療指針の改訂後の指針を用いて評価、 (2)XPの診療指針の策定し、患者登録システムへの入力を行い、今後他施設に仕様を拡大する際に想定される問題点の抽出、 (3)神経皮膚症候群に対する診療指針を改訂し、診断技術の向上、臨床治療技術の開発・改良の研究を推進し、患者のQOLの改善に寄与することを目的とした。
研究方法
<NF1>
新NF1の診療ガイドラインの重症度分類では神経線維腫の数値が求められるためインーネットを通じた数値化を可能とするシステムの開発を行った。
日本で最大規模のNF1患者を擁する自施設を受診したレックリングハウゼン病患者について、連携研究機関である慶應義塾大学の協力のもと、164人のNF1遺伝子変異を明らかにした。
DPCの大規模データを用いて神経線維腫症(ICD10 Q850)の診断名をもち、脊髄腫瘍切除術または側弯症手術をうけた患者について、年齢、性別、診断、手術内容、手術合併症、在院日数についての情報を抽出した。
臨床調査票を用いて小児NF1患者の中枢神経合併症の調査研究を行った。主たる調査項目は、患者の知的レベル、ADHD-RSのスコア、SRS2(対人応答性尺度)のスコア、頭痛、偏頭痛の有無とした。
<NF2>
全国臨床調査個人票を用いて807名について重症度や臨床経過に関係する因子を統計学的に解析した。NF2の治療の最適化を目指した治療のアルゴリズムを提案し、多施設共同研究を実施中である。
<TSC>
現在の医学の進歩に合わせたTSCの診断基準の改訂と重症度分類の作成を行った。
<XP>
どの診療科の医師であっても日常臨床に役立つ各診療科横断的な色素性乾皮症(XP)の新規診断基準と重症度分類の策定を行った。
XP患者の神経症状を含めた日常生活動作の重症度スコアに基づいて重症度を検討した。
色素性乾皮症のデータベースへの入力を進め、subtypeの分布状況および各相補性群、遺伝子型による皮膚および神経症状の重症度スケールの経時的変化を評価した。
神経線維腫症1型(NF1)にとどまらず、TSCについても、文献レビューを行い、疫学調査を計画するにあたり、疫学の専門家の助言を得た。
結果と考察
NF1:クリニカルクエスチョンにより、診療ガイドラインには記載されていない、患者ケアに必要な知識を補完する。NF1が坐乗する染色体17q11領域の大きな欠失を示した症例には、臨床的に特徴のある二つのグループがあることを示し、今後の指針に反映させる。
2010年7月から2013年3月までに脊椎手術をうけたNF1患者は、1,113名であった。
3歳以上15歳以下のNF1患者では、自閉症スペクトラム(ASD)0%、てんかん24名(16.9%)、視神経膠腫11名(7.7%)、脳腫瘍5名(3.5%)、脳血管異常6名(4.2%)、水頭症2名などがみられた。

NF2における神経症状のスコアは発症年齢が低いほど点数が高く、経過中に臨床症状スコアの悪化に寄与する因子として、診断時の年齢が若い、頭蓋内髄膜腫があることが有為に関係していた。

TSCについては、診断基準と重症度分類の改訂を完成させた。病態解明の進歩、新しい治療薬の発見に即した新しい診療ガイドラインを作る必要性が出てきたので、関連学会が共同してSEGA診療ガイドラインの作成に着手した。

XP:XP診療ガイドラインを策定し、日本皮膚科学会の承認を得た。
XPの神経症状を重症度スコアによる評価では、5歳以降で経時的に進行しており、客観的な神経学的評価とも一致した。本重症度スコアが神経症状の進行を反映した簡便な評価尺度として有用であることが明らかとなった。
XPのデータベースの解析により、遺伝子解析の効率化により診断までの期間の短縮が示された。それは、患者の予後の改善に直結する。
XP患者の情報(表現型、遺伝型)の管理が進み、XPの重症度別患者数の把握を可能とする。
結論
NF1、NF2,TSCの診療ガイドラインの改訂と重症度分類の改訂を行なった。各診療科横断的に統合的観点から各疾患の診療ガイドラインの策定、重症度分類の策定が進んだ。
XPの診療ガイドラインの策定を行なった。XP患者を施設内で登録し、データベース化する事を目的としてsecurity に配慮した患者登録システムを開発した。XPの診断についてのホームページを開設した。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510039Z