国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討

文献情報

文献番号
201510028A
報告書区分
総括
研究課題名
国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討
課題番号
H26-難治等(難)-一般-035
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 洋一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所)
  • 森崎 裕子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 分子生物学部)
  • 増井 徹(慶應義塾大学医学部 臨床遺伝学センター)
  • 仁科 幸子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 眼科)
  • 松永 達雄(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 聴覚障害研究室)
  • 小崎 里華(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 遺伝診療科)
  • 青木 洋子(東北大学大学院医学系研究科 遺伝医療学分野)
  • 森山 啓司(国立大学法人東京医科歯科大学大学院・医歯学総合研究科)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構・神奈川県立こども医療センター・遺伝科)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター・遺伝科)
  • 古庄 知己(国立大学法人信州大学医学部附属病院・遺伝子診療部)
  • 緒方 勤(国立大学法人浜松医科大学・医学部小児科学講座)
  • 齋藤 伸治(公立大学法人名古屋市立大学大学院・医学研究科新生児・小児医学分野)
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー中央病院・臨床第一部)
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府母子保健総合医療センター・遺伝診療科)
  • 松浦 伸也(広島大学・原爆放射線医科学研究所)
  • 副島 英伸(佐賀大学医学部分子生命科学講座)
  • 吉浦 孝一郎(長崎大学原爆後障害医療研究所・人類遺伝学)
  • 樋野村亜希子(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 難病資源研究室)
  • 沼部 博直(お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,869,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
<奇形症候群医療支援ネットワークの形成>全身疾患である先天異常症候群患者に最善の医療を提供するために全国の専門医と先天異常を専門とする各科の専門医との連携を目的とする。<疾患特異的成長手帳の必要性>プライマリーケア医師・患者家族に対して、年齢に応じた疾患の手引きを提供し、診療の標準化を目指す。<遺伝子変異陽性患者の全国分布の把握>稀少疾患の自然歴や合併症に関する情報を得ることや、将来的な薬物治療の実施を念頭に置き、患者個人のプライバシーを保護しつつ、患者・主治医と研究者の継続的な連携の確保を企図した。<患者由来研究資源の活用のための基盤>研究リソースとするための方法の最適化を行いつつ、医薬基盤研を通じて研究班内外の研究者に公開するためのフレームワークを設計・運用を目的とした。
研究方法
<研究班の体制>日本小児遺伝学会の全面的支援により「先天性異常の疾患群の診療指針と治療法開発をめざした情報・検体共有のフレームワークの確立」班を組織しさらに平成26年度より耳鼻科・眼科・歯科の専門医との連携を深め、「国際標準に立脚した奇形症候群領域の診療指針に関する学際的・網羅的検討」班に発展させた。<研究対象>当該ネットワークを活用し「主要な奇形症候群の診療指針に関する学際的・網羅的検討」を行い、エビデンスに基づいた診療指針の確立・普及を行った。<臨床症状と合併症と変異のデータベース登録>成長発達・合併症にかかわる臨床情報を体系的に収集し、データベース化し、後ろ向きおよび前向きに登録した。先行研究班等が遺伝子診断により診断の確定した奇形症候群患者の遺伝子変異を集積し、国際遺伝子変異レジストリーLOVD形式にて国際的に公開している。<疾患特異的成長手帳>集積した合併症データをエビデンスとして、健康管理のための年齢別のチェックリストを作成・公開し、わが国の医療環境下における妥当性を検証した。
<非典型症例の遺伝子診断による臨床診断基準の再評価>当研究グループにて策定・策定中の臨床診断基準に部分的にのみ合致する患者には、遺伝子診断を実施し、変異陽性例の症状幅を明らかにした。<遺伝子変異陽性患者の登録>各施設の倫理委員会の承認を経て実施した遺伝子診断により、すでに確定診断されている患者のレジストリーを作成し、登録を進めるとともに遺伝子変異のリストを個人情報を削除した上でウェブサイトに公開した。<患者由来研究資源の活用のための基盤>登録のあり方について日本小児遺伝学会の倫理委員会で討議し、学会と研究班の連携の枠組みを策定した。末梢血リンパ球を収集し、「疾患特異的iPS 細胞を活用した難病研究:疾患特異的iPS 細胞技術を用いた神経難病研究」研究班を含む疾患特異的研究者グループに提供した。
結果と考察
【結果】
<臨床症状と合併症と変異のデータベース登録>セントラルデータベースの構築を完了し、HPO形式に従って体系的・網羅的な表現型・症状の集積・登録を開始した。<疾患特異的成長手帳>本研究班の対象疾患45疾患に関して対象基準・重症度分類を策定した。疾患特異的成長手帳に関しては37疾患について策定した。日本小児遺伝学会と連携し、診断基準・診療ガイドラインの普及を図っている。
<患者由来研究資源の活用のための基盤>難病法成立以降の指定難病検討委員会並びに難病対策委員会の議事録データをテキストマイニングの手法を用いて分析し、難病対策に関する議論の主軸を明確化し、将来的に検討が必要な課題について考察した。
【考察】
本研究で策定した疾患特異的成長手帳は、合併症の予防・早期診断という観点から医療の標準化を促し、医療水準の向上に貢献し、ひいては患者のQOL向上に期待できる。また、これにより医療機関と教育・福祉関係者との連携を促進する働きも期待できる。この手引きは研究班のネットワーク活動を通じて得られ、同時に多くの共同研究が遂行された。集積データの臨床医・研究者による活用という難病事業に共通する課題の解決に反映させる。手帳の将来的有用性が示されたので対象疾患の数を増やしていく。研究班で診断基準の作成に関与した疾患のうち、8疾患については、指定難病の診断に必要な遺伝学的検査であることが評価され、保険適応となった。今後、他の指定難病の確定診断のための遺伝学的検査についても、順次、保険適応として認められることが期待される。
結論
平成25年度までの研究班で、疾患毎に起草したあと、研究分担者間で疾患間の記載方法の統一を図った。この結果、先天異常症候群の共通の特徴として、難聴・言語療法、屈折障害と眼鏡の使用、咬合障害と矯正歯科治療などに関する方針の記載の充実を図った。
 母子手帳を踏襲した疾患特異的成長手帳を37疾患について整備し、患者の年齢に応じたチェックポイントを明記することができた。

公開日・更新日

公開日
2016-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201510028Z