文献情報
文献番号
201510024A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性骨髄不全症の登録システムの構築と診断ガイドラインの作成に関する研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
- 矢部 普正(東海大学 医学部)
- 真部 淳(聖路加国際病院)
- 小島 勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 菅野 仁(東京女子医科大学 大学院先端生命医学系専攻)
- 高田 穣(京都大学 放射線生物研究センター)
- 大賀 正一(山口大学 大学院医学系研究科)
- 小原 明(東邦大学 医学部)
- 照井 君典(弘前大学 大学院医学研究科)
- 古山 和道(岩手医科大学 医学部)
- 多賀 崇(滋賀医科大学 医学部)
- 小林 正夫(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
- 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院)
- 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 國島 伸治(国立病院機構 名古屋医療センター)
- 山口 博樹(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
16,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国における実態が不明であった先天性骨髄不全症においても、平成21年度以降、8疾患(先天性赤芽球癆(DBA)、Fanconi貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血、 Congenital dyserythropoietic anemia、先天性角化不全症(DKC)、Shwachman Diamond syndrome、先天性好中球減少症、先天性血小板減少症(CTP))が、厚労省難治性疾患克服研究事業に採択され、全国疫学調査、臨床データの収集、遺伝子解析が行われ、実態が明らかにされつつある。本研究申請では、共通点の多いこれらの8疾患の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、日本小児血液・がん学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。平成27年度は、データ収集と観察研究を継続し、日本小児血液・がん学会の再生不良性貧血・MDS委員会と連携を取りながらエビデンスに基づいた診断基準と重症度分類の改訂、および診断・治療ガイドラインの策定・改訂を行う。これらの成果物を日本小児血液・がん学会の承認を受けて学会公認の診療ガイドラインとする。
研究方法
本研究申請では、発症数が少なく共通点の多い先天性造血不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部・高田)、CDA(小島・真部)、DKC (小島、山口)、SDS (渡邉)、SCN(小林)、CTP(國島))は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。研究代表者(伊藤)が、DBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。平成27年度は、データ収集と観察研究を継続し、より正確な先天性造血不全の実態の把握を行い、エビデンスに基づいた診断基準の改定、重症度分類の確立、診断・治療ガイドラインを策定する
結果と考察
本研究では、発症数が少なく共通点の多い先天性骨髄不全症8疾患(先天性赤芽球癆(DBA)、Fanconi貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(SA)、congenital dyserythropoietic anemia(CDA)、Shwachman Diamond syndrome(SDS)、先天性角化不全症(DKC)、先天性好中球減少症(SCN)、先天性血小板減少症(CTP))の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進し、本年度は以下の研究を行った。1)正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。2)原因遺伝子が不明なDBAの20家系について全エクソン解析を行い、臨床診断がDBAであった2家系が、他の先天性骨髄不全症(DKC及びSDS)と診断された。3)日本人に特有であるアデヒド分解酵素(ALDH2)のバリアントがFA患者の骨髄不全の増悪因子であることが確認され、特にAA群では生後早期より重症な血球減少と形態異常を呈する症例を認めた。4)DKCと臨床診断された16症例、HHS3症例、不全型DKC21症例を解析し、本邦のDKCの全体像が明らかとなった。5)CTPは、19症例について系統的鑑別診断解析を施行し、ACTN1異常症の診断に有用なバイオマーカーを見出した。6)5疾患(DBA、FA、SA、CDA、DKC)の診断基準および3疾患(DBA、SA、CDA)の重症度分類の改訂、さらに5疾患(DBA、FA、SA、CDA、DKC)の診療ガイドラインの改訂と3疾患(SDS、SCN、CTP)の診療ガイドライン策定を行った。
結論
学会疾患登録事業一次調査情報データベースを小慢データと比較し、詳細な二次データを含む「小児造血障害」データベースの構築の基盤が整った。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、日本小児血液・がん学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。稀少疾患である先天性造血不全症は、診断から治療まで一貫した登録システムの確立、長期フォローアップ体制と最良の治療法の提供までのガイドラインの作成が重要である。本年度は、5疾患(DBA、FA、SA、CDA、DKC)の診断基準および3疾患(DBA、SA、CDA)の重症度分類の改訂、さらに5疾患(DBA、FA、SA、CDA、DKC)の診療ガイドラインの改訂と3疾患(SDS、SCN、CTP)の診療ガイドラインの策定を行た。今年度中に、これらの診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの日本小児血液・がん学会での承認を目指す。
公開日・更新日
公開日
2016-07-19
更新日
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