文献情報
文献番号
201510005A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性中枢性低換気症候群(CCHS)の診断・治療・管理法の確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-007
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 久弥(東京女子医科大学 東医療センター新生児科)
研究分担者(所属機関)
- 早坂 清(山形大学 小児科学)
- 佐々木 綾子(山形大学 小児科学)
- 鈴木 康之(国立成育医療研究センター 集中治療部)
- 山田 洋輔(東京女子医科大学 東医療センター新生児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
829,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome: CCHS)は,呼吸中枢の先天的な異常により主に睡眠時に,重症型では覚醒時にも低換気をきたす疾患である.有病率は,5〜20 万人に1 人と推定されている.典型例では新生児期より発症するが,乳児から成人期に発症する非典型例も存在する.CCHSは、国内では診断・治療指針が策定されておらず、統一された治療・管理が行われていない。本研究ではCCHSの診断基準、重症度分類、診療ガイドラインを作成する。これにより、速やかな診断が可能となり、統一された治療・管理を行うことにより、低酸素脳症の減少、患者の予後改善が期待される。
研究方法
1.診断について
(1)PHOX2B 遺伝子診断法(早坂清、佐々木綾子担当)
CCHSを疑われた国内の殆ど症例に対して、遺伝子診断は山形大学医学部で検索されており、データが集積されている。今回は、病因遺伝子PHOX2B変異を有する208症例、検出されなかった104症例について、臨床的特徴を集積・分析し、診断基準・重症度分類を確立する。
(2)炭酸ガス換気応答試験による診断(長谷川久弥、山田洋輔担当)
炭酸ガス換気応答試験は炭酸ガスの蓄積に対する分時換気量の増加を測定することにより、呼吸中枢の機能を定量的に評価する方法である。CCHSにおいては、この換気応答値の低下が存在することが示されている。病因遺伝子PHOX2B変異を有する症例に対して炭酸ガス換気応答試験を施行し、炭酸ガスに対する反応性と遺伝子変異型との関連を調べる。
2.治療および管理について(鈴木康之担当)
人工呼吸方法は、気管切開陽圧人工呼吸管理、気管切開以外では鼻マスク、フェースマスク、横隔膜ペーシングなどが行われているが、症状、年齢に応じた治療指針を策定し、低酸素脳症を回避することが重要である。遺伝子型によっては、巨大結腸症や自律神経症状が多く、また神経芽細胞腫の合併も認められることから、遺伝子型を考慮した呼吸管理法を検討する。
(1)PHOX2B 遺伝子診断法(早坂清、佐々木綾子担当)
CCHSを疑われた国内の殆ど症例に対して、遺伝子診断は山形大学医学部で検索されており、データが集積されている。今回は、病因遺伝子PHOX2B変異を有する208症例、検出されなかった104症例について、臨床的特徴を集積・分析し、診断基準・重症度分類を確立する。
(2)炭酸ガス換気応答試験による診断(長谷川久弥、山田洋輔担当)
炭酸ガス換気応答試験は炭酸ガスの蓄積に対する分時換気量の増加を測定することにより、呼吸中枢の機能を定量的に評価する方法である。CCHSにおいては、この換気応答値の低下が存在することが示されている。病因遺伝子PHOX2B変異を有する症例に対して炭酸ガス換気応答試験を施行し、炭酸ガスに対する反応性と遺伝子変異型との関連を調べる。
2.治療および管理について(鈴木康之担当)
人工呼吸方法は、気管切開陽圧人工呼吸管理、気管切開以外では鼻マスク、フェースマスク、横隔膜ペーシングなどが行われているが、症状、年齢に応じた治療指針を策定し、低酸素脳症を回避することが重要である。遺伝子型によっては、巨大結腸症や自律神経症状が多く、また神経芽細胞腫の合併も認められることから、遺伝子型を考慮した呼吸管理法を検討する。
結果と考察
1.診断について
1) PHOX2B遺伝子変異
臨床的にCCHSと診断された230名のうち,PHOX2B遺伝子変異を認めた113名であった.遺伝子変異を認めた症例の内訳は25PARM(ポリアラニン伸長変異) 21例,26PARM 31例,27PARM 39例,28PARM 1例,30PARM 4例,31PARM 3例,32PARM 2例,33PARM 5例,NPARM(非ポリアラニン伸長変異)7例であった.
2)炭酸ガス換気応答試験
遺伝子診断がなされているCCHS16例で炭酸ガス換気応答試験を行った。VR CO2はアイビジョン社製呼吸機能測定器を用い、Readらによる5%CO2と95%O2の混合気による再呼吸法にて測定した。全測定の平均は3.5 mL/kg/min/mmHgであった。正常例との比較では正常新生児(40.4±14.8)や正常成人と極めて低値であった。無呼吸を呈する疾患として早産児(24.0±10.0)、成熟児の特発性無呼吸発作(19.2±9.8)との比較においても低値であった。
2.治療および管理について
①気管切開についての検討
気管切開患者の方が非侵襲的人工呼吸管理よりも精神発達の予後が良く、気管切開の時期については生後2か月という検討がある。(苛原ら、日本小児神経学会2013)
発達評価では非侵襲的呼吸管理率が高いPARMに発達遅滞が多い傾向を示した.特に,25PARMでは症状が非典型的で,低換気も持続しない症例もあり,診断が遅れ,適切に管理されないことが多く認められた.情報の周知とともに,気管切開を行った上での安全な人工呼吸管理が必要であると考えられた.
②横隔神経ペーシングについて
CCHSにおける横隔神経ペーシングは海外では普及しているが、我が国では保険適応となっていないため、現在使用患者は2005年に米国で植え込み手術を胸腔鏡下に施行した1例のみである。海外においては1200例以上の横隔神経ペーシングの実績のある治療法である。最近FDA(アメリカ医食品医薬局)が高位脊髄損傷による呼吸不全や筋委縮性側索硬化症(ALS)への適応を認め、我が国においても、2014年よりALS患者での臨床試験が始まっており今後、CCHSにおいても有用性の高い呼吸管理法として期待される。
3.診断基準、重症度分類、診療の手引きの作成
これまでの検討をふまえ、CCHS診断基準案、重症度分類案、診療の手引き案を作成した。
1) PHOX2B遺伝子変異
臨床的にCCHSと診断された230名のうち,PHOX2B遺伝子変異を認めた113名であった.遺伝子変異を認めた症例の内訳は25PARM(ポリアラニン伸長変異) 21例,26PARM 31例,27PARM 39例,28PARM 1例,30PARM 4例,31PARM 3例,32PARM 2例,33PARM 5例,NPARM(非ポリアラニン伸長変異)7例であった.
2)炭酸ガス換気応答試験
遺伝子診断がなされているCCHS16例で炭酸ガス換気応答試験を行った。VR CO2はアイビジョン社製呼吸機能測定器を用い、Readらによる5%CO2と95%O2の混合気による再呼吸法にて測定した。全測定の平均は3.5 mL/kg/min/mmHgであった。正常例との比較では正常新生児(40.4±14.8)や正常成人と極めて低値であった。無呼吸を呈する疾患として早産児(24.0±10.0)、成熟児の特発性無呼吸発作(19.2±9.8)との比較においても低値であった。
2.治療および管理について
①気管切開についての検討
気管切開患者の方が非侵襲的人工呼吸管理よりも精神発達の予後が良く、気管切開の時期については生後2か月という検討がある。(苛原ら、日本小児神経学会2013)
発達評価では非侵襲的呼吸管理率が高いPARMに発達遅滞が多い傾向を示した.特に,25PARMでは症状が非典型的で,低換気も持続しない症例もあり,診断が遅れ,適切に管理されないことが多く認められた.情報の周知とともに,気管切開を行った上での安全な人工呼吸管理が必要であると考えられた.
②横隔神経ペーシングについて
CCHSにおける横隔神経ペーシングは海外では普及しているが、我が国では保険適応となっていないため、現在使用患者は2005年に米国で植え込み手術を胸腔鏡下に施行した1例のみである。海外においては1200例以上の横隔神経ペーシングの実績のある治療法である。最近FDA(アメリカ医食品医薬局)が高位脊髄損傷による呼吸不全や筋委縮性側索硬化症(ALS)への適応を認め、我が国においても、2014年よりALS患者での臨床試験が始まっており今後、CCHSにおいても有用性の高い呼吸管理法として期待される。
3.診断基準、重症度分類、診療の手引きの作成
これまでの検討をふまえ、CCHS診断基準案、重症度分類案、診療の手引き案を作成した。
結論
CCHS診断基準案、重症度分類案、診療の手引きを作成した。今後、さらなる検討を加え、CCHSの統一された診断、管理がなされ、予後改善に寄与することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2016-07-19
更新日
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