追跡終了後コホート研究を用いた共通化データベース基盤整備とその活用に関する研究

文献情報

文献番号
201508003A
報告書区分
総括
研究課題名
追跡終了後コホート研究を用いた共通化データベース基盤整備とその活用に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
玉腰 暁子(北海道大学大学院医学研究科 社会医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 大橋 靖雄(中央大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内で実施され追跡を終了した複数のコホート研究情報を共通化し、その利用環境を整え、将来にわたって向後終了するコホート研究も組み入れ可能な体制を構築するために必要な事項を検討することを目的としている。統計法の規定により、人口動態統計情報を利用して把握している死因情報は、データアーカイブに付加して二次利用できないことから、昨年度に引き続き①現制度化での利用方法の提案を行った。また、死因情報の付加如何にかかわらず、人々の生活と健康に関する情報を取り扱うコホート研究では対象者の個人情報保護等に関する配慮が求められることから、②アーカイブ化を進めるに際して必要なガイダンス項目を整理した。一方で、現状では死因情報の二次利用は認められていないものの、追跡が終了したコホート研究を二次利用する際にはその価値は極めて高いことから、③付加して提供することを可能にするための統計法解釈の論点を提示した。最後に、本研究で取り扱っているコホート研究は指針や個人情報保護法施行以前から開始されていることから、2015年に行われた個人情報保護法改正により病歴が要配慮個人情報となったことによる研究への影響を検討した。
研究方法
①現制度下で二次的に死因情報を利用するため、国内外の医療(臨床)データ連携、疫学共同研究などにおける分散型ネットワークの先行事例を収集した。
②昨年度までの研究成果や先行する分野のデータアーカイブセンターのガイドライン等を参考に、特に研究開始時期のデータ取り扱いが現在のものと異なり、かつ多数を取り扱う疫学研究データのアーカイブ化の場合にガイダンスに含めておくべき項目を検討した。
③統計法の位置づけと人口動態統計資料の利用価値の観点から、情報関係法制に詳しい法律学の専門家である友岡史仁日本大学法学部教授を交え、検討を行った。
④個人情報保護法の条文、特に要配慮個人情報に関する規定を確認するとともに、疫学研究者、特にコホート研究の代表者から現在の運用等に関する情報を得るとともに議論を行った。
結果と考察
疫学研究により得られたデータを広く共有化するためのシステムであるデータアーカイブ化に向け検討を行った。統計法の規定上、死因情報を付加してのデータ公開・二次利用は認められていないことなどを踏まえて、現制度下での運用方法につき、分散型ネットワークについて国内外の実例を収集し、疫学研究追跡終了後のコホートデータの共通利用を行う上での課題を検討した。医療(臨床)データ連携、国際疫学共同研究での5つの先行事例を収集し検討を行ったところ、医療(臨床)と疫学研究の事例では、データ連携(交換)の目的(必要とする背景)、運用方法などが異なっていることが明らかとなった。また、データアーカイブの利活用を進めることを念頭に、データ提供の際に従うべきガイダンスに含める必要がある項目をA対象者の個人情報保護、Bインフォームド・コンセントと倫理審査、C知的財産権の帰属、D寄託する項目/しない項目の判断、Eデータ提供先の制限、の5点に整理した。
 一方で、エンドポイントとしての死因情報は非常に価値が高いものであることから、追跡が終了したコホート研究の二次利用を進めるために、死因情報のソースとなる人口動態統計調査の有効活用の方策を模索することが望まれ、その際の論点を2つ(A統計法の解釈運用を変更することで足りるのか、B統計法とは異なる別立法を行う必要性があるのか)を提示した。最後に、改正された個人情報保護法において、病歴が要配慮個人情報に位置づけられたことから、以前から行われているコホート研究において生じうる影響を検討した。その結果、追跡情報の入手を医療機関等から受けている場合に、過剰反応により情報が提供されないことが懸念された。
結論
 疫学研究により得られたデータを広く共有化するためのシステムであるデータアーカイブ化に向け検討を行った。統計法の規定上、死因情報を付加してのデータ公開・二次利用は認められていないことなどを踏まえて、現制度下での運用方法につき、分散型ネットワークについて国内外の実例を収集し、疫学研究追跡終了後のコホートデータの共通利用を行う上での課題を検討した。また、データアーカイブの利活用を進めることを念頭に、データ提供の際に従うべきガイダンスに含める必要がある項目を整理した。一方で、死因情報のソースとなる人口動態統計調査の有効活用の方策を模索することが望まれ、その際の論点を2つ提示した。最後に、改正された個人情報保護法において、病歴が要配慮個人情報に位置づけられたことから、以前から行われているコホート研究において生じうる影響を検討した。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

文献情報

文献番号
201508003B
報告書区分
総合
研究課題名
追跡終了後コホート研究を用いた共通化データベース基盤整備とその活用に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
玉腰 暁子(北海道大学大学院医学研究科 社会医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 大橋 靖雄(中央大学理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、国内で実施され追跡を終了した複数のコホート研究情報を共通化し、その利用環境を整え、将来にわたって向後終了するコホート研究も組み入れ可能な体制を構築するために必要な事項を検討することを目的とした。
研究方法
①米国ならびに国内で先行している社会科学分野の事例と留意点を確認し、今後の方向性を考える一助とするため、各分野の専門家より情報を得た。
②三府県コホートデータ約10万例全てを用い、一意性の検討を行った。
③現制度下で二次的に死因情報を利用するため、研究の都度、コホートデータに死因情報を付与する方法について、JALSデータを用い検討した。また、国内外の医療(臨床)データ連携、疫学共同研究などにおける分散型ネットワークの先行事例を収集した。
④これまでの研究成果や先行する分野のデータアーカイブセンターのガイドライン等を参考に、特に研究開始時期のデータ取り扱いが現在のものと異なり、かつ多数を取り扱う疫学研究データのアーカイブ化の場合にガイダンスに含めておくべき項目を検討した。
⑤統計法の位置づけと人口動態統計資料の利用価値の観点から、情報関係法制に詳しい法律学の専門家である友岡史仁日本大学法学部教授を交え、検討を行った。
⑥がん登録推進法の規定及び同法に関する政省令を読解し、関連する研究者と議論することにより、追跡終了後コホート研究を用いた共通化データベースが構築された場合における、がん登録情報(がん罹患情報と死亡者情報)の利用をめぐる諸問題について考察した。
結果と考察
統計法の規定上、死因情報を付加してのデータ公開・二次利用は認められていないことなどを踏まえて、現制度下での運用方法を2つ提案した。一つ目はアーカイブセンターなどに死因情報以外のデータを集約管理し、必要に応じて従来通りの死因照合作業を実施し、死因を付加したデータセットを作成し解析を行う方法である。二つ目は、データを保持者のもとに置いたまま、必要と判断した情報だけを選択的に共有させる分散型ネットワークによる方法である。また、実データを用いて、一意性に関する検討を行い、10万人規模のコホート集団はもちろん、100例規模のコホート集団でも分類数が全対象者数の40%程度で、ユニークセルの割合が80%に達していたことから、コホートの規模にかかわらず、80%程度のレコードは一意性があるものとして対応する必要があることを示した。これら研究成果や他国・他領域での実例を参考に、データアーカイブの利活用を進めるため、データ提供の際に従うべきガイダンスに含める必要がある項目をA対象者の個人情報保護、Bインフォームド・コンセントと倫理審査、C知的財産権の帰属、D寄託する項目/しない項目の判断、Eデータ提供先の制限、の5点に整理した。一方で、エンドポイントとしての死因情報は非常に価値が高いものであることから、追跡が終了したコホート研究の二次利用を進めるために、死因情報のソースとなる人口動態統計調査の有効活用の方策を模索することが望まれ、その際の論点を2つ提示した。
結論
税金を投入して構築されたコホート研究データをアーカイブ化し二次利用環境を整える意義は大きいが、疫学研究では生活習慣や生活環境のみならず、個人の心身面の健康状態情報を収集することから、その取り扱いには慎重であることが望まれる。三府県コホートを用いた一意性の検討からも明らかなように、多数を対象に多項目のデータを長期にわたって収集するコホート研究では、一意性があるものとの前提で対応を考える必要がある。今回、特に追跡の終わったコホート研究の利活用を進めることを念頭に、データ提供の際に従うべきガイダンスに含める必要がある項目を5点に整理した。今後、追跡が終了したコホート研究データの寄託を進める際の指標になるものと考えられる。
一方でコホート研究にとって死因情報は非常に重要なものであり、利用できないことによりアーカイブデータの二次利用の価値は低下する。統計法の従来の解釈経緯などといったコホート研究とは異なる議論の方向性が必要と考えられ、医学分野の知見だけではない法学分野からの知見に照らし、今後、より視野を広げた説得力ある議論の展開が不可欠である。なお、がん登録から得たがん罹患情報の研究目的での二次利用についても、今後同様の検討が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201508003C

収支報告書

文献番号
201508003Z