国際分類に基づくわが国の公的がん研究費俯瞰的分析とその方法論及び戦略提言に関する研究

文献情報

文献番号
201507019A
報告書区分
総括
研究課題名
国際分類に基づくわが国の公的がん研究費俯瞰的分析とその方法論及び戦略提言に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-020
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 康弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター 企画戦略局)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 輝彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所)
  • 小川 俊夫(国際医療福祉大学 大学院)
  • 喜多村 祐里(津田 祐里)(大阪大学 医学系研究科)
  • 山本 精一郎(国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,257,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん研究費の適切な配分を実現するために、CSOと呼ばれるがん研究の目的別分類を用いた分析手法が米国国立がん研究センターにおいて開発され、先進諸国のがん研究費配分機関によって組織された国際がん研究パートナーシップを通じ、米国のみならず英国や仏国等の主要FAにおいて活用されている。
研究年度を通じて国内外の諸機関と積極的に連携して公的がん研究費の情報を収集してCSO分類を行い、詳細な分析と政策提言を実施する。
研究方法
本研究は、わが国の公的がん研究費に関するデータ集積と「公的がん研究費データベース」の構築、データベースを用いた詳細分析、先進諸国のがん研究費配分との比較研究、分析結果を踏まえた考察と政策提言の手順で実施する。
1.研究班の組織
 各分野の専門研究者等からなる研究協力者を含めた研究班を組織し、データ集積と分析を実施する。研究班として、関係機関にも積極的に働きかけることにより、適確な政策提言に向けて取り組むほか、先進諸国の主要FAともICRPを通じて連携する。また必要に応じて、国内外のがん政策や研究の専門家やFAの担当者を招聘し、がん研究のあり方について検討を行う。
2.わが国の公的がん研究費データベースの構築
 厚労科研費、文科科研費、さらに経産省などより配分されているがん関連の研究費を抽出し、データベースを構築する。
(1)データ収集
 以下の関連省庁ごとに、わが国の公的がん研究費の情報を収集する。
(2)データベース構築
 収集したデータを集約し、「公的がん研究費データベース」を構築する。構築にあたり研究費情報に加え、各研究の研究要旨を用いてCSO分類及び臓器別分類を付加する。
3.公的がん研究費データベースを用いた分析
(1)わが国の公的がん研究費の分析
 構築した公的がん研究費データベースを用いて、がん研究費の全容を把握するほか、CSO/がん部位分類別、規模別の解析、がん罹患・死亡・生存割合等との関連解析等の詳細分析を実施する。
(2)先進諸国との比較研究
 ICRPを通じて米国や英国、仏国などの国立がん研究センターのがん研究費データを入手し、わが国のがん研究費との比較分析を実施する。
4.わが国に適したがん研究費の配分とがん研究費分析のあり方に関する検討
 公的研究費データベースを用いた詳細分析と先進諸国の比較分析により、わが国に適したがん研究費の配分について考察し、政策提言を実施する。また、研究費配分と研究成果との連結のあり方や、研究費配分の手法の開発など、今後のがん研究費配分のあり方について先進諸国のFAと情報・技術の交換を図るととともに、わが国に適した枠組みについて検討する。また、わが国に適したがん研究費配分のあり方と、がん研究費の分析に必要な体制やあり方について提言を実施する。
結果と考察
 研究2年目は、研究班メンバーが中心となって公的がん研究費データベースの構築と分析を行った。また、2015年4月にカナダ・トロントで開催されたICRP年次会議に出席し、本研究班の活動について報告し、今後の研究方針などについて参加者と討議を行った。また、国内外の有識者らとの討議を通じて、今後の公的がん研究費データベースのあり方についても検討を実施した。
 研究成果としては、2011年度の公的がん研究費を網羅した公的がん研究費データベースの更新、2012年度の公的がん研究費の抽出と公的がん研究費データベースへの付加、公的がん研究費データベースを用いた2011年度のがん研究費分析、今後の公的がん研究費データベースのあり方に関する検討、である。
結論
昨年度及び今年度研究により、公的に入手可能な情報を用いて、2011年度のわが国の公的がん研究費の大半を網羅できたと考えられる。また、諸外国で用いられているCSO及び臓器コードを用いた分析により、わが国のがん研究費の配分が明らかになったうえに、諸外国との比較分析が可能なったと考えられる。このような国レベルのがん研究費の配分について、本研究で実施したような網羅的かつ正確に把握した例はこれまでにほとんどなく、政策的にも科学的にも大きな成果であると考えている。そのため、現在peer-review journalへの投稿に向けた準備を行っているところである。
 本研究で構築した公的がん研究費データベースを活用することで、わが国の公的がん研究費の特徴の分析と、エビデンスに基づいた今後のがん研究費の配分の多角的な検討が可能になると考えられる。さらに、本研究班で検討しているがん研究費の分析手法は、がんのみならず他の疾患の研究費や国全体の医学系研究費の分析に応用可能であることから、CSO分類あるいは類似の分類を用いた医学系研究費の全容把握と適正配分に資する知見としての成果も期待される。

公開日・更新日

公開日
2016-07-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201507019Z