今後の小児慢性特定疾患治療研究事業のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201506003A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の小児慢性特定疾患治療研究事業のあり方に関する研究
課題番号
H25-次世代-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
  • 小原 明(東邦大学 医学部)
  • 平野 大志(東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院 医学系研究科 小児科学)
  • 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学 医学部 循環器小児科学)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科学講座)
  • 武井 修治(鹿児島大学 医学部 保健学科)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科学講座)
  • 林 雅晴(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳発達・神経再生研究分野)
  • 工藤 豊一郎(国立成育医療研究センター 器官病態系内科部肝臓内科)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院 医学系研究科 小児科学)
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 耳鼻咽喉科)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部 小児科学・臨床遺伝学センター)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部 新生児医学、小児科学)
  • 新関 寛徳(国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 皮膚科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター 小児慢性特定情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、小児慢性特定疾患治療研究事業の適正かつ公正な運用に資する情報の提供及び効率的な研究環境整備のための方法論の開発により、小児慢性疾患対策推進のための基盤となる科学的根拠を提供することを目指して活動を行った。
研究方法
全国の実施主体から厚生労働省に報告される登録データをデータベースを行い、①小児慢性特定疾患治療研究事業登録データのクリーニング・集計およびデータの精度向上のための手法の確立、②登録データを各研究者へ向けて提供しデータ解析を行い、小児慢性疾患対策推進の基盤データとして、厚生労働省等に提供、③平成27年1月の制度改正に伴う課題等を、関係する専門家(日本小児科学会及び分科会、関連学会等)と連携しつつ評価を行うとともに、制度移行に際しての実情調査を各実施主体に対して行い、旧制度から新制度への移行時の状況分析と今後の課題の抽出を行った。更に④医療関係者ならびに患者家族等への関係情報提供の在り方の検討を引き続き継続するとともに、⑤成人移行を見据えた小児慢性特定疾患の診療体制の在り方の検討、⑥小児慢性特定疾患治療研究事業における倫理的・法的諸問題の検討を進めた。
結果と考察
全国の実施主体から厚生労働省に事業報告された医療意見書の電子データを元にデータクリーニングを行い、全国の登録状況を集計し報告した。疾患群に準じた専門分野ごとに、分担研究として登録データの解析を行い、疾病ごとの学会が保有する登録データベースと小児慢性特定疾患治療研究事業(小慢)登録データベースとの比較検討による小慢登録データの利用可能性と課題の抽出や小慢対象疾病と指定難病対象疾病との比較による成人移行時の課題抽出を行った。とくに小慢登録データから重症患者の治療状況や病状から成人移行の課題を見出すなど小児医療に係る有益な知見が得られた。
制度改正にともない対象疾病が拡大したが、各領域で今後の疾病研究への課題検討も行った。また新制度から新しくなった医療意見書データの研究への利活用促進のため、適切な同意の在り方についての検討も行った。関連する情報をまとめポータルサイトに掲載することにより、実施主体関係者、医療関係者のみならず、患者家族や支援に関係する者らへ、広く新制度の情報を提供することに寄与した。
結論
登録データについて横断的・縦断的な集計・解析を行い、小児医療における有益な知見を得た。疾患群別、都道府県別、男女別、年齢別で集計し結果を公表した。今後も引き続きデータの集積を続け、医療関係者・保健関係者のみならず、一般国民に対しても情報提供を進めていく予定である。各領域のデータ解析等から、重症患者等の治療状況や症状の現状が明らかとなり、小児期から成人期へ病態を持ち越す者への援助の重要性が見出された。小児期から成人期への切れ目のない援助として小児慢性疾病対策と難病対策の連携が重要であるため、今後も慢性疾患に対する政策決定に資する資料の提供を続けてゆきたい。疾病研究を推進する上でも登録データの活用は非常に有益であることが示されており、また制度改正後の新しい医療意見書のデータ登録システム開発等にも引き続き活用されることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201506003B
報告書区分
総合
研究課題名
今後の小児慢性特定疾患治療研究事業のあり方に関する研究
課題番号
H25-次世代-指定-002
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
研究分担者(所属機関)
  • 井田 博幸(東京慈恵会医科大学 小児科講座)
  • 小原 明(東邦大学 医学部)
  • 平野 大志(東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院 医学系研究科 小児科学)
  • 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
  • 中西 敏雄(東京女子医科大学 医学部 循環器小児科学)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科学講座)
  • 武井 修治(鹿児島大学 医学部 保健学科)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科学講座)
  • 林 雅晴(公益社団法人東京都医学総合研究所 脳発達・神経再生研究分野)
  • 工藤 豊一郎(国立成育医療研究センター 器官病態系内科部肝臓内科)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院 医学系研究科 小児科学)
  • 守本 倫子(国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 耳鼻咽喉科)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部 小児科学・臨床遺伝学センター)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部)
  • 新関 寛徳(国立成育医療研究センター 感覚器・形態外科部 皮膚科)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター 研究所 政策科学研究部)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、小児慢性特定疾病対策の適正かつ公正な運用に資する情報を作成し、またより効率的な研究環境整備のための方法論を開発することで、小児の慢性疾患対策推進のための基盤となる科学的根拠を提供することを目指して活動を行った。
研究方法
本研究班では、厚生労働省社会保障審議会児童部会による「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」(以下、専門委員会)での検討を踏まえ、最新の医学的知見を反映させつつ、対象疾患の再検討および新たに追加すべき疾患候補の検討、各対象疾患の対象基準の見直し、各対象疾患に対する「診断の手引き」の作成と疾患概要の整備、登録申請に用いる医療意見書の再検討、申請・登録システムの検討等の当該事業に係る様々な課題について、日本小児科学会小児慢性疾病委員会と密接に連携しつつ検討を行った。また登録データを用いた疾患ごとの分析も行った。
結果と考察
旧対象疾病(514疾病)の包含関係等の技術的整理を行い、また新たに追加すべきと考えられた疾病を加え新制度における対象疾病の案を提示した。旧制度では11群であった疾患群を14群に拡大するとともに、大分類及び細分類として疾病の整理を行った。各々の疾病について対象となる四要件(①慢性に経過する疾患であるか、②生命を長期にわたって脅かす疾患であるか、③症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾患であるか、④長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾患であるか)について妥当性の検討を行い、新制度で対象とすべき疾患を呈示した。
対象となる全704疾病(包括的疾病を含めると760疾病)に対し、「診断の手引き」・疾患概要を整備するとともに、医療意見書を全面的に刷新し各疾患専用のものとし、小児慢性特定疾病情報センターポータルサイトを通じ公開した。更に新制度における申請・登録システムについて種々の提案を行い、事業の公正・公平な運用のために必要とされる成果を出すことができた。
全国113実施主体から提出される小児慢性特定疾患治療研究事業登録データをデータベース化を行った。登録データのクリーニング・集計およびデータ精度向上については、実施主体にて電子化された医療意見書データを新たに作成したデータスクリーニング手順書により入力不正の可能性のある箇所の同定を可能とした。平成27年度からは登録用ソフトを改修し、実施主体に配布し、スクリーニング効率を高めた。さらにスクリーニング機能では完全に防止することができない論理エラーが含まれていると思われるデータについても、Probabilistic record linkage の手法を用いることにより、小児慢性特定疾患登録データにおいても縦断的なデータ結合が可能であることを実証した。更に登録データの解析を行い、小児の慢性疾患対策推進の基盤データとして、研究者に向け提供を行い、疾患特有の新しい知見等が得られた。
成人移行を見据えた診療体制の在り方については、日本小児科学会と協力し検討を進め、小児慢性特定疾患治療研究事業における倫理的・法的課題の検討として、登録データの研究利用に不可欠な同意取得に関して検討を行なった。

結論
小児慢性特定疾患治療研究事業は、平成27年1月より大きな改正がなされ、小児慢性特定疾病対策として新たに前進を開始した。
本研究で得られた成果および新たに見いだされた課題を踏まえ、厚生労働省ならびに日本小児科学会をはじめとする小児慢性疾患に関係する諸学会と密接な連携を続け、引き続き母子保健政策に資する情報の提供ならびに各領域の疾患研究を推進してゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201506003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
登録データの登録精度向上の手法を確立し、Probabilistic record linkageによる縦断的なデータ連結の可能性を実証した。小児慢性特定疾病対策の見直しの検討状況を踏まえ、専門学会等と連携して、最新の医学知見等と照合し、対象基準の整理、対象疾患名の整理・評価、新規追加疾患候補の列挙と適合性評価等を行なった。事業公正な運営のため適切な医療意見書、疾患概要、診断基準を作成した。診断基準作成手法の客観性の担保のため、専門医だけでなく看護師や患者代表等のステークホルダーも参加した。
臨床的観点からの成果
登録制度の性質上より重症な患者が多く登録される傾向にあることを生かし、各分野の分析により、実際の重症患者等の治療状況や症状の現状を明らかにした。とくに小児期から成人期へ病態を持ち越す者は、多剤併用や多くの合併症がある等、状態が芳しくないことが多いことが見いだされ、移行期患者への支援が重要であることを示した。小児期から成人期へキャリーオーバーする患者の実態は、小児慢性特定疾病対策と難病対策の二つの事業の連続性を考える上で、重要な知見となった。
ガイドライン等の開発
小児慢性特定疾患治療研究事業の制度見直しに必要な最新の医学的知見の収集ならびにその整理を行い、下記の社会保障審議会等が開催する会議で参考にされた。
「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」第8回(平成25年10月1日)、第15回(平成26年7月25日)、第16回(平成26年7月30日)
新たな小児慢性特定疾病対策における全ての対象疾病について、診断基準の作成ならびに疾患概要の整備を行うと共に、最新の医学的知見を反映させた新たな医療意見書案を作成した。
その他行政的観点からの成果
小児慢性特定疾患治療研究事業の制度見直しに必要な資料として、下記の社会保障審議会等が開催する会議で参考にされた。
「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」第7回(平成25年9月9日)、第8回(平成25年10月1日)、第9回(平成25年10月23日)、第10回(平成25年11月1日)
「小児慢性特定疾病対策等の基本方針検討会」第1回(平成27年7月3日)
その他のインパクト
「小児慢性特定疾病情報センター」ウェブサイトへの情報提供
「小児慢性特定疾病-診断の手引き-(診断と治療社 2016)」発刊
小児慢性特定疾患治療研究事業について(第55会日本小児血液・がん学会学術集会)
小児慢性特定疾病医療支援の新たな展開(第118回日本小児科学会学術集会)
小児慢性特定疾患をめぐって(第48回日本小児内分泌学会学術集会)
皆で学ぼう難病・小児慢性特定疾病の新制度(第57回日本小児神経学会学術集会)
皮膚科領域の小児慢性特定疾病(第39回日本小児皮膚科学会学術大会)

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tomizawa D, Kato M, Ohara A.et al
Favorable outcome in non-infant children withMLL-AF4-positive acute lymphoblastic leukemia: a report from the Tokyo Children's Cancer Study Group.
Int J Hematol , 102 (5) , 602-610  (2015)
原著論文2
Gocho Y, Kiyokawa N,Ohara A.et al
A novel recurrent EP300-ZNF384 gene fusion in B-cell precursor acute lymphoblastic leukemia.
Leukemia , 29 (12) , 2445-2448  (2015)
原著論文3
Kobayashi K, Miyagawa N,Ohara A.
TKI dasatinib monotherapy for a patient with Ph-like ALL bearing ATF7IP/PDGFRB translocation.
Pediatr Blood Cancer , 62 (6) , 1058-1060  (2015)
原著論文4
新関寛徳
総説「小児慢性特定疾病」制度について
日本小児皮膚科学会雑誌 , 35 (1) , 13-19  (2016)

公開日・更新日

公開日
2021-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201506003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
18,000,000円
(2)補助金確定額
15,115,505円
差引額 [(1)-(2)]
2,884,495円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,529,603円
人件費・謝金 4,787,956円
旅費 589,196円
その他 3,608,750円
間接経費 3,600,000円
合計 15,115,505円

備考

備考
各研究分担者が研究費の節約に努めた結果、支出が大幅に抑えられたため。

公開日・更新日

公開日
2018-06-01
更新日
-