染毛剤等による皮膚障害の防止方策に関わる調査研究

文献情報

文献番号
201504033A
報告書区分
総括
研究課題名
染毛剤等による皮膚障害の防止方策に関わる調査研究
課題番号
H27-特別-指定-036
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
染毛剤等による皮膚障害については、これまでも厚生労働省や製造販売業者からリスクについて注意喚起されてきたが、消費者安全調査委員会の事故等原因調査報告書の中で、厚生労働大臣宛に毛染めによる皮膚障害の重篤化を防ぐための取り組みを実施するよう意見が提出された。毛染めによる皮膚障害のほとんどがアレルギー性接触皮膚炎であり、その主要因は酸化染毛剤であることが明らかとなっている。そのため使用しようとする染毛剤に対するアレルギーの有無は消費者が自ら確認することとして、使用前に皮膚アレルギー試験(パッチテスト、以下セルフテスト)を実施するよう推奨し、その方法を製品に表示している。しかし、セルフテストを実施していない人は7割に達し、毛染めで皮膚に異常を感じた人のうち医療機関を受診した人は1割以下と報告されている。皮膚障害発症の低減には、染毛剤の感作リスクやセルフテスト方法及びその実施を周知する方法の改善が重要と考えられる。そこで、酸化染毛剤成分の性質及びそれを踏まえたリスク伝達方法、セルフテストの方法に関する諸外国の規定等について調査した。
研究方法
日本、米国、カナダ、中国、韓国、インド、南アフリカ、メキシコ、オーストラリア、台湾、欧州連合(EU)、東アフリカ共同体(EAC)、アラブ湾岸協力会議(GCC)、南米南部共同市場(MERCOSUR)、東南アジア諸国連合(ASEAN)における染毛剤に関する規定や自主基準、並びに成分の情報、さらに製品の注意表示などを、日本ヘアカラー工業会への委託調査あるいは文献検索によって得た。
結果と考察
酸化染毛剤の有効成分として使用できる成分は染毛剤製造販売承認基準で定められている。酸化染料が酸化剤により酸化されて結合し、二核体または三核体を形成し発色すると報告されていた。酸化染毛剤により引き起こされる皮膚障害の多くは主として24~48時間後に起こる遅延型アレルギーで、短時間でアナフィラキシーが起きる場合もある。日本で使用できる成分のうち酸化染料22成分および直接染料等5成分がEUのリスクフレーズR43に相当する感作性物質に分類されることがわかった。
消費者へのリスク伝達としては、製品の注意表示の他、施術を行う理美容師による知識伝達が重要である。外箱及び添付文書の注意表示について、日本国内で販売されている製品はほぼ同じ表示内容であるが、諸外国で製造販売されている製品は、同じ製品でも販売される国によって、また同じ国で販売されている製品であっても会社間でそれらの注意表示、セルフテストの名称及び方法等に違いがあった。セルフテストの実施及びその方法が規定されていたのは15の国や地域のうち日本、カナダ、韓国、インド、台湾及びEACで、実施のみ規定されていたのが米国、中国、南アフリカ、メキシコ、オーストラリア、GCC及びMERCOSURであった。ASEANには規定がなく、EUでは業界の自主基準でセルフテストの実施のみ定めていた。セルフテスト方法を規定している国や地域では、塗布薬剤の調製方法(1剤と2剤とを混合)や塗布部分を乾燥させる等の方法は同じであったが、塗布部位やアレルギーの判定時間に差異が認められた。一方、セルフテスト方法の規定がない国や地域では、各製造販売業者がそれぞれのセルフテスト方法を決め製品に記載していた。セルフテストの塗布薬剤の調製方法や塗布時間等と反応性に関する事例報告はあったが、セルフテスト方法論の根拠となる学術情報は確認できなかった。なおEUでは現在、セルフテストの実施に関して議論がなされている。
結論
酸化染毛剤成分の有効成分として使用される成分とその性質について調査した。染毛剤製造販売承認基準に定められる成分の多くは感作性物質に分類された。酸化染毛剤による皮膚障害の多くは主として遅延型アレルギーであるが、アナフィラキシーが起きる例も報告されていた。15の国や地域を対象としてセルフテストに関する規定等及び製品の表示について調査した。セルフテストの方法を規定している国や地域では、日本と同様に塗布薬剤は1剤と2剤を混合して調製する点は同じであるが、塗布部位や判定時間に差異があるところがあった。方法に関しての規定が無い国や地域においては、1剤のみで実施するよう記載している製品もあった。現在EUでは、セルフテストの実施そのものについて有効性と危険性が議論されている。同じ製品でも販売される国によって製品外箱及び添付文書の注意表示に差があった。染毛剤による皮膚障害の増加を防ぐには、消費者の酸化染毛剤に対する注意を高めるよう業界として新たな方策をとること、及び施術を行う理美容師による知識伝達を徹底することが求められる。

公開日・更新日

公開日
2016-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201504033C

収支報告書

文献番号
201504033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,800,000円
(2)補助金確定額
2,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 450,272円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 2,349,728円
間接経費 0円
合計 2,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-24
更新日
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