文献情報
文献番号
201504017A
報告書区分
総括
研究課題名
CO2排出を抑制しながら医療サービスの質を確保する方策に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-017
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
今村 聡(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,325,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、2006年度を基準年とする新たな「病院における低炭素社会実行計画」に資するため、COP21のパリ協定における我が国の約束草案等を踏まえた数値目標の設定や、2013年度・2014年度における目標達成度や温暖化対策の取組み状況を中心に、医療機関がCO2排出を抑制しながらも、健全な病院経営を維持して国民に良質な医療を提供するとともに、地域医療に貢献するため病院が必要とする国等の支援や、制度的枠組等を検討するために行ったものである。
研究方法
本研究は、日本医師会が別途自主的に行った抽出病院(4,585病院)を対象とした「2015年病院における厚生労働省環境自主行動計画フォローアップ実態調査」(別途自主的アンケート調査)を活用し、病院全体のCO2排出推計を行うことや、「パリ協定」に提出された我が国の約束草案を検討すること等により、病院業界におけるCOP21以降の2030年に向けたCO2削減目標を設定した上、その進捗状況を分析し、自助努力を含む今後必要な総合的温暖化対策の体系を示すとともに、病院が必要とする国の支援策や制度的枠組み等を検討・提言した。
結果と考察
「病院における低炭素社会実行計画の2030年度削減目標」は、これまでの目標達成度や、我が国の約束草案等を踏まえ次のような目標を設定することとした。
すなわち、数値目標指標は、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出原単位(病院延べ床面積当りのCO2排出量、単位はCO2換算のkg- CO2/平米)とし、基準年度を2006年度(地球温暖化対策自主行動計画と同じ)として、2030年度までの24年間で、25.0%削減(対前年削減率1.19%)することを目指す。
こうした目標に対し、2014年度のCO2排出原単位の実績は対前年比3.8%減で、基準年度2006年度<100.0>比では78.7となり、8年間の年率平均にすると2.95%減であり、目標とした1.19%減を大きく上回って減少した。
このように目標を上回って減少した要因は、次のような取組み等があったからと考えられる。
・自主的節電対策の実施等によるエネルギー量の削減、特に重油・灯油使用量の減少
・長期的な組織の有無に関わらない省エネ活動の取組み割合の増加
・ほとんどの規模階層でのエネルギー消費原単位の減少
・電力、重油・灯油、ガスのエネルギー消費原単位の減少
・空調、照明を中心とした様々な省エネ活動の推進
・夏期気象条件の変化(冷房デグリーデーの減少)
このように病院業界においては、CO2排出原単位の削減すなわち省エネに大きな努力がなされてきたが、その一方で電力・都市ガス料金の高騰及び再生可能エネルギーの賦課金の急増があった。
このため、病院としては「補助・支援・融資制度等の拡充」や「電気料金の高騰や再生可能エネルギー賦課金の増大に対する医療面での対応」等を中心とする、国の支援策等が求められるものである。また、「新たな『 (仮)地球温暖化対策のための厚生労働省電力・ガスユーザー勉強会』の設置」や「『再エネ特措法改正』後も固定価格買取制度の問題解消」等を中心とする、国の制度的枠組も求められるものである。
さらに、「今後の重要課題としての外部環境の整備等」として、1)2030年に向けた電力提供事業者の「使用端排出係数」削減率の大幅な低減への見直しを、2)国は具体的な「(仮)2050年CO2の80%削減目標実現のための対応支援構想」の策定・実行を、3)「電力システム改革」の地球温暖化対策との政策的整合性の問題と進捗実態の定常的なフォローアップを、提言した。
すなわち、数値目標指標は、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出原単位(病院延べ床面積当りのCO2排出量、単位はCO2換算のkg- CO2/平米)とし、基準年度を2006年度(地球温暖化対策自主行動計画と同じ)として、2030年度までの24年間で、25.0%削減(対前年削減率1.19%)することを目指す。
こうした目標に対し、2014年度のCO2排出原単位の実績は対前年比3.8%減で、基準年度2006年度<100.0>比では78.7となり、8年間の年率平均にすると2.95%減であり、目標とした1.19%減を大きく上回って減少した。
このように目標を上回って減少した要因は、次のような取組み等があったからと考えられる。
・自主的節電対策の実施等によるエネルギー量の削減、特に重油・灯油使用量の減少
・長期的な組織の有無に関わらない省エネ活動の取組み割合の増加
・ほとんどの規模階層でのエネルギー消費原単位の減少
・電力、重油・灯油、ガスのエネルギー消費原単位の減少
・空調、照明を中心とした様々な省エネ活動の推進
・夏期気象条件の変化(冷房デグリーデーの減少)
このように病院業界においては、CO2排出原単位の削減すなわち省エネに大きな努力がなされてきたが、その一方で電力・都市ガス料金の高騰及び再生可能エネルギーの賦課金の急増があった。
このため、病院としては「補助・支援・融資制度等の拡充」や「電気料金の高騰や再生可能エネルギー賦課金の増大に対する医療面での対応」等を中心とする、国の支援策等が求められるものである。また、「新たな『 (仮)地球温暖化対策のための厚生労働省電力・ガスユーザー勉強会』の設置」や「『再エネ特措法改正』後も固定価格買取制度の問題解消」等を中心とする、国の制度的枠組も求められるものである。
さらに、「今後の重要課題としての外部環境の整備等」として、1)2030年に向けた電力提供事業者の「使用端排出係数」削減率の大幅な低減への見直しを、2)国は具体的な「(仮)2050年CO2の80%削減目標実現のための対応支援構想」の策定・実行を、3)「電力システム改革」の地球温暖化対策との政策的整合性の問題と進捗実態の定常的なフォローアップを、提言した。
結論
病院業界としては、国が約束草案として「パリ協定」で採択した、中期目標である2030年までの削減目標をやや上回る、CO2排出原単位の削減を達成することについては、可能性はかなりあると考えられる。
しかし、「地球温暖化対策推進本部」で決定された「地球温暖化対策計画(案)」における、「長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」ことについては、病院業界内だけでの努力には限界があり、CO2排出を取り巻く様々な外部環境の整備等が不可欠と考えられる。
しかし、「地球温暖化対策推進本部」で決定された「地球温暖化対策計画(案)」における、「長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」ことについては、病院業界内だけでの努力には限界があり、CO2排出を取り巻く様々な外部環境の整備等が不可欠と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2016-05-30
更新日
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