文献情報
文献番号
201504011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療保険財政への残薬の影響とその解消方策に関する研究
課題番号
H27-特別-指定-011
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
益山 光一(東京薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,215,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
昨今の厳しい医療財源の中、医療の無駄の排除が求められており、その中で、患者の飲み忘れや思い違いによる残薬やその対応の遅れ等が指摘され、医療の質の向上だけではなく、医療の効率化のためにも、その解消が求められている。最近では、政府においても中央社会保険医療協議会(中医協)などで残薬の解消に向けた対策の必要性が指摘されている。
本研究は、残薬に関する個別事例を網羅的かつ統合的に整理しその効果等に関する調査研究を行い、残薬の最近の実態及びその取組みに関する先駆的活動等を取りまとめ、これからの医療に必要な薬剤師業務の質の向上及び効率化を図ることとし、我が国の医療における残薬の現状について、薬局・医療機関調査、患者調査などの様々な文献を踏まえ、さらに、直近の地区薬剤師会での先駆的取組みについて、その残薬量や残薬額、残薬対策への取組みの意義や残薬対応の効果等を明らかにするとともに、残薬を解消するための方策について検討を行うものである。
本研究は、残薬に関する個別事例を網羅的かつ統合的に整理しその効果等に関する調査研究を行い、残薬の最近の実態及びその取組みに関する先駆的活動等を取りまとめ、これからの医療に必要な薬剤師業務の質の向上及び効率化を図ることとし、我が国の医療における残薬の現状について、薬局・医療機関調査、患者調査などの様々な文献を踏まえ、さらに、直近の地区薬剤師会での先駆的取組みについて、その残薬量や残薬額、残薬対策への取組みの意義や残薬対応の効果等を明らかにするとともに、残薬を解消するための方策について検討を行うものである。
研究方法
まず、我が国の医療保険制度における残薬の状況について、残薬に関する実態調査の実施等が行われた文献において、残薬の額、量、原因等を明らかにするための整理を行った。また、残薬を解消する取り組みについても調査を行い、財政効果等の解明を行った。
また、文献収集の困難な最新の取組みといえる「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」に関して、厚生労働省及び(公社)日本薬剤師会等の協力を得て情報収集を行い、文献調査と併せて、残薬の額や量等について情報収集を行った。
さらに、これらの残薬の情報や調査等の結果をもとに、論文や報告書等では十分に情報収集できていない内容等について、先駆的な取組みを実施していた滋賀県薬剤師会、福岡市薬剤師会、鹿児島県薬剤師会に訪問調査を行い、今後の残薬解消のための課題等について検討を行った。
また、文献収集の困難な最新の取組みといえる「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」に関して、厚生労働省及び(公社)日本薬剤師会等の協力を得て情報収集を行い、文献調査と併せて、残薬の額や量等について情報収集を行った。
さらに、これらの残薬の情報や調査等の結果をもとに、論文や報告書等では十分に情報収集できていない内容等について、先駆的な取組みを実施していた滋賀県薬剤師会、福岡市薬剤師会、鹿児島県薬剤師会に訪問調査を行い、今後の残薬解消のための課題等について検討を行った。
結果と考察
残薬の文献数が236文献ある一方で、実態調査は117文献、残薬量は54文献、残薬額は20文献、残薬の推計額は8文献となっており、残薬についての詳細なデータを収集している文献は少なかった。また、残薬に先駆的に取り組んでいた地区薬剤会からの意見等にもあったとおり、残薬に関するデータ収集についてはその作業量が多くなり業務負担が大きい。例えば一包化された場合の残薬の名称や量についての整理、さらにその薬価を調べデータ化しようとすると、その作業量及び時間ともかなり手間がかかるものであった。したがって、実際に残薬の詳細なデータ収集を行う際には、利便性あるソフトの開発やアカデミアとの連携が必要であるといえる。
一方で、残薬の薬剤師活動や職能について見える化を実施しようとする場合、残薬の量や額のデータ化は医療経済への貢献等を明確にする上で有効であり、今後、さらにその調査の実施方法や結果等について、論文発表等による積極的な公表やデータの蓄積を図るべきである。
また、残薬の取組みについては、残薬についての視点のみで、その再利用に力を入れることだけでは薬剤師職能を発揮したとは言い難く、残薬の相談を通じて、残薬が発生する原因とその対策についてしっかりと調査検討を行うとともに、残薬相談を契機として、患者が薬剤師に相談しやすい環境作りを行うよう留意していくことが重要である。
一方で、残薬の薬剤師活動や職能について見える化を実施しようとする場合、残薬の量や額のデータ化は医療経済への貢献等を明確にする上で有効であり、今後、さらにその調査の実施方法や結果等について、論文発表等による積極的な公表やデータの蓄積を図るべきである。
また、残薬の取組みについては、残薬についての視点のみで、その再利用に力を入れることだけでは薬剤師職能を発揮したとは言い難く、残薬の相談を通じて、残薬が発生する原因とその対策についてしっかりと調査検討を行うとともに、残薬相談を契機として、患者が薬剤師に相談しやすい環境作りを行うよう留意していくことが重要である。
結論
残薬に関する対応(残薬整理、残薬の活用、残薬が発生する原因の究明及びその対策の実施、薬に関する患者の相談対応、不要な残薬の廃棄による医療安全の確保、残薬対応の量や額のデータ化による薬剤師職能の見える化など)は、これまで理解され難かった薬剤師業務内容やその意義について、わかりやすく発信することができるとともに、服用アドヒアランスの向上にも繋がるといえることから、かかりつけ薬剤師・薬局業務の定着に向けて、重要な取組みの一つになるといえる。
残薬業務を適切に実施することで、医療保険財政にも大きく寄与し、さらに、薬物療法の適正使用推進にも関係するといえる。これから本格的に残薬業務に取り組もうとする薬剤師は、残薬整理を中心とした物から見た薬剤師業務ではなく、「この患者の残薬の原因は何か、残薬を減らすように患者の環境等をどうすればよいか」などに主眼をおいた実施しなければならない。そして、その対応において、患者本人や医療関係者、さらに地域医療チーム内からの相談内容等を踏まえ、どのような情報を共有するようにすべきか、得られたデータをどのように生かしていくべきか、成果や課題について論文等でデータの公表・構築に努めていく等の戦略を、地区薬剤師会や他職種の医療関係者、アカデミア等と共に連携して着手することを心掛け、着実に実施していかなければならない。
残薬業務を適切に実施することで、医療保険財政にも大きく寄与し、さらに、薬物療法の適正使用推進にも関係するといえる。これから本格的に残薬業務に取り組もうとする薬剤師は、残薬整理を中心とした物から見た薬剤師業務ではなく、「この患者の残薬の原因は何か、残薬を減らすように患者の環境等をどうすればよいか」などに主眼をおいた実施しなければならない。そして、その対応において、患者本人や医療関係者、さらに地域医療チーム内からの相談内容等を踏まえ、どのような情報を共有するようにすべきか、得られたデータをどのように生かしていくべきか、成果や課題について論文等でデータの公表・構築に努めていく等の戦略を、地区薬剤師会や他職種の医療関係者、アカデミア等と共に連携して着手することを心掛け、着実に実施していかなければならない。
公開日・更新日
公開日
2016-05-12
更新日
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