エビデンスに基づく日本の保健医療制度の実証的分析

文献情報

文献番号
201503002A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づく日本の保健医療制度の実証的分析
課題番号
H26-地球規模-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学)
研究分担者(所属機関)
  • 多田羅 浩三(日本公衆衛生協会 会長)
  • 岡本 悦司(国立保健医療科学院 統括研究官)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院共健康医学保健社会行動分野 教授)
  • 井上 真奈美(東京大学大学院医学系研究科 特任教授)
  • 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学経済学 教授)
  • 川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 教授)
  • 飯塚 敏晃(東京大学大学院経済学研究科 教授)
  • 近藤 尚己(東京大学大学院公共健康医学保健社会行動分野 准教授)
  • 小池 創一(自治医科大学地域医療センター 教授)
  • Stuart Gilmour (スチュアート ギルモー)(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学 助教)
  • Md Mizanur Rahman (エムディー ミジャヌール ラーマン)(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学 特任助教)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,097,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ユニバーサルヘスルカバレッジ(UHC)は、日本の国際的な保健問題に対するヴィジョンの中核にある人々の安全に中心的な役割を果たしている。UHC達成には、国連の持続可能な発展も含まれ、UHC共に保健発展の両輪をなす。UHCを達成した国々は、達成に向けて進んでいる他の国々へ対処を講ずる参考となる。

日本はUHCを1961年に実施し、主要な成果を達成した。このマイルストーンとなる成果により、日本は平均寿命において世界1位である状態が続いている。2011 年の Lancet 誌の日本特集号により、高齢化、NCDの増加、ヘルスケア費用の増加が、日本のヘルスケアシステムの持続可能性に関する挑戦であることが明らかになった。特集号発刊以後、これら諸課題解決に向けた再建策の実施が日本で始まった。アジア太平洋諸国は日本の UHC 導入に関する経験のみならず、低コストで持続可能、平等なシステムを疫学的変遷前後含めて保証するための双方の努力を学ぶことができる。2014 年には、基本的なヘルスシステム機能に関する包括を含めた HIT レポートの基本事項に対する準備を始めるプロジェクトが始まった。

しかしながら、保健システムの将来の方向性を理解し、日本アジア含めて将来の再建計画に対する提案を行うためには、現在の日本のヘルスシステムの特質を理解し、健康に関する平等性と財政リスクを詳細に解析する必要がある。2015 年度には、(1) 日本のヘルスシステムにおける健康格差と財政リスク、および (2) 2000年以降日本政府によって行われている再建策に関する分析および記述、(3) 介護サービス市場における供給者誘発需要仮説の検証を行った。本研究により、日本や関連地域における政策提案や実施を構成した。
研究方法
関連する国税調査および死亡率に関するデータを用いて、ヘルスケアへのアクセスおよび結果の平等性を評価した。厚生労働省、内閣府、ならびにOECDから得たデータを用いて、日本の保健システム再建に関する包括的レビューを行った。JAGESデータを用いて、包括ケアシステム従事者のケアプラン作成、ならびにケアの質に関する基本事項実施に関する能力の評価を行った。利用データでは、ケアの質に対する満足度とケアに関するアンケートを評価した。

厚生労働省の統計調査データである国民健康栄養調査、国税調査ならびに国民生活基礎調査を用いて、日本での健康格差について評価した。保健の水平的公平は集中度を用いて評価し、財政破綻は複数の破綻に関する閾値を用いて評価した。女性によるインフォーマルケアのレベルに対する格差はケアの種類の違いに関するレポートを統計的に解析して評価した。米国高齢者間の保健ケア需要予測を目的に構築された将来高齢モデル (Future Elderly Model: FEM) に基づくミクロシミュレーションモデルを開発し、高齢化を迎える日本における将来の保健ケア需要を予測した。これらの解析結果は、日本の保健財政及び包括的ケアシステムの政策実施に利用した。
結果と考察
本研究では、高齢化とNCDによる負荷が増大している中で日本の保健システムの持続可能性の改善に向けた再建策の進展、ならびに再建による保健ケアの格差の評価を実施した。
本研究で明らかになった事実は、日本の保健システムの主要な再建策とインパクト、将来課題の分析について述べたHITレポート更新の最終段階に組みこまれる予定である。

為政者に対して、本研究の発見から短中期的な視点で以下の3点において政策立案の提案が可能である。
・再建策は既に実施されているが、保険財政の将来的な再建および統合的ケアシステムには、高齢者に低コストで高い質のケアを継続的に提供できることを保証する必要がある。
・保健従事者は高齢化と社会保障、保健ケアシステムの継続的な統合の準備は進んでいる一方で、高齢者ケアの負荷の大部分は個人、すなわちインフォーマルケアによって担われている。
・ケアの質とアクセスに関するリスクは高齢化が進むに連れて悪化すると予想されるため、保健システムが再建注も平等であることを保証する必要がある。

関連する地域の国々は、日本の経験を元にUHCを強化していくプランの実施に学ぶ機会を得ることができる。
結論
高齢化により、日本の保健システムが様々な課題に直面しており、安定的な財政確保と保健格差の不安は国際的にも周知の事実である。再建は既に始まっているが、格差および保健システムの統合に関する新しい視点に注意を向けた将来の保健システムでは、日本は高齢化の課題に適用することが可能であると考えられる。本課題の次年度では、HITレポートの最終稿を準備すると同時に、高齢化とNCDに対応した再建を普及することで、日本の経験が国際保健の改善に貢献することを期する。

公開日・更新日

公開日
2016-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201503002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,626,000円
(2)補助金確定額
6,626,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 736,614円
人件費・謝金 226,250円
旅費 4,098,310円
その他 35,826円
間接経費 1,529,000円
合計 6,626,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-02
更新日
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