文献情報
文献番号
201502001A
報告書区分
総括
研究課題名
医師・歯科医師・薬剤師調査や医療施設調査等を用いた医師確保対策に関する研究
課題番号
H26-統計-一般-001
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
小池 創一(自治医科大学 地域医療学センター 地域医療政策部門)
研究分担者(所属機関)
- 康永 秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学講座)
- 松本 正俊(広島大学医歯薬保健学研究院地域医療システム学講座)
- 井出 博生(千葉大学医学部附属病院地域医療連携部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医師確保対策には様々な側面があるが、医師の偏在の是正と、質の確保・向上が特に重要な課題となっている。本年度は、偏在に関しては、女性医師の増加の影響、若手医師の地域分布、歯科医師の診療科別の偏在の状況、空間統計を用いた医療資源の地理的分布を、質の確保・向上に関しては、専門医に関しては内科系専門医の状況、医療施設の集約化がアクセスに与える影響、ICTの普及と医師・医療機器の分布についての検討、医師以外のメディカルスタッフに関しては、臨床工学技士とリハビリテーションスタッフの配置と効果について検討を行うことを目的とした。
研究方法
本研究では、統計法の規定に基づき、医療施設調査、医師・歯科医師・薬剤師調査等の調査票情報の利用申請を行い、許可を得、必要に応じて既存データとあわせて分析を行うことで、医師確保策に関する多角的な分析を行うこととした。
結果と考察
本研究の結果、男女とも医師の都市部への集中が進んでいる現状が明らかなるとともに、医療提供体制の質を確保・向上するために、専門医制度との調和の必要性、医療機関へのアクセスに配慮する集約化の必要性、限られた医師の有効活用のためのICTの利用の可能性等を示唆する様々な知見を得ることができた。
産科医療機関の集約化に関する研究では、2011年時点における最寄りの産科医療機関へのアクセス状況明らかにするとともに、今後産科医療機関が集約化した場合についての複数のシナリオによるアクセス可能人口をGISを用いて算出し、集約化の方法によってはアクセスの急減を一定程度回避できることを明らかとした。
専門医のキャリアパスに関する研究では、内科系専門医が2年間に専門医を維持するオッズは医籍登録後年数、勤務先、主たる診療科について調整を行っても女性において低いとの結果が得られた。また、内科専門医を保有している病院勤務の医師が、診療所勤務に変更になる場合には、診療所に勤務先を変更した後もほとんどの者が内科系を主たる診療科としている実態を明らかにした。
男女差に着目した医師の地域偏在・勤務地の移動に関する研究では、地理情報システムを用いて移動の距離、時間距離を計算し、集計、解析を行い、当初の勤務地として都市部を選択する医師の割合は高くなっていること、男性医師と比較して女性医師の移動は小さいこと、医師は当初勤務を開始した場所から大きくは離れないこと、移動が最も大きいのは2年目から4年目の期間であるが、臨床研修必修化以降、移動(時間距離)が小さくなる傾向にあること、最近になるほど移動に対する時点の効果が大きくなっていることを明らかにした。
放射線科医の地理的分布の研究では、放射線科医の人数の増加が地理的分布の改善を必ずしもたらさない可能性を示唆する結果を得た。現在の傾向が継続した場合、機器分布と人材分布の乖離がますます進行し、非都市部での放射線科医不足がより深刻化することが懸念された。この問題の解決策の一つとして遠隔画像診断の推進があり、本研究では病院における遠隔画像診断の利用件数が急速に伸びていることによる診断機器と放射線科医の乖離を埋めている可能性を示唆する所見が得られた。
慢性閉塞性肺疾患急性増悪症例のリハビリテーションにおける施設特性の効果に関する研究では、集中的にリハビリテーションスタッフを配置し、患者を集中させることで医療資源の消費を低減させることが可能である事を示唆する所見を得た。
医師・歯科医師・薬剤師調査を用いた歯科医師数の将来予測及び地理的偏在に関する研究では、歯科医師の地域偏在は診療科によって大きく異なっていることを実証的に明らかにし、今後の歯科医師の供給数を検討する上で、診療科別の地域偏在について考慮することも重要であることを明らかとした。
医師以外医療スタッフの分布と配置の効果に関する研究では、臨床工学技士の配置は全国の半分以上の病院でなかったが、臨床工学技士がいる病院では、臨床工学技士が医療機器安全管理責任者に任命される割合が高く、医療機器の安全管理が各病院で充実してきている傾向にあることを明らかとした。
産科医療機関の集約化に関する研究では、2011年時点における最寄りの産科医療機関へのアクセス状況明らかにするとともに、今後産科医療機関が集約化した場合についての複数のシナリオによるアクセス可能人口をGISを用いて算出し、集約化の方法によってはアクセスの急減を一定程度回避できることを明らかとした。
専門医のキャリアパスに関する研究では、内科系専門医が2年間に専門医を維持するオッズは医籍登録後年数、勤務先、主たる診療科について調整を行っても女性において低いとの結果が得られた。また、内科専門医を保有している病院勤務の医師が、診療所勤務に変更になる場合には、診療所に勤務先を変更した後もほとんどの者が内科系を主たる診療科としている実態を明らかにした。
男女差に着目した医師の地域偏在・勤務地の移動に関する研究では、地理情報システムを用いて移動の距離、時間距離を計算し、集計、解析を行い、当初の勤務地として都市部を選択する医師の割合は高くなっていること、男性医師と比較して女性医師の移動は小さいこと、医師は当初勤務を開始した場所から大きくは離れないこと、移動が最も大きいのは2年目から4年目の期間であるが、臨床研修必修化以降、移動(時間距離)が小さくなる傾向にあること、最近になるほど移動に対する時点の効果が大きくなっていることを明らかにした。
放射線科医の地理的分布の研究では、放射線科医の人数の増加が地理的分布の改善を必ずしもたらさない可能性を示唆する結果を得た。現在の傾向が継続した場合、機器分布と人材分布の乖離がますます進行し、非都市部での放射線科医不足がより深刻化することが懸念された。この問題の解決策の一つとして遠隔画像診断の推進があり、本研究では病院における遠隔画像診断の利用件数が急速に伸びていることによる診断機器と放射線科医の乖離を埋めている可能性を示唆する所見が得られた。
慢性閉塞性肺疾患急性増悪症例のリハビリテーションにおける施設特性の効果に関する研究では、集中的にリハビリテーションスタッフを配置し、患者を集中させることで医療資源の消費を低減させることが可能である事を示唆する所見を得た。
医師・歯科医師・薬剤師調査を用いた歯科医師数の将来予測及び地理的偏在に関する研究では、歯科医師の地域偏在は診療科によって大きく異なっていることを実証的に明らかにし、今後の歯科医師の供給数を検討する上で、診療科別の地域偏在について考慮することも重要であることを明らかとした。
医師以外医療スタッフの分布と配置の効果に関する研究では、臨床工学技士の配置は全国の半分以上の病院でなかったが、臨床工学技士がいる病院では、臨床工学技士が医療機器安全管理責任者に任命される割合が高く、医療機器の安全管理が各病院で充実してきている傾向にあることを明らかとした。
結論
統計法で定める調査票情報の研究利用は、厚生労働省関連分野が実績も多く、国民生活に深い関わる有益で利用価値も高い情報が収集されていること、根拠に基づく保健医療政策の推進にも貢献することから、研究者等にとってより一層利用しやすい仕組の構築が望まれると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2016-06-15
更新日
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