高齢者医療の適正化推進に向けたエビデンス診療ギャップの解明 - 既存データベースを利用した、京都大学オンサイトセンターにおけるレセプト情報等データベース(NDB)の活用方策の検討

文献情報

文献番号
201501027A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者医療の適正化推進に向けたエビデンス診療ギャップの解明 - 既存データベースを利用した、京都大学オンサイトセンターにおけるレセプト情報等データベース(NDB)の活用方策の検討
課題番号
H27-政策-戦略-013
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 今中 雄一(京都大学 大学院医学研究科 )
  • 奥野 恭史(京都大学 大学院医学研究科)
  • 加藤 源太(京都大学医学部附属病院)
  • 黒田 知宏(京都大学医学部附属病院)
  • 後藤 励(京都大学 白眉センター)
  • 田中 司朗(京都大学 大学院医学研究科)
  • 田村 寛(京都大学医学部附属病院)
  • 福原 俊一(京都大学 大学院医学研究科)
  • 福間 真悟(京都大学 大学院医学研究科)
  • 武藤 学(京都大学 大学院医学研究科)
  • 柳田 素子(京都大学 大学院医学研究科)
  • 山本 洋介(京都大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
28,696,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は4つのリサーチクエスチョン(RQ)の解決を通じた施策への応用が可能な知見の導出、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の活用基盤の整備、の2つである。
4つのRQに関しては、基本テーマとして「高齢者医療におけるエビデンス-診療ギャップ」を据え、その下に個別テーマ「不適切処方」「がん治療」「慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)診療」「終末期医療」をRQとして想定した。個々の保険者からデータを得て研究する従来の手法では母集団の偏りを回避することが難しく、知見を普遍的な議論へつなげることは困難であった。この解決に悉皆性の高いデータであるNDBを用い、超高齢化社会に突入している日本の医療の実態についてより普遍的で説得力のある知見を得て医療政策に活用する。また、NDBと、臨床情報を含む他のデータベースの分析結果と傾向を比較し、レセプトデータから臨床患者の動向を推定できる手法の開発を目指す。NDBに関しては、厚生労働省と京都大学との間で「レセプト情報等の利用機会の充実等を推進するための連携協力協定」が締結され、NDBのオンサイトセンターが京都大学に設置された。同センターにおいて本研究によりNDB活用を契機に、センター内の運営体制を整備し、レセプト情報等の第三者へのデータ提供制度に関する普及・啓発を推進する。これにより、国が保有するレセプト等データの利活用促進という、日本再興戦略や国民会議報告書等における提言に応える。
研究方法
 4つのRQについてNDB及び民間データベース、京都大学で独自に開発した京大病院由来データベース( がん:CyberOncology、CKD:P-Retriever)を活用し、テーマごとに実態を把握する。「不適切処方」についてはNDBを活用してその処方実態を知る。不適切処方薬に関する国内外のリストとして活用可能なものを採用し、我が国の市販薬を対応させてデータ分析する。「がん治療」では、我が国におけるがん治療の実態をNDBを用いて明らかにし、年代別、併存疾患の有無別、地域等で検討する。「CKD診療」については、NDBを含む複数のデータベースを用いて高齢患者におけるCKD診療の質に関して分析する。「終末期医療」はNDBおよび民間データを用いて我が国の高齢者医療の実態を分析する。各テーマの研究方法は各分担報告で詳細を提示する。NDBに関しては、NDBオンサイトセンター(京都)の運営体制を確立する。試行的な利用の後、NDBデータを用いて4つのRQの実態把握を行う。それらの結果をもとに、NDBから知り得る高齢者医療の実態をまとめる。レセプト情報等の第三者へのデータ提供制度に関する普及・啓発を推進する。
倫理面への配慮についてヘルシンキ宣言および文部科学省・厚生労働省「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施する。インフォームド・コンセント、研究参加者への利益・不利益、研究参加者に新たに加わる侵襲と予想される有害事象・対応の各点について、本研究は既存情報を利用した観察研究であるため、項目として該当しない。個人情報の保護に関してNDBの利用にあたっては、個人情報に準ずる情報としての取り扱いを規定する厚生労働省有識者会議での議論に則り、京大病院に設置された医の倫理委員会の審査・承認を得て安全かつ適切な運用を行う。
結果と考察
 平成27年度は本研究のデザインペーパーを執筆した。レセプトのバリデーション研究に関する文献を系統的にレビューした。政策的な情報を得る場として「厚生労働省戦略研究特別セミナー」を関係者対象のセミオープンで2回実施した(1回目「保健医療2035を巡って」平成28年2月26日、京都大学内、2回目「個人情報の保護・活用の調和に向けて 現状と課題」平成28年3月7日、京都大学内)。4つのRQについてオンサイトリサーチセンターの利用に先立ち、NDB特別抽出、民間データベースを用いた知見を比較しながら、治療パターンの抽出、治療パターンと転帰・有害事象との相関解析アルゴリズム作成、NDB特別抽出に必要な薬剤・病名のコーディング、その他プレ解析等を行った。NDBの活用基盤の整備と人材育成に関し、同センターの試行的利用を開始しコンピュータやサーバ等ハード面、運用ルール等ソフト面の機能評価や検討を行った。厚生労働省等の連携機関(東大、京大)間で意見交換や情報共有ができるように連絡協議会を開催した(2月、8月)。
結論
 平成27年度はNDBの活用基盤の整備と人材育成に取り組むとともに、我が国の高齢者医療に関する4つのRQに対し、NDB・大規模データベースの入手や解析の準備を進めた。今後、それらの解析から得られる知見をもとに超高齢化社会に突入した我が国の医療の課題を挙げ検討する。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201501027Z