入院患者の看護必要度と看護職員配置に関する研究

文献情報

文献番号
201501014A
報告書区分
総括
研究課題名
入院患者の看護必要度と看護職員配置に関する研究
課題番号
H26-政策-一般-010
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(兵庫県立大学 経営研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋森好子(東京都看護協会)
  • 田中彰子(横浜創英大学)
  • 西川正子(東京慈恵会医科大学 臨床研究支援センター)
  • 鳥邊晋司(兵庫県立大学 経営研究科 )
  • 東野定律(静岡県立大学 経営情報学部)
  • 大夛賀政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,843,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
看護必要度は、入院基本料等の算定要件として、平成14年に初めて導入され、平成20年度から一般病棟入院基本料7対1、平成22年度に10対1、その後13対1と利活用されてきた。一方で、今後の評価項目の改定に伴い、従前に提案した患者分類を修正し、院内の看護資源の適切な配分に利用するための方法論が求められている。そこで、平成27年度は、昨年度の研究を踏まえ、高度急性期で活用可能な患者分類ができる「重症度、医療・看護必要度」の項目を開発し、試行調査結果のデータ分析による妥当性の検証、この項目を評価するための手引き及び看護の専門性を反映する新項目の開発、さらに、現行の看護必要度を用いた病棟別の診療・財務状況を分析し、これらの結果を用いた適正な看護職員配置の方法論を検討することを目的とし、5つの研究を行った。
研究方法
研究1 (1)H26年度患者調査で、7対1一般病棟入院基本料を算定していた病棟のデータ19,254件のデータの看護必要度評価結果と当該項目に関連するDPCデータのJコード(処置)を突合して、関連性を分析した。(2)DPCデータ(レセプト請求データによるDPC包括点数+出来高項目点数)によって1日当たりのすべての診療報酬(入院料を控除)を算定・3区分し、看護必要度得点、入院病棟別、手術の有無と術式、看護ケアの手間のかかり具合について分析した。
研究2 6病院の入院患者延べ2,338名分の現在の「重症度、医療・看護必要度評価票」と新たに開発した評価票によって評価された患者データを分析データとし、A得点の比較を行った。
研究3 研究委員会において議論を行い、新たに開発された評価票項目の定義を検討し、臨床的妥当性を検証した。
研究4 高度急性期病棟とされるKC病院とKM病院のデータ、医療機関の基本情報(DPCデータを含む)と財務情報を用いて、財務分析を実施した。
研究5 平成24年度患者調査データより一般急性期病棟入院患者を抽出した72,426件の分析データを作成し、「重症度・看護必要度」の得点が在院日数区分別、年齢区分別に、どのように異なるかを分析した。
結果と考察
研究1 A項目において、ICU、HCU、一般病棟で共通して評価されていた項目は、心電図モニターの管理、輸液ポンプであったが、より急性期の病態を評価する項目としては、呼吸ケア、人工呼吸器の管理、シリンジポンプの管理、中心静脈圧測定、創傷処置、専門的な治療・処置であることがわかった。これは、DPCコード(Jコード(処置))との高い関連性からも明らかであった。
研究2 一般病棟における新評価票のA得点の平均値は0.39と低く、新評価票は、高度急性期を担う病床の評価には適しているが、新評価票の得点を一般病床での評価にこのままICU、HCUと同じように使用するには、さらなる検討が必要と考えられた。
研究3 新項目4項目のうち、「無菌治療室での患者管理」、「入院後1時間以内の患者管理」、「心電図モニターによる心機能の評価」は定義や項目の文言が平成28年度診療報酬改定によって示されたものとは異なっている。また、「血糖の管理」は、今後の医療提供体制における看護師の専門性を反映した評価項目を考えていくうえでは重要な項目と考えられた。
研究4 病床数・病棟数・看護師数については、KC病院はKM病院のおよそ2倍の規模を有する。しかし、入院診療収益についてKM病院はKC病院の約63%程度、償却前経常利益率は、ほぼ同じ、入院診療単価および高度急性期入院診療単価はKM病院の方が高く、病棟看護師1人当たりの入院診療収益もKM病院の方が725万円程度高かった。
研究5 昨今、高齢患者及び認知症疾患を併発した患者の対応が求められていることを鑑み、「一般病棟用重症度、医療・看護必要度」データの分析による病棟マネジネントや退院時のメルクマールへの活用といった方法論を検討することが喫緊の課題と考えられた。
結論
研究1 簡便でいながら、急性期病院での医療処置の多さ、看護の手間のかかり具合を反映する新たな「重症度、医療・看護必要度」の評価項目の開発を行った。
研究2 「新重症度、医療・看護必要度」A項目の妥当性を検証した。
研究3 新A項目(案)の評価を適正に行うために、臨床家を集め、評価の偏差が生じないよう、項目の手引き(案)を作成した。
研究4 病棟別の診療・財務情報を用いた看護職員配置を分析し、病棟ミックスの問題や簡便的な部門別損益計算の進め方について吟味し、さらに、急性期病院における経営を考える上で、有用と考えられる新たな指標として「看護師充足度」を開発した。
研究5 一般病棟の入院患者の在院日数と年齢階層、認知症疾患の有無と「重症度・看護必要度」のA,B得点との関連性を初めて示した。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201501014B
報告書区分
総合
研究課題名
入院患者の看護必要度と看護職員配置に関する研究
課題番号
H26-政策-一般-010
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(兵庫県立大学 経営研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋森 好子(東京都看護協会)
  • 田中 彰子(横浜創英大学)
  • 西川 正子(東京慈恵会医科大学 臨床研究支援センター)
  • 鳥邊 晋司(兵庫県立大学 経営研究科 )
  • 東野 定律(静岡県立大学 経営情報学部)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、平成28 年度に見直しが予定されている入院患者への看護の必要性を判定するための看護必要度項目の妥当性等を検証し、新たな評価項目を活用した適正な看護師配置等のあり方を検討することである。また、この適正な看護資源の配分に役立つツールとして、簡便に利用することができる「患者分類」の方法を提案することにある。
研究方法
平成26年度は、看護人員配置に係わる様々なキーワードを用い先行文献レビュー、2012年に厚生労働省が収集した延べ571,328人日分のデータを用いた病棟種類別の基本属性、看護必要度A・B 得点の比較、看護必要度A・B 得点を基にした一般患者分類と重症患者分類の比較を行った。さらに、平成24 年度の特別研究調査の対象となったDPCⅡ群201 病院のうち、リリーフナースおよびベッドコントロールに活用していた病院に対して調査を依頼し、看護必要度に関わる評価票を利用した2種類の患者分類法の各タイプ別の構成割合や患者分類法によって推計された看護師数を算出し、必要とされる推定看護師人数と実際に配置されていた看護師数の値を比較した。
平成27年度は、昨年度の研究を踏まえ、高度急性期で活用可能な患者分類ができる「重症度、医療・看護必要度」の項目を開発し、試行調査結果のデータ分析による妥当性の検証、この項目を評価するための手引き及び看護の専門性を反映する新項目の開発、さらに、現行の看護必要度を用いた病棟別の診療・財務状況を分析し、これらの結果を用いた適正な看護職員配置の方法論を検討した。
結果と考察
平成26年度研究では、以下のことが分かった。①先行研究からは、患者分類システムを看護師の人員配置に利用するためには、看護師の業務量だけでなく、患者のケアやニーズを評価した資料、看護サービスに関わる経費、看護に関わる医療資材等のコスト等、他の多くの要因も考慮すべきとされてきたが、わが国ではほとんど考慮されていなかった。全国の急性期病院から収集された295,229 件のデータ分析の結果、重症患者分類と一般患者分類の利用に際しては、慎重な使い分けを必要とするものの、それぞれの分類法の特徴を理解することで、より適切な人材配置を実施する資料が得られる可能性があることが示された。
平成27年度研究では以下のことがわかった。
 A項目において、ICU、HCU、一般病棟で共通して評価されていた項目は、心電図モニターの管理、輸液ポンプであったが、より急性期の病態を評価する項目としては、呼吸ケア、人工呼吸器の管理、シリンジポンプの管理、中心静脈圧測定、創傷処置、専門的な治療・処置であることがわかった。これは、DPCコード(Jコード(処置))との高い関連性からも明らかであった。
 一般病棟における新評価票のA得点の平均値は0.39と低く、新評価票は、高度急性期を担う病床の評価には適しているが、新評価票の得点を一般病床での評価にこのままICU、HCUと同じように使用するには、さらなる検討が必要と考えられた。
 新項目4項目のうち、「無菌治療室での患者管理」、「入院後1時間以内の患者管理」、「心電図モニターによる心機能の評価」は定義や項目の文言が平成28年度診療報酬改定によって示されたものとは異なっている。また、「血糖の管理」は、今後の医療提供体制における看護師の専門性を反映した評価項目を考えていくうえでは重要な項目と考えられた。
 昨今、高齢患者及び認知症疾患を併発した患者の対応が求められていることを鑑み、「一般病棟用重症度、医療・看護必要度」データの分析による病棟マネジネントや退院時のメルクマールへの活用といった方法論を検討することが喫緊の課題と考えられた。
結論
本研究では、簡便でいながら、これまでの看護必要度項目のデータ分析を踏まえ、急性期病院での医療処置の多さ、看護の手間のかかり具合を反映する新たな「重症度、医療・看護必要度」の評価項目の開発を行い、妥当性についても検証を行った。
また、評価を適正に行うために、臨床家を集め、評価の偏差が生じないよう、項目の手引き(案)を作成した。さらに、病棟別の診療・財務情報を用いた看護職員配置を分析し、病棟ミックスの問題や簡便的な部門別損益計算の進め方について吟味し、急性期病院における経営を考える上で、有用と考えられる新たな指標として「看護師充足度」を開発した。

公開日・更新日

公開日
2016-11-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201501014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の目的は、入院患者への看護の必要性を判定するための看護必要度項目の妥当性等を検証し、新たな評価項目を活用した適正な看護師配置等のあり方を検討することである。看護必要度項目の妥当性及びデータを活用方策について、国内外の研究レビュー、臨床家による質的観点に加え、データ分析を元にこれらの検討を行った結果、病院経営や看護管理へインパクトをもたらした。また、国際学会で、本研究成果を発展させた看護必要度データを用いた医療介入のアウトカム評価手法を発表し、その新規性の高さが評価された。
臨床的観点からの成果
看護必要度は、平成14年に初めて導入され、平成20年度から、一般病棟入院基本料7対1 に、平成22年度に10対1、その後13対1と導入されてきた。すでに看護必要度の評価は、一般急性期病棟だけでなく、地域包括ケア病棟等の亜急性期においても適切な評価ができると期待されている。本研究において、今後の入院医療体制の在り方を鑑みた新たな評価票を作成し、これらが適切な評価ができるような評価の手引きを作成したことは臨床的な観点から、意義が高いと考えられる。
ガイドライン等の開発
平成28年度診療報酬改定において示された「一般病棟用重症度、医療・看護必要度」等の各種評価票における評価を行うための手引きの作成にあたっては、本研究で実施された内容が参考にされた。平成29年度中央社会保険医療協議会・入院医療等の調査分科会において「一般病棟入院基本料の評価手法の整理について」議論がなされたが、本研究で実施した看護必要度とDPCデータの関係性を示した結果も議論の参考とされた。
その他行政的観点からの成果
平成28年度診療報酬改定において示された「一般病棟用重症度、医療・看護必要度」、「特定集中治療室用重症度、医療・看護必要度」、「ハイケアユニット用重症度、医療・看護必要度」、「日常生活機能評価票」の各種評価票における評価項目の選定にあたっては、本研究で実施された内容が参考にされた。
その他のインパクト
本研究で実施した看護必要度データを活用した入院医療機関における患者の状況に関する実態は、OCED対日経済審査報告書(2015年4月)においても引用され、日本の入院医療の現状を示す貴重なエビデンスとして紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T Tsutsui,S Higashino,M Nishikawa, et al.
Refereed Article : Medical and long-term care services provided to hospitalized patients in Japan : Data analysis from a 2012 national survey.
経営と情報 , 27 (2) , 51-61  (2015)

公開日・更新日

公開日
2016-08-03
更新日
2019-05-30

収支報告書

文献番号
201501014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,720,000円
(2)補助金確定額
6,720,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,034,106円
人件費・謝金 1,844,086円
旅費 1,867,108円
その他 1,097,873円
間接経費 877,000円
合計 6,720,173円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
-