文献情報
文献番号
201501013A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性認知症と高次脳機能障害者の社会保障のあり方に関する調査研究
課題番号
H26-政策-一般-009
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
八重田 淳(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
- 駒村康平(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,586,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,働き盛りの世代に発症する若年性認知症と高次脳機能障害等を対象とした国内外実態調査を行い,中途障害者の社会保障と就労支援と合わせた総合的なリハビリテーション対策を検討し,具体的な支援モデルの提示までを行うことを目的とした.
研究方法
平成27年度は,前年度に引き続き,国内外における中途障害者の社会保障の現状と課題を探るため,(1)東京都の急性期・回復期リハビリテーション病棟の医療職及び医療福祉職を対象とした郵送調査(研究1),(2)就労している高次脳機能障害者への面接調査(研究2),(3)高次脳機能障害者の家族を対象とした面接調査(研究3),(4)英国における若年性認知症就労支援と社会保障に関する聞き取り調査,(5)障がい者雇用にかかわる団体として,企業,特例子会社,社会福祉法人,NPO法人,家族会に対するヒアリング調査,(6)全国の特例子会社を対象とした若年性認知症・高次脳機能障害者の就労支援に関する郵送調査,(7)障害者の所得等に社会保障制度と雇用が与える影響に関する既往データの再分析を行った.
結果と考察
(1)医療機関から就労支援機関への移行支援業務として特に低いものは,「患者・家族が就労支援機関に行く際,同行支援をする」「通勤行動評価,職場環境評価,職務遂行能力評価の実施等のため,職場訪問を行う」であること,(2)就労を継続している高次脳機能障害のある人が苦手を克服していくプロセスは,生活上の困難さに対する事前の情報提供,退院後のアフターフォローを経て,職業復帰やその後の就労継続に向けた「選択を支える存在」の獲得がキーとなり作用しており,社会人としての使命感の萌芽が就労継続の原動力となっていること,(3)高次脳機能障害者の家族は,職業準備性の意識が比較的低く,子どもの進路選択のタイミングで初めて将来や進路を考え始めること,そして,他の家族に頼れない状況に加え,高次脳機能障害者の社会参加に関する十分な支援を享受していないために,親が子どもに「あるべき姿」を過度に求めていること,(4)英国における若年性認知症雇用ガイドラインの存在が事業主と従業員の意識変化をもたらし得るものであること,(5)日本における各種団体へのヒアリング調査の結果,両障害者の雇用実績は極めて少ないこと,(6)全国の特例子会社における両障害者の就労は極めて少ないこと,(7)障害者本人の就労所得がない場合,たとえ年金受給者であっても本人社会保障給付金だけでは所得水準を改善しきれず,同居による世帯員間の所得移転が行われたとしても貧困率が高いままであること等がわかった.
結論
本研究の最終年度である次年度は,中途障害者の社会保障制度のあり方を総括する.まず,支援者側の最終調査として,若年性認知症と高次脳機能障害の相談支援コーディネーターを対象とした役割機能の調査研究を行う必要がある.次に,当事者側の最終調査として,若年性認知症当事者と家族に対する聞き取り調査により,当事者にとっての合理的配慮事項を把握する必要がある.さらに,今年度末に実施した全国特例子会社を対象とした調査データの詳細分析を行う必要がある.これらを総括し,両障害の職業的障害の実態把握,職場における合理的配慮事項の整理し,事業主のための雇用ガイドライン案を策定する必要がある.また,国際シンポジウムの開催による国内外知見の整理を行った上で,最終的に若年性認知症と高次脳機能障害の社会保障と就労支援のあり方について提言を行う.
公開日・更新日
公開日
2016-11-11
更新日
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