文献情報
文献番号
201451014A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品を対象としたイメージング質量分析手法標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
新間 秀一(大阪大学大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 田村 研治(国立がん研究センター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国立がん研究センターでは,薬物動態・薬力学の新評価手法として,イメージング質量分析(以下,イメージングMS)装置である質量顕微鏡(島津製作所)を導入し,医療現場での応用を開始した.しかしイメージングMSの手法標準化は整備途上の状態であり,医薬品開発の迅速化や日常臨床への貢献のために,早急に真に利用可能な技術へ仕上げる必要があると考えている.本業務では,医薬品開発過程で普遍的に実施可能なイメージングMS手法整備を目的とする.
研究方法
1. 試料サンプリング法の確立と保管条件の検討は,10%中性緩衝ホルマリン液での組織固定がIMS結果に与える影響を確認した.
2.組織検体中に含まれる薬物の長期保存の影響について,モデル薬物(疎水性薬物:エルロチニブ)投与した腫瘍移植マウスの腫瘍組織を採取し,保存条件の違いによるイオン強度の経時的変化を評価した.
3. 試料前処理法の最適化は特にイオン化補助剤であるマトリックス供給法について検討を行った.今回は,業務主任者が開発したマトリックス蒸着とマトリックス噴霧を組み合わせた二段階マトリックス供給法について,想定されるパラメーターと得られるシグナル強度の関連を調べた.
4. 定量イメージング法は,連続切片を作製し隣接切片より薬剤を抽出し測定することで得られた切片1枚当たりの薬物総量をイメージングMSで得られた全シグナル強度に等しいと仮定し,シグナル強度に従って比例分配する方法を考案した.
5. 画像処理とデータ提示手法の最適化は,イメージング結果から推定される薬物量と連続切片からレーザーマイクロダイセクションを用いて採取した組織の一部に含まれる薬物量を比較し手法評価を行った.
2.組織検体中に含まれる薬物の長期保存の影響について,モデル薬物(疎水性薬物:エルロチニブ)投与した腫瘍移植マウスの腫瘍組織を採取し,保存条件の違いによるイオン強度の経時的変化を評価した.
3. 試料前処理法の最適化は特にイオン化補助剤であるマトリックス供給法について検討を行った.今回は,業務主任者が開発したマトリックス蒸着とマトリックス噴霧を組み合わせた二段階マトリックス供給法について,想定されるパラメーターと得られるシグナル強度の関連を調べた.
4. 定量イメージング法は,連続切片を作製し隣接切片より薬剤を抽出し測定することで得られた切片1枚当たりの薬物総量をイメージングMSで得られた全シグナル強度に等しいと仮定し,シグナル強度に従って比例分配する方法を考案した.
5. 画像処理とデータ提示手法の最適化は,イメージング結果から推定される薬物量と連続切片からレーザーマイクロダイセクションを用いて採取した組織の一部に含まれる薬物量を比較し手法評価を行った.
結果と考察
1, 2. 試料サンプリング法の確立と保管条件の検討
脂溶性薬物であるエルロチニブについて検討を行った.組織を固定の際に70%エタノールを用いたけれども,組織内薬物濃度は大きく変化しなかった.70%エタノールに浸漬後,10秒間10%酢酸アンモニウム溶液に浸漬したところ,薬物が組織内から60%~80%ほど流出することが確認された.したがって,医薬品のIMSを行う場合,組織を水溶液に浸漬することは,薬物流出の観点から望ましくないことがわかった.
エルロチニブ投与されたマウス腫瘍組織切片を用いて,エルロチニブ強度変化をモニターすることで保管条件に対する検討を行った.エルロチニブでは,切片作製後3ヶ月間の長期保管においてもピークが検出されることが確認された.
3. 試料前処理法の最適化
マトリックス蒸着とマトリックス噴霧を組み合わせた二段階マトリックス供給法について,想定されるパラメーターと得られるシグナル強度の関連を調べた.腫瘍モデルマウスに投与されたエルロチニブシグナルの(a)蒸着時間依存性,(b)初回スプレー噴霧時間依存性,(c)噴霧溶媒量依存性を検討した.得られたデータより蒸着時間依存性は見られず,最終的に得られる結果に最も大きな寄与をするものは,(b)に示した初回スプレー時のマトリックス供給量であることがわかった.
4. 定量法の構築
IMSにより得られた空間分布情報と既存方法であるLC-MS/MSを用いた定量結果を組み合わせることで解決した.したがって,イメージングMS用切片と隣接する切片を定量用試料として追加採取し,追加で得られた組織から薬剤を抽出し前処理した試料をLC-MS/MSで定量することで,切片1枚当たりに含まれる薬剤量を求めた.その後,得られた全薬剤量をイメージングで得られた各ピクセルのピーク強度にしたがって比例分配することで定量イメージングマスデータを提供できた.
5. 画像処理とデータ提示手法の最適化
定量イメージング結果から推定される薬物量(推定値)と連続切片からレーザーマイクロダイセクションで採取した組織から測定した薬物量(測定値)を比較することで妥当性を評価した.得られた結果から測定値と推定値はほぼ一致することが確認された.
脂溶性薬物であるエルロチニブについて検討を行った.組織を固定の際に70%エタノールを用いたけれども,組織内薬物濃度は大きく変化しなかった.70%エタノールに浸漬後,10秒間10%酢酸アンモニウム溶液に浸漬したところ,薬物が組織内から60%~80%ほど流出することが確認された.したがって,医薬品のIMSを行う場合,組織を水溶液に浸漬することは,薬物流出の観点から望ましくないことがわかった.
エルロチニブ投与されたマウス腫瘍組織切片を用いて,エルロチニブ強度変化をモニターすることで保管条件に対する検討を行った.エルロチニブでは,切片作製後3ヶ月間の長期保管においてもピークが検出されることが確認された.
3. 試料前処理法の最適化
マトリックス蒸着とマトリックス噴霧を組み合わせた二段階マトリックス供給法について,想定されるパラメーターと得られるシグナル強度の関連を調べた.腫瘍モデルマウスに投与されたエルロチニブシグナルの(a)蒸着時間依存性,(b)初回スプレー噴霧時間依存性,(c)噴霧溶媒量依存性を検討した.得られたデータより蒸着時間依存性は見られず,最終的に得られる結果に最も大きな寄与をするものは,(b)に示した初回スプレー時のマトリックス供給量であることがわかった.
4. 定量法の構築
IMSにより得られた空間分布情報と既存方法であるLC-MS/MSを用いた定量結果を組み合わせることで解決した.したがって,イメージングMS用切片と隣接する切片を定量用試料として追加採取し,追加で得られた組織から薬剤を抽出し前処理した試料をLC-MS/MSで定量することで,切片1枚当たりに含まれる薬剤量を求めた.その後,得られた全薬剤量をイメージングで得られた各ピクセルのピーク強度にしたがって比例分配することで定量イメージングマスデータを提供できた.
5. 画像処理とデータ提示手法の最適化
定量イメージング結果から推定される薬物量(推定値)と連続切片からレーザーマイクロダイセクションで採取した組織から測定した薬物量(測定値)を比較することで妥当性を評価した.得られた結果から測定値と推定値はほぼ一致することが確認された.
結論
本事業の遂行により,医薬品における定量イメージングMS法の標準手順書が完成した.今後,本手法の実用化には,更なる再現性の向上を目指した試料前処理装置開発が必須となる.そのような装置が完成した後,多施設での手法検討が可能となり得られた知見から,製薬協やCRO等の業界団体ならびに規制当局,さらにアカデミア(大学等)を交えた議論が開始されることとなる.平成26年12月11日に日本製薬協主催の「第一回新技術検討会」が開催されIMSについて講演および議論をしたが,本技術は日本がリードできる技術の一つであるため,この流れをさらに加速させ,世界に先駆けて実用化を目指したいという考えで一致した.
公開日・更新日
公開日
2015-06-17
更新日
-