文献情報
文献番号
201451005A
報告書区分
総括
研究課題名
EHRと連携した医療情報分析システムの構築及び多地域データ活用した市販後安全対策実証研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松久 宗英(徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 黒田 暁生(徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター)
- 玉木 悠(徳島大学病院 病院情報センター)
- 川添 和義(徳島大学大学院医歯薬学研究部 臨床薬剤学分野)
- 村井 純(慶應義塾大学環境情報学部)
- 森川 富昭(慶應義塾大学環境情報学部政策・メディア研究科)
- 伊達仁人(慶應義塾大学環境情報学部政策・メディア研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は徳島県のICT病診療連携システム「徳島糖尿病克服ネットワーク(ToDO-NET)」及び佐渡市民6万人の地域医療連携システム「佐渡地域医療連携ネットワーク:さどひまわりネット」の両ネットワークの匿名化データベースを活用した医療情報分析システムの構築、および市販後安全対策への活用を目的とした実証研究を行い、データ活用のための指針の検討を目的とした。
研究方法
1.匿名化データ分析システムの開発
ToDO-Net及びさどひまわりネットで共用できる匿名化データ分析システムの開発を試みた。SS-MIX及びレセプト電算により標準化された匿名化データベースに、分析アルゴリズムに合わせたデータ構造を保持する中間データベースであるリポジトリを構築する。構築されたリポジトリにより、匿名化データベースと解析プログラムとが連結し、病名及び各診療行為と検査結果値を任意に組み合わせ、条件を設定することで症例の抽出・解析が可能となる。
2.市販後安全調査の実証研究
実証研究では新規糖尿病治療薬SGLT2阻害薬の市販後安全性調査のための分析アルゴリズムの実証研究を行った。開発した分析システムを匿名化データベースに導入し、有害事象抽出アルゴリズムを開発し、その有用性を検討した。抽出アルゴリズムは病名、HbA1c、生化学検査(肝機能、腎機能、脂質、ケトン体)、尿検査(蛋白・糖・クレアチニン・沈渣)、薬剤(SGLT2阻害薬、抗生物質の有無)を組み合わせ、脱水、ケトアシドーシス、尿路・性器感染症、その他の有害事象を抽出するアルゴリズムとした。
3.個人情報保護指針の検討
本研究を通じ、個人情報の保護と利活用に関する検討を行う。集積データの恒常的解析を行う仕組みの構築、実現にあたって直面する課題、その解決方法について検討を行う。具体的には、これまでのパーソナルデータに関する検討会の議論の整理、海外の法整備状況の調査、個人情報の二次利用を想定して運用されているさどひまわりネットの現状と課題に関するヒアリングを行う。
ToDO-Net及びさどひまわりネットで共用できる匿名化データ分析システムの開発を試みた。SS-MIX及びレセプト電算により標準化された匿名化データベースに、分析アルゴリズムに合わせたデータ構造を保持する中間データベースであるリポジトリを構築する。構築されたリポジトリにより、匿名化データベースと解析プログラムとが連結し、病名及び各診療行為と検査結果値を任意に組み合わせ、条件を設定することで症例の抽出・解析が可能となる。
2.市販後安全調査の実証研究
実証研究では新規糖尿病治療薬SGLT2阻害薬の市販後安全性調査のための分析アルゴリズムの実証研究を行った。開発した分析システムを匿名化データベースに導入し、有害事象抽出アルゴリズムを開発し、その有用性を検討した。抽出アルゴリズムは病名、HbA1c、生化学検査(肝機能、腎機能、脂質、ケトン体)、尿検査(蛋白・糖・クレアチニン・沈渣)、薬剤(SGLT2阻害薬、抗生物質の有無)を組み合わせ、脱水、ケトアシドーシス、尿路・性器感染症、その他の有害事象を抽出するアルゴリズムとした。
3.個人情報保護指針の検討
本研究を通じ、個人情報の保護と利活用に関する検討を行う。集積データの恒常的解析を行う仕組みの構築、実現にあたって直面する課題、その解決方法について検討を行う。具体的には、これまでのパーソナルデータに関する検討会の議論の整理、海外の法整備状況の調査、個人情報の二次利用を想定して運用されているさどひまわりネットの現状と課題に関するヒアリングを行う。
結果と考察
1.匿名化データ分析システムの開発
匿名化データ抽出システムは、必要時に有害事象の詳細調査が可能となるよう、IDを消去した匿名化患者診療情報を、EHRの患者データに再連結が可能な可逆的システムとした。抽出データの解析のため、慶應義塾大学環境情報学部と解析プログラムを共同開発した。
2.市販後安全調査の実証研究
ToDO-NETの糖尿病患者数936名中、SGLT2阻害薬の使用は8例と少数例であったが、中止例は3名であり、皮疹、腎盂腎炎の疑い、および糖尿病教育入院による中止であった。一方、SGLT2阻害薬の使用は継続しているが、1名に皮疹がみられた。
3.個人情報保護指針の検討
既存の医療情報の利活用において、直面する問題点を3段階に分解し検討した。
段階1:患者への説明と同意書の取得
持続的に蓄積した医療情報を解析する上で、情報提供患者への十分な説明と同意取得は不可欠である。しかし解析毎の同意取得の煩雑さの回避のために、医療情報2次利用の包括同意について、個人情報保護の観点から明確化する必要がある。これまでのさどひまわりネットでの包括的同意の運用から、患者側からの懸念や反対はないが、最初の詳細な説明、特定の団体の私的利用の排除の重要性が明示された。
段階2:取得情報の匿名化
平成26年の「パーソナルデータに関する検討会」において、個人情報二次利用に際して個人特定のリスク回避のため、「データの有用性や多様性に配慮し一律には定めず、事業等の特性に応じた適切な処理を行う」ことが最善策とされた。本研究からは、①公開情報は非識別非特定状態のみとする、②集団の0.04%以下の属性は公表しない、③非公表項目を研究毎で設定することが必要であると結論づけた。
段階3:匿名化された情報の提供
匿名情報の2次利用や第三者への提供の際に、情報提供側は適正に情報が取り扱われているかモニタリングが必要である。また、患者のオプトアウトなどを想定したデータ修正・差し替えの仕組みが必要である。このため、分析は医療ネットワーク事務局で実施し、結果のみを第三者に提供すること、それに当たる人材育成が必須であることが確認された。
匿名化データ抽出システムは、必要時に有害事象の詳細調査が可能となるよう、IDを消去した匿名化患者診療情報を、EHRの患者データに再連結が可能な可逆的システムとした。抽出データの解析のため、慶應義塾大学環境情報学部と解析プログラムを共同開発した。
2.市販後安全調査の実証研究
ToDO-NETの糖尿病患者数936名中、SGLT2阻害薬の使用は8例と少数例であったが、中止例は3名であり、皮疹、腎盂腎炎の疑い、および糖尿病教育入院による中止であった。一方、SGLT2阻害薬の使用は継続しているが、1名に皮疹がみられた。
3.個人情報保護指針の検討
既存の医療情報の利活用において、直面する問題点を3段階に分解し検討した。
段階1:患者への説明と同意書の取得
持続的に蓄積した医療情報を解析する上で、情報提供患者への十分な説明と同意取得は不可欠である。しかし解析毎の同意取得の煩雑さの回避のために、医療情報2次利用の包括同意について、個人情報保護の観点から明確化する必要がある。これまでのさどひまわりネットでの包括的同意の運用から、患者側からの懸念や反対はないが、最初の詳細な説明、特定の団体の私的利用の排除の重要性が明示された。
段階2:取得情報の匿名化
平成26年の「パーソナルデータに関する検討会」において、個人情報二次利用に際して個人特定のリスク回避のため、「データの有用性や多様性に配慮し一律には定めず、事業等の特性に応じた適切な処理を行う」ことが最善策とされた。本研究からは、①公開情報は非識別非特定状態のみとする、②集団の0.04%以下の属性は公表しない、③非公表項目を研究毎で設定することが必要であると結論づけた。
段階3:匿名化された情報の提供
匿名情報の2次利用や第三者への提供の際に、情報提供側は適正に情報が取り扱われているかモニタリングが必要である。また、患者のオプトアウトなどを想定したデータ修正・差し替えの仕組みが必要である。このため、分析は医療ネットワーク事務局で実施し、結果のみを第三者に提供すること、それに当たる人材育成が必須であることが確認された。
結論
徳島県及び佐渡市の地域医療連携システムに蓄積した診療データの2次活用をめざし、新規糖尿病治療薬SGLT2阻害薬の安全性評価実証研究を実施した。匿名化情報の抽出システムの構築、抽出データの解析プログラムの創出、そして個人情報報後における課題の検討を実施できた。特に、医療情報という機密性の高い個人情報をどのようなレベルに匿名化基準を設定し、利用のための同意のあり方、そして解析結果を取扱いと公表の方法について、国家単位の指針作成が喫緊の課題であることが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-