血液製剤のウイルス等安全性確保のための評価技術開発に関する研究

文献情報

文献番号
201451001A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤のウイルス等安全性確保のための評価技術開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 内田 恵理子(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
  • 浜口 功(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【委託費】 医薬品等規制調和・評価研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液安全性の課題に対し、科学的根拠に基づいた新技術の評価や、それらを実用化するために必要な評価体制整備に向けての研究が急がれる。このため、欧米の規制当局や公定書では、その技術要件について定期的に見直しが行われている。本研究では、血液製剤のウイルス安全性のさらなる向上と合理的な技術適用を図るために、高感度のウイルス検査を行う際にどのようにその手法を評価するべきかを先導的に検討する。また近年、検査の試験的導入や自主的な検査が行われているHEVやPV-B19の検査導入の必要性やその技術的要件についても検討を進める。さらに最新の検査に対応するために必要な技術的要素を公表する。
研究方法
パルボウイルスB19の感染性をより定量的に評価する系を開発するためにKu812細胞のエリスロポエチン存在下にクローニングを行い従来よりも簡便に細胞内でのパルボウイルスゲノムの増幅を検出できる系を確立した。さらにクローニングした細胞を用いてよりパルボウイルスが増幅刷る条件の検討を行った。確立した条件を用いてパルボウイルスのジェノタイプによる感染性の違いについて検討を行った。
筋注用人免疫グロブリン製剤はヒトIgGを150mg/mL含有し、血漿の約 10倍の濃度である。そこで、筋注用人免疫グロブリン製剤のB19V中和活性の評価を行った。
デングウイルスは4つの血清型があり、それぞれ特異的なプライマーを用いて検出が実施されている。従って4つの NAT検査を実施していることになる。血液製剤の安全性確保のためには、デングウイルスの有無を効率良く評価できることを優先することからユニバーサルに血清型を検出できるプライマーを検討した。
結果と考察
PV B19のジェノタイプパネルの有用性評価の一環として、より簡便にその感染性を評価可能なKu812細胞クローンの選択を行った。樹立した細胞は、ゲノムコピー数の増幅を指標としてウイルスの感染性を簡便に測定可能であり、また継時的なウイルス増幅測定も可能であった。また、従来のin vitro感染系と同様に抗PV B19抗体により感染性が中和されることも確認できた。
Parvovirus B19の検出感度の設定に関しては、ヒトParvovirus B19(以下B19V)は一過性の高いウイルス血症を呈する一方、供血者の40%〜50%がB19Vに対する抗体を保有していることから、FDAは原料血漿の基準として104IU/mLと過去の感染例を参考に決定されている。品質基準の適切性を評価するために、筋注用人免疫グロブリンを用いたin vitro感染系によって中和活性を評価し、104IU/mLが適した基準であることを実験的に示すことができた。
 また、デングウイルスを検出するためにNAT検査が実施されているが、血液製剤の安全性確保の点から血清型別に実施するのではなくユニバーサルに検出できる系を考案する必要がある。そのために4つのデングウイルスの血清型に共通する塩基配列を検討した。各血清型を検出できたが、感度に100倍以上の差が認められ、更なる検討が必要であった。
 血液製剤のウイルス安全性の確保対策として1990年代後半より実施されている原料血漿と輸血用血液のウイルス核酸増幅試験(NAT)のための国内標準品は当時のWHO国際共同研究の方法に準じエンドポイント法によって力価が定められている。本研究においては国際標準品の共同研究に準じ、現在使用されている定量法を用いてNATのための国内標準品の力価を再評価することを目的として共同研究を実施した。平成26年度はHBV-DNA国内標準品の力価の再評価を目的とする共同研究を実施し、国内7施設が参加した。
血液製剤のウイルス安全性確保の一環として、E型肝炎ウイルス(HEV)参照パネルについてリアルタイムPCRを用いてジェノタイプ3及び4の国際単位に対する校正を行い、参照パネルを用いてNAT試験のバリデーションを行う場合の情報を提供するようにした。
結論
パルボウイルスインビトロ感染系を用いてジェノタイプの違いによる増幅活性の違いを検出することができた。
HEV-RNA国内標準品を用いて、コピー数で表示されているHEV-NAT試験用参照パネルの参考値として国際単位(IU)を算出した。
HBV国内標準品の再校正に関して、HBV-DNA国内標準品の力価を国際標準品に準拠して再評価することを目的として、国内共同研究を実施した。7か所の参加施設から報告された結果を国立感染症研究所が解析して、国内標準品の力価を国際単位に換算することになっている。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201451001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
検査の試験的導入や自主的な検査が行われているHEVやPV-B19の検査導入の必要性やその技術的要件について明らかにした。また、NAT検査の評価において科学進歩を適切に取り入れるために従来エンドポイント法で求めていたHBV標準品の力価を定量的PCRで求めることとしその共同検定を行った。
臨床的観点からの成果
試行的に導入されているPV-B19の検査における感度の設定についてFDAの求めている104IU/mlが抗体による中和能からも妥当な値であることが確認された。
ガイドライン等の開発
HBV、HCV、HIVの測定感度についてはすでに指針等で示されているが、今回その感度の評価の基準となる国内標準品の力価についてまずHBVを再評価することにしている。他のウイルスについても同様に力価の再評価を行う予定であり、これらの値を用いて指針で示された感度について今後適切に評価できていくと考えられる。
その他行政的観点からの成果
得られた成果については血液事業部会や安全性技術部会等の審議で参考にされるものと期待される。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201451001Z