文献情報
文献番号
201449014A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期のウイルス性肝炎の病態解明や科学的根拠の集積等に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田尻 仁(大阪府立急性期・総合医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 藤井 洋輔(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 伊藤 嘉規(名古屋大学医学部附属病院)
- 田中 英夫(愛知県がんセンター研究所 疫学予防部)
- 細野 覚代(愛知県がんセンター研究所 疫学予防部)
- 田中 靖人(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 四柳 宏(東京大学 大学院医学系研究科)
- 杉山 真也(国立国際医療研究センター)
- 乾 あやの(済生会横浜市東部病院こどもセンター)
- 牛島 高介(久留米大学医療センター 小児科)
- 村上 潤(鳥取大学 医学部周産期)
- 工藤 豊一郎(国立成育医療研究センター 肝臓内科)
- 鈴木 光幸(順天堂大学 医学部 小児科)
- 虻川 大樹(宮城県立こども病院 総合診療科)
- 惠谷 ゆり(大阪府立母子保健総合医療センター 消化器・内分泌科)
- 三善 陽子(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 津川 毅(札幌医科大学附属病院 臨床研究センター)
- 杉山 佳子(中山 佳子)(信州大学医学部附属病院 小児科)
- 羽鳥 麗子(宮沢 麗子)(群馬大学医学部附属病院 医療人能力開発センター 小児科)
- 小松 陽樹(東邦大学医療センター佐倉病院 小児科)
- 高野 智子(大阪府立急性期・総合医療センター 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦における小児ウイルス性肝炎診療の更なる向上を目指し、症例の臨床データの収集解析、および治療方針の判断に有用な科学的エビデンスの集積を行う。
(1)小児ウイルス性肝炎の自然経過評価に必要な臨床データを集積する。そのために全国の小児科研修施設を対象として小児例のデータの収集を行う。
(2)今年度は特に小児HBV水平感染例について、家族内の感染経路を重点的に解明する。これらのエビデンスレベルの高いデータは、B型肝炎ワクチンの定期接種化を推進する基礎資料となる。
(4)B型・C型肝炎の自然経過や治療効果に関連するウイルス側因子及び宿主側因子を同定する。得られたエビデンスに基づいて小児B型・C型慢性肝炎治療ガイドライン(26年作成)を改訂し、新たに普及させることによって小児ウイルス性肝炎に対する診療レベルの向上が期待できる。
(5)小児ウイルス性肝炎の患者登録システムを開発する。このシステムによって集積されたデータを先行研究のデータに加えて新たに我が国の患者データベースを作成する。小児期HBV感染者は10歳以降に発癌しはじめることから、B型肝炎小児を成人までフォロ-しなければならない。上記システムによってHBV感染小児を継続的に追跡する。
(1)小児ウイルス性肝炎の自然経過評価に必要な臨床データを集積する。そのために全国の小児科研修施設を対象として小児例のデータの収集を行う。
(2)今年度は特に小児HBV水平感染例について、家族内の感染経路を重点的に解明する。これらのエビデンスレベルの高いデータは、B型肝炎ワクチンの定期接種化を推進する基礎資料となる。
(4)B型・C型肝炎の自然経過や治療効果に関連するウイルス側因子及び宿主側因子を同定する。得られたエビデンスに基づいて小児B型・C型慢性肝炎治療ガイドライン(26年作成)を改訂し、新たに普及させることによって小児ウイルス性肝炎に対する診療レベルの向上が期待できる。
(5)小児ウイルス性肝炎の患者登録システムを開発する。このシステムによって集積されたデータを先行研究のデータに加えて新たに我が国の患者データベースを作成する。小児期HBV感染者は10歳以降に発癌しはじめることから、B型肝炎小児を成人までフォロ-しなければならない。上記システムによってHBV感染小児を継続的に追跡する。
研究方法
・全国の小児科研修施設を対象とした小児例のデータの収集
全国の小児科研修施設を対象として一次アンケートを開始。質問項目は過去5年間(2010-2014年)に経験した小児期のHBV感染者あるいはHCV感染者、および過去10年間(2005-2014年)に経験した肝細胞癌(HCC)の症例数。
・水平感染による小児B型肝炎の感染経路とHBV genotypeの解明
B型肝炎と診断された小児感染例のうち、垂直感染が否定される症例について家族歴を確認した。その結果、家族内の水平感染が疑われる症例3グループ(父子2例、祖母1例)を対象とし、家族の血清サンプルを収集。血清から抽出したHBV DNAのシークエンス解析を行い、塩基配列を決定した。既に水平感染を確認している11グループ(父子8例、同胞1例、祖母1例、祖父1例)のHBV DNAシークエンスをデータベースより取得し、併せて系統解析を行った。
・患者登録システムの開発
全国アンケートデータ(一次アンケート)をもとにして小児ウイルス性肝炎のデータをオンライン登録で収集をする(二次アンケート)。
二次アンケートは基本情報として、生年月日、性別、HBV感染診断日、感染経路、基礎疾患、家族歴、ウイルスのゲノタイプ、最終受診日と転帰、セロコンバージョンの有無と診断日、インターフェロンや核酸アナログ治療の有無等などを調査する。さらに検査所見や治療情報等を経時的に収集し、その間に発生したイベント(セロコンバージョン、発癌など)も調査する。既に先行研究で収集したデータ(B型肝炎551例、C型肝炎225例)と統合し、全国的な小児ウイルス性肝炎データベースを作成する。
全国の小児科研修施設を対象として一次アンケートを開始。質問項目は過去5年間(2010-2014年)に経験した小児期のHBV感染者あるいはHCV感染者、および過去10年間(2005-2014年)に経験した肝細胞癌(HCC)の症例数。
・水平感染による小児B型肝炎の感染経路とHBV genotypeの解明
B型肝炎と診断された小児感染例のうち、垂直感染が否定される症例について家族歴を確認した。その結果、家族内の水平感染が疑われる症例3グループ(父子2例、祖母1例)を対象とし、家族の血清サンプルを収集。血清から抽出したHBV DNAのシークエンス解析を行い、塩基配列を決定した。既に水平感染を確認している11グループ(父子8例、同胞1例、祖母1例、祖父1例)のHBV DNAシークエンスをデータベースより取得し、併せて系統解析を行った。
・患者登録システムの開発
全国アンケートデータ(一次アンケート)をもとにして小児ウイルス性肝炎のデータをオンライン登録で収集をする(二次アンケート)。
二次アンケートは基本情報として、生年月日、性別、HBV感染診断日、感染経路、基礎疾患、家族歴、ウイルスのゲノタイプ、最終受診日と転帰、セロコンバージョンの有無と診断日、インターフェロンや核酸アナログ治療の有無等などを調査する。さらに検査所見や治療情報等を経時的に収集し、その間に発生したイベント(セロコンバージョン、発癌など)も調査する。既に先行研究で収集したデータ(B型肝炎551例、C型肝炎225例)と統合し、全国的な小児ウイルス性肝炎データベースを作成する。
結果と考察
(1)全国の小児科研修施設を対象として一次アンケートを行った。48%の病院小児科からの回答が得られ、新規症例がHBV416例(前回調査554例),HCV183例(前回調査223例)が報告された.また新たなHCC6例(HBV5例,HCV1例)の報告があった.今後アンケートの回収率を上げるため,常勤小児科医が在籍する未返信施設に絞って督促する予定である.
(2)遺伝子型Aの水平感染例は、データベースにおいては2010年に1グループ(Family 11)が報告されているが、それ以前の報告では水平感染も母子感染と同様に遺伝子型Cが主であった。今回新たに遺伝子型Aによる水平感染を確認できたことから、我が国において成人に増えつつある遺伝子型Aの水平感染が今後は小児でも増えることが予想される。
(3)小児ウイルス性肝炎のオンライン登録システムを作成している。今後の課題としてはデータの標準化を目的とした入力基準書の作成、追跡調査の実施方法、症例登録を促進するための広報活動を考えている。本研究活動が終了した後も適切な組織に本システムを移管することで、小児期感染のウイルス性肝炎患者」の継続的なモニタリングが可能になることが期待される。
(2)遺伝子型Aの水平感染例は、データベースにおいては2010年に1グループ(Family 11)が報告されているが、それ以前の報告では水平感染も母子感染と同様に遺伝子型Cが主であった。今回新たに遺伝子型Aによる水平感染を確認できたことから、我が国において成人に増えつつある遺伝子型Aの水平感染が今後は小児でも増えることが予想される。
(3)小児ウイルス性肝炎のオンライン登録システムを作成している。今後の課題としてはデータの標準化を目的とした入力基準書の作成、追跡調査の実施方法、症例登録を促進するための広報活動を考えている。本研究活動が終了した後も適切な組織に本システムを移管することで、小児期感染のウイルス性肝炎患者」の継続的なモニタリングが可能になることが期待される。
結論
遺伝子型Aの水平感染例も相次いで確認されており、そのような水平感染の拡大を抑えるためには、日本においてもユニバーサルワクチンの導入が望まれる。
次年度は、二次アンケートで把握した患者を対象として詳細な二次アンケート調査を行う予定である。同時にウイルス性肝炎の自然経過や治療薬への反応性を規定するウイルス・宿主の各種遺伝子解析も行う。
さらに調査データ集積のツールとして、一般小児科医が入力しやすいオンライン登録システムを開発し、登録データの解析を進める予定である。
次年度は、二次アンケートで把握した患者を対象として詳細な二次アンケート調査を行う予定である。同時にウイルス性肝炎の自然経過や治療薬への反応性を規定するウイルス・宿主の各種遺伝子解析も行う。
さらに調査データ集積のツールとして、一般小児科医が入力しやすいオンライン登録システムを開発し、登録データの解析を進める予定である。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-