文献情報
文献番号
201449003A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設共同研究による肝移植後肝炎ウイルス新規治療の確立と標準化
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
前原 喜彦(九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科)
研究分担者(所属機関)
- 溝上 雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
- 上本 伸二(京都大学 肝胆膵・移植外科/小児外科)
- 千葉 勉(京都大学 消化器内科)
- 上田 佳秀(京都大学 消化器内科)
- 具 英成(神戸大学 肝胆膵外科)
- 猪股 裕紀洋(熊本大学 小児外科・移植外科)
- 古川 博之(旭川医科大学 消化器病態外科学)
- 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学 消化器外科分野)
- 國土 典宏(東京大学 肝胆膵外科)
- 島田 光生(徳島大学 消化器・移植外科/小児外科)
- 北川 雄光(慶應義塾大学 一般・消化器外科)
- 大段 秀樹(広島大学 消化器・移植外科学)
- 永野 浩昭(大阪大学 消化器外科学)
- 江口 晋(長崎大学 移植・消化器外科)
- 武冨 紹信(北海道大学 外科学講座消化器外科分野)
- 川岸 直樹(東北大学 臓器移植診療部)
- 竹内 正弘(北里大学 薬学部 臨床統計学)
- 赤澤 宏平(新潟大学 医歯学総合病院 医療情報部)
- 山中 竹春(横浜市立大学 臨床統計学)
- 調 憲(九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科)
- 吉住 朋晴(九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科)
- 池上 徹(九州大学大学院医学研究院 消化器・総合外科)
- 福原 崇介(大阪大学微生物病研究所 分子ウイルス分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
国立がん研究センター生物統計部門 部門長 山中竹春 ( 平成24年4月1日~26年8月31日)→ 横浜市立大学大学院医学研究科 臨床統計学 教授(平成26年9月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
C, B型肝炎(HCV, HBV)による末期肝硬変に対して肝移植か普及したが、肝移植後のHCVの制御とHBVワクチンによるHBs抗体の獲得は喫緊の課題である。「肝移植後肝炎ウイルス新規治療の確立と標準化」を目指す。
研究方法
研究代表者および分担者所属施設から、C型肝炎に対してDAA(テラプレビル(TVR)、シメプレビル(SMV))を用いた肝移植症例の臨床データを、参加各施設から研究代表者施設に回収、データベースを作成し、その有効性および安全性に関する統計学的解析を行う
九州大学病院で肝移植を施行した症例の中でB型肝炎ウイルス陽性26例、B型肝炎既往感染34例及びHBVワクチン投与19例を用いた。該当症例の末梢血より、ゲノムDNAを抽出した検体を、随時、国立国際医療研究センターに搬送した。国立医療センターに集積後、東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野へ搬送し、HLA-DPA1及びDPB1の一塩基多型について検討した。
九州大学病院で肝移植を施行した症例の中でB型肝炎ウイルス陽性26例、B型肝炎既往感染34例及びHBVワクチン投与19例を用いた。該当症例の末梢血より、ゲノムDNAを抽出した検体を、随時、国立国際医療研究センターに搬送した。国立医療センターに集積後、東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野へ搬送し、HLA-DPA1及びDPB1の一塩基多型について検討した。
結果と考察
C型肝炎に対する新規薬剤の効果・有害事象の全国調査
研究代表者および分担者所属施設から、肝移植後C型肝炎に対してHCVのNS3領域に対するDAAを用いて治療を行った102例の症例が登録された。内訳はTVR使用例が32例、SMV使用例が70例であった。そのうち現時点では77例に於いて治療が終了しており、24例は治療中であった。TVR群およびSMV群の累積HCV-RNA陰性化率はそれぞれ12週で93.8%および82.9%、24週で93.8%および84.3%であり有意差は認めなかった(p=0.2215)。またSVR率はTVRにて67.7%、SMVでは54.0%であった(全体として59.2%)。
結果として、TVR投与症例では従来より髙いSVRを認めたものの、免疫抑制剤の綿密なコントロールが必要であり、輸血を要する貧血など重篤な有害事象が発生した。SMV投与症例では有害事象の頻度は低いものの、SVR率は54.0%と比較的低かった。
HBVワクチンの効果とHLADPの一塩基多型
生体肝移植後HBIGと核酸アナログでB型肝炎感染予防を10ヶ月以上行い、肝機能がほぼ正常な症例19例に対し、B型肝炎ワクチンを毎月投与した。ワクチンが無効であった8例とワクチンが有効でHBIGから離脱可能であった11例を比較検討した。HLA-DPA1上のrs3077の遺伝子多型の検討では、CC/CTがワクチン無効8例では各5/3例、ワクチン有効10例では各6/5例であった(有意差なし)。HLA-DPB1上のrs9277535の遺伝子多型の検討では、GG/GAがワクチン無効8例では各7/1例、ワクチン有効11例では各3/8例であった(P=0.007)。
現在までに得られたC型肝炎治療に関する成果の重要なポイントは、1)DAA(TVR、SMV)を併用したペグインターフェロン・リバビリン治療ではHCVRNA陰性化率は90%近く高率であるにも関わらずSVR率が59.2%に留まったこと、2)インターフェロン併用の治療であるため、Interferon mediated graft dysfunctionという拒絶反応類縁疾患を10%程度の症例に発症すること、3)TVRはSMVよりも輸血が必要な高度貧血など重度の副作用が発生しやすい、という点に集約できる。
B型肝炎ワクチン有効例ではHLA-DPB1上のrs9277535はGAの可能性が有意に高い事が明らかとなった。現在、2例でワクチン投与中、8例が肝移植後ワクチン待機中であるため、来年度はこれらの症例についても解析予定である。最近、HLA-DPのサブクラスの遺伝子型がB型肝炎感染と相関するとの報告があった。来年度は、当該症例のサブクラス解析も行う予定である。
研究代表者および分担者所属施設から、肝移植後C型肝炎に対してHCVのNS3領域に対するDAAを用いて治療を行った102例の症例が登録された。内訳はTVR使用例が32例、SMV使用例が70例であった。そのうち現時点では77例に於いて治療が終了しており、24例は治療中であった。TVR群およびSMV群の累積HCV-RNA陰性化率はそれぞれ12週で93.8%および82.9%、24週で93.8%および84.3%であり有意差は認めなかった(p=0.2215)。またSVR率はTVRにて67.7%、SMVでは54.0%であった(全体として59.2%)。
結果として、TVR投与症例では従来より髙いSVRを認めたものの、免疫抑制剤の綿密なコントロールが必要であり、輸血を要する貧血など重篤な有害事象が発生した。SMV投与症例では有害事象の頻度は低いものの、SVR率は54.0%と比較的低かった。
HBVワクチンの効果とHLADPの一塩基多型
生体肝移植後HBIGと核酸アナログでB型肝炎感染予防を10ヶ月以上行い、肝機能がほぼ正常な症例19例に対し、B型肝炎ワクチンを毎月投与した。ワクチンが無効であった8例とワクチンが有効でHBIGから離脱可能であった11例を比較検討した。HLA-DPA1上のrs3077の遺伝子多型の検討では、CC/CTがワクチン無効8例では各5/3例、ワクチン有効10例では各6/5例であった(有意差なし)。HLA-DPB1上のrs9277535の遺伝子多型の検討では、GG/GAがワクチン無効8例では各7/1例、ワクチン有効11例では各3/8例であった(P=0.007)。
現在までに得られたC型肝炎治療に関する成果の重要なポイントは、1)DAA(TVR、SMV)を併用したペグインターフェロン・リバビリン治療ではHCVRNA陰性化率は90%近く高率であるにも関わらずSVR率が59.2%に留まったこと、2)インターフェロン併用の治療であるため、Interferon mediated graft dysfunctionという拒絶反応類縁疾患を10%程度の症例に発症すること、3)TVRはSMVよりも輸血が必要な高度貧血など重度の副作用が発生しやすい、という点に集約できる。
B型肝炎ワクチン有効例ではHLA-DPB1上のrs9277535はGAの可能性が有意に高い事が明らかとなった。現在、2例でワクチン投与中、8例が肝移植後ワクチン待機中であるため、来年度はこれらの症例についても解析予定である。最近、HLA-DPのサブクラスの遺伝子型がB型肝炎感染と相関するとの報告があった。来年度は、当該症例のサブクラス解析も行う予定である。
結論
肝移植後C型肝炎再発に対して行われたTVRおよびSMV併用の3剤併用療法により、従来のペグインターフェロン・リバビリン療法(SVR率:30-40%)に比しSVR率は約60%と改善したが、約90%のVR率からすると不十分な結果であった。今後はNS5AあるいはNS5Bに対する次世代のDAAを肝移植後C型肝炎に適応し、より有効な治療を行いたい。
HBV関連の生体肝移植において、レシピエントでのB型肝炎再活性化予防は可能である。HLA-DPB1上の一塩基多型がHBVワクチンの効果と関連する事が示唆された。
HBV関連の生体肝移植において、レシピエントでのB型肝炎再活性化予防は可能である。HLA-DPB1上の一塩基多型がHBVワクチンの効果と関連する事が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-