エボラ出血熱の制圧を目指した次世代ワクチン等の開発研究

文献情報

文献番号
201447027A
報告書区分
総括
研究課題名
エボラ出血熱の制圧を目指した次世代ワクチン等の開発研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
河岡 義裕(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス感染分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
142,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の西アフリカ諸国におけるエボラ出血熱の流行では、感染者数が27,000人以上、犠牲者数は11,173人にのぼっており、本病の予防・治療方法を確立することは急務である。三種類のエボラワクチンの臨床試験が行われているが、副反応や製造量および効果の限界などが問題視されており、安全性が高く効果的な新規エボラワクチンの開発が望まれている。
我々は、エボラウイルスの増殖に必須の遺伝子VP30を欠損したエボラΔVP30ウイルスを作製した(Halfmann et al., 2008, PNAS)。このウイルスは通常の細胞では増えないが、VP30蛋白質を発現する人工細胞で増殖することができる。本研究では、より安全性が高く効果的なエボラワクチンを開発するため、不活化したエボラΔVP30ウイルスの効果を高めるアジュバントの探索を行う。また、ワクチン接種後やエボラウイルス感染後の宿主応答や免疫応答を調べることにより、感染防御メカニズムを解明することを目指す。
平成26年度は、(1)サルを用いたエボラΔVP30ウイルスワクチンの検証試験、(2)エボラワクチン用の新規アジュバントの探索、(3)ワクチン接種後やエボラウイルス感染後の宿主応答解析として、以下の研究を行った。
研究方法
(1)過酸化水素水で不活化したエボラΔVP30ウイルスを用いて、サルにおけるワクチン効果の評価試験を行った。すなわち、不活化したエボラΔVP30ウイルスのワクチンを2回接種したサルに、致死量の野生型エボラウイルスを感染させ、臨床症状および生残率を調べた。
(2)日本国内では、エボラΔVP30ウイルスが使用できないため、ワクチン抗原として、エボラウイルス様粒子(virus-like particle;エボラVLP)を用いる。スクリーニングでは、インフルエンザワクチンでアジュバント効果が示されている候補化合物を中心に、マウスにおける抗体産生量を調べる。平成26年度は、エボラVLPを効率良く産生するための条件設定を行った。
(3)エボラ出血熱の重症化や感染防御のメカニズムを解明するために、エボラウイルス感染患者から採取した検体を用いて、宿主応答や免疫応答の解析を行う。平成26年度は、シエラレオネ大学および関連医療機関と連携し、エボラ患者から採取したサンプルの解析研究に着手した。
結果と考察
(1)平成26年度は、過酸化水素水で不活化したエボラΔVP30ウイルスを用いて、サルにおけるワクチン効果の評価試験を行った。すなわち、不活化したエボラΔVP30ウイルスのワクチンを2回接種したサルに、致死量の野生型エボラウイルスを感染させたところ、ワクチン接種をしなかったグループのサルは全て死亡した。それに対して、過酸化水素水で不活化したエボラΔVP30ウイルスのワクチンを2回接種したグループのサルは全て生残し、またエボラ出血熱の臨床症状も示さなかった。以上の結果から、過酸化水素水で不活化したエボラΔVP30ウイルスを免疫したサルは、エボラウイルス感染を防御することが明らかとなった(Marzi et al., Science, 2015)。
(2)日本国内では、エボラΔVP30ウイルスが使用できない。そのため、平成26年度は、ワクチン抗原として使用するエボラVLPを効率よく作製するための条件設定を行った。すなわち、エボラウイルスの主要マトリックス蛋白質であるVP40と、ウイルス粒子表面糖蛋白質であるGPを発現するプラスミドを、様々な条件で細胞に導入し、上清中のVLP量を調べた。次年度は、今年度の結果に基づいて、VLPを作製し、アジュバントのスクリーニングに供する。
(3)将来的に、本研究で開発したエボラワクチンの臨床試験や、エボラウイルス感染後に回復した患者のサンプル解析を行うため、平成26年度は、エボラウイルス流行国であるシエラレオネにおいて、シエラレオネ大学および関連医療機関との共同研究を立ち上げた。同国の首都フリータウンにある34 Military Hospital内に実験室をセットアップし、エボラウイルスを扱うための設備や機器類を設置し、安全に実験を遂行するための実験システムを確立した。現在は、シエラレオネに複数名の協力研究員を派遣し、エボラ患者から採取した血液サンプルを入手し、血清や白血球の分離作業や、抗体価を調べるためのELISAなどの作業を進めている。
結論
(1)過酸化水素水で不活化したエボラΔVP30ウイルスワクチンとアジュバントの組み合わせによって、より安全で効果的なエボラワクチンの開発できる可能性が高い。
(2)エボラウイルスのVP40とGPを発現するプラスミドを細胞に導入する条件設定を行うことによって、効率良くエボラVLPを作成することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201447027C

収支報告書

文献番号
201447027Z