HTLV-1疫学研究及び検査法の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201447013A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1疫学研究及び検査法の標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 佐竹 正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
  • 久保田 龍二(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
  • 鴨居 功樹(東京医科歯科大学 眼科学)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 大隈 和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 高 起良(JR大阪鉄道病院 血液内科)
  • 内丸 薫(東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 緒方 正男(大分大学 医学部)
  • 長谷川 寛雄(長崎大学附属病院 検査部)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院)
  • 岩永 正子(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 フロンティア生命科学分野)
  • 相良 康子(日本赤十字社 九州ブロック血液センター 品質部)
  • 石塚 賢治(福岡大学医学部 腫瘍・血液・感染症内科)
  • 斎藤 益満(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院 がんセンター)
  • 増崎 英明(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 滝 麻衣(聖マリア学院大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
55,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1検査は、平成22年末に妊婦検診項目に追加されたが、確定検査の結果で判定保留となる場合が少なからず存在する。また、日本赤十字社の献血検査を用いた疫学的検討により、全国で、推計で年間3000~4000人の新規HTLV-1水平感染者が発生していることが明らかにしたが、その実態は未だ明らかになっていない。このような課題に対し、適切なHTLV-1検査手順の推進とHTLV-1の水平感染対策を目指し、[1]HTLV-1検査法標準化グループ、[2]HTLV-1水平感染の検討グループ、[3]HTLV-1水平感染メカニズム解析グループを組織し、HTLV-1キャリアのフォロー対策に資する研究を推進する。
研究方法
1)HTLV-1検査法の標準化とガイドライン作成:HTLV-1スクリーニング検査に用いる抗体検査やウエスタンブロット法の改善や代替を検討するとともに、HTLV-1感染の正確な診断のための最適な検査手順に関するガイドラインの作成を完了する。
2)HTLV-1水平感染の疫学検討:年間300万人を超える複数回献血者を対象に、前向きのコホート研究の手法を用い、男女比、年齢比の現状を正確に把握するなどHTLV-1水平感染の実態調査をさらに進めるとともに、陽転化した水平感染キャリアの追跡調査体制の構築を行う。また、HTLV-1水平感染者の関連疾患発症のリスク評価や病態予後等につき、JSPFADマテリアルバンクの検体と比較して解析を進める。
3)動物を用いた水平感染モデルの解析: HTLV-1感染により、HTLV-1が生体内でどのように拡大し、各リンパ組織での潜伏期間を経てHTLV-1感染細胞増殖が引き起こされるかを、蛍光遺伝子(mCherry)を発現する組換えウイルスを用いて解析する。
結果と考察
診療におけるHTLV-1感染(症)の診断指針(案)の作成:ウエスタンブロット法において、ターゲットとなる抗原への反応性の低下が不明確な結果に繋がる事が示唆された。平成26年度は正確な診断のための「診療におけるHTLV-1感染(症)の診断指針(案)」のとりまとめを行った。
標準品候補品の選定と国際標準化の取り組み:ウイルスコピー数測定を行う際の尺度となるもの(標準品)を設定した。ウイルスコピー数の測定値の安定性、ばらつき等を検討した結果、HTLV-1感染細胞株(TL-Om1)をPBMCで希釈した候補品を選定し作製した。
早期の保険適用を目指した先進医療によるHTLV-1検査法の実施:これまでに熊本大学が先進医療の申請作業を行っており、本研究班で標準化されたHTLV-1核酸検査法の技術移転を行った。医療施設での実用化をさらに推進する。
体外診断薬の開発支援:早期の保険適用を目指すために、協力研究者の体外診断薬メーカーが標準化された測定方法を採用した新規のHTLV-1核酸検査に関する体外診断薬開発に着手し開発を進めている。研究班は迅速な開発が遂行できるよう、検体の管理法を含めて研究結果を開示し開発の支援を行った。
献血血液を用いた前向きのコホート研究:献血時のHTLV-1検査により判明した水平感染者46例の末梢血中のウイルス量を解析したところ、ウイルス量は比較的低値で感染後短期の経過においては安定していることが明らかとなった。
JSPFADマテリアルバンクの検体を用いた発症リスクの検討: 平成26年度までに全国の協力医療機関から提供されたJSPFADマテリアルバンクの無症候性キャリア検体2333検体の中から、27例にATLへの進展が見られた。このうち、25例はウイルスコピー数が4%以上でATL発症リスクに大いに関連している事が判明した。
水平感染の疫学調査: 日赤、福岡大学と協力して、福岡県を対象に水平感染者を対象にしたキャリアフォローのための登録体制を構築した。
動物を用いた水平感染モデルの解析: HTLV-1ウイルス水平感染経路について、HTLV-1感染を追跡できる動物モデルを作製し、感染伝播や潜在の状態野解析を行う。平成26年度は、組換えウイルスの作製が完了し、in vitroでの感染能及び感染細胞内でのウイルスの局在が確認できた。
結論
本年度の検討により、前身の班研究の成果を反映させた効果的なHTLV-1検査法のワークフローが構築できたと考えられる。しかしながらHTLV-1核酸検は未だ保険適用されておらず早期の解決が必要である。また小規模であるものの水平感染例の抗体陽転後の追跡調査を行い、水平感染における抗体価とプロウイルス量の推移の全体像について想像し得る結果を得ることが出来たと考えられる。今後、症例数を増やしデータを蓄積させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201447013C

収支報告書

文献番号
201447013Z