文献情報
文献番号
201447003A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症の診断機能向上のための研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
影山 努(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 中内 美名(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
- 高山 郁代(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
- 高橋 仁(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
- 久保 英幸(大阪市立環境科学研究所 微生物保健担当)
- 大場 邦弘(公立昭和病院 小児科)
- 駒瀬 勝啓(国立感染症研究所 ウイルス3部)
- 森 嘉生(国立感染症研究所 ウイルス3部)
- 松山 州徳(国立感染症研究所 ウイルス3部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
鳥インフルエンザ、MERS等の重症呼吸器感染症および季節性インフルエンザやいわゆるかぜ症候群を引き起こすウイルス性呼吸器感染症、そして発病初期はこれら呼吸器感染症との臨床診断が難しい麻疹・風疹等の鑑別診断を行うために、簡便で短時間かつ低いランニングコストで行うことが可能なPOC遺伝子検査システムを利用した、既知の呼吸器感染症を引き起こすウイルスを診断可能な方法について開発研究を実施し、この新しい診断ツールが新興感染症対策等において、臨床現場である病院や地方衛生研究所等で役立つかどうか、その実用性について検討する事を目的とする。
研究方法
Q-primerを用いた蛍光RT-LAMP法によるインフルエンザウイルスの型(A、B、C)・亜型(H1pdm09、H3、H5、H7)を同定可能な検出系および呼吸器感染症を引き起こす10種類以上のウイルスおよびMERSコロナウイルス、麻疹・風疹ウイルスを同定可能な検出系の開発・改良を行った。また、汎用のリアルタイムPCR機で、簡易検出法を利用したDirect蛍光RT-LAMP法が実施できるように、反応試薬の最適化および乾燥化についても検討を行った。季節性インフルエンザウイルス検出用マイクロ流路チップのプロトタイプを作製し、ウイルスを用いた検出感度評価、臨床現場におけるウイルスの検出診断実証試験を行った後に、臨床現場である公立昭和病院、検査施設である大阪市環境科学研究所にて、このチップを用いたPOC遺伝子検査システムの臨床的評価を行った。また、大阪市では小児呼吸器病原性ウイルスの流行状況に関する調査研究を行った。さらに、リアルタイム病原体サーベイランス網の構築に向け、東京都小平市、大阪市では本システム導入による地域病院診断ネットワークの構築を目指した調整・調査・検討を行った。
結果と考察
反応試薬の改良により、従来と比べて反応時間の短縮化、特異性の向上、高感度化する事ができ、汎用のリアルタイムPCR機でもQ-primerを用いた蛍光RT-LAMP法が実施できることを確認した。この試薬を利用して季節性インフルエンザウイルス検出用マイクロ流路チップを作製して検出感度への影響を検討したところ、従来よりも検出感度が向上した。POC遺伝子検査システムであれば、コンタミネーションの心配もなく、高感度かつ特異的な遺伝子検査を臨床現場にて簡便・迅速に行う事が可能になると考えられた。また、試薬の乾燥化により、コールドチェーンが発達していない地域でも簡便、高感度かつ迅速な遺伝子検査を行う事が可能となり、地方衛生研究所や検疫所での活用も期待でき、新興感染症等対策にも役立つ有用な診断ツールになりうると考えられた。また、大阪市における小児呼吸器病原ウイルスの流行状況を解析した結果、現在構築中の検査系が全て整えばほぼ全てのウイルス性呼吸器感染症の病原体同定が可能となる事が分かった。
結論
POC遺伝子検査システムは核酸精製が不要でコンタミネーションリスクも無く、迅速診断キットと同等の簡便操作で検体採取から短時間で、高感度マルチプレックス遺伝子検査ができるという点で、また同時に複数の遺伝子を検出する事ができるという点から、インフルエンザのみならず他の呼吸器感染症を含むあらゆる遺伝子診断を高感度、特異的、迅速かつ簡便に臨床現場等のベットサイドで行う事が可能となる。また、検査室でも汎用のリアルタイムPCR機を用いてQ-primerを用いた蛍光RT-LAMP法が実施できるようになり、地方衛生研究所や検疫所等でも迅速かつ簡便に遺伝子検査を行う事が可能となる。
これにより医師等の感染症に対する診断能力の向上が期待でき、患者に対してはより的確な診断が行え、適切な医療および予後を予測した早期治療も可能となり、医療技術の向上が期待できる。さらに、臨床現場では検査の時間や人員を大幅に削減でき、医師等の疲弊の軽減にもつながり、特に医師不足が深刻な小児科などでは人的資産の活用も可能となる。また、臨床現場等での迅速な感染制御対策も可能となり、同時に院内感染やコミュニティー内での感染拡大の防止にも役立ち、感染症の予防、診断・治療といった感染症対策に大きく貢献できる。特に呼吸器疾患を引き起こす新興ウイルスが出現した直後には、まだ検査法が確立されていない場合においても、既存ウイルスとの鑑別診断が可能となり、新興再興感染症対策にも有用となる。
また、本システムを全国的に拡充する事で、臨床現場においてリアルタイムにウイルスサーベイランスを行う事が可能となり、地域レベルでの感染症対策にも有用となる。新型インフルエンザ等の新興感染症の出現に備えるためにも、安価で短時間にベッドサイドでも簡単に多項目の遺伝子検査を行う事ができる本システムの様なPOC遺伝子検出系の開発は重要である。
これにより医師等の感染症に対する診断能力の向上が期待でき、患者に対してはより的確な診断が行え、適切な医療および予後を予測した早期治療も可能となり、医療技術の向上が期待できる。さらに、臨床現場では検査の時間や人員を大幅に削減でき、医師等の疲弊の軽減にもつながり、特に医師不足が深刻な小児科などでは人的資産の活用も可能となる。また、臨床現場等での迅速な感染制御対策も可能となり、同時に院内感染やコミュニティー内での感染拡大の防止にも役立ち、感染症の予防、診断・治療といった感染症対策に大きく貢献できる。特に呼吸器疾患を引き起こす新興ウイルスが出現した直後には、まだ検査法が確立されていない場合においても、既存ウイルスとの鑑別診断が可能となり、新興再興感染症対策にも有用となる。
また、本システムを全国的に拡充する事で、臨床現場においてリアルタイムにウイルスサーベイランスを行う事が可能となり、地域レベルでの感染症対策にも有用となる。新型インフルエンザ等の新興感染症の出現に備えるためにも、安価で短時間にベッドサイドでも簡単に多項目の遺伝子検査を行う事ができる本システムの様なPOC遺伝子検出系の開発は重要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-