デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン・スキップ治療薬の臨床開発に資するバイオマーカーの探索

文献情報

文献番号
201446028A
報告書区分
総括
研究課題名
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン・スキップ治療薬の臨床開発に資するバイオマーカーの探索
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
  • 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院 小児神経診療部)
  • 橋戸 和夫(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 ラジオアイソトープ管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD )に対する新規医薬品として、エクソン53スキップを作用機序とするモルフォリノ核酸医薬品NS-065/NCNP-01のfirst-in-human試験が平成25年より医師主導治験として開始された。しかし本薬のようなDMD治療薬開発の歴史は浅く、特に有効性評価手法については模索が続いている状況である。このような中、ジストロフィン発現量、ジストロフィン関連マイクロRNA等の有効性評価における重要性が認識されつつある。本研究ではDMD治療薬の臨床開発に貢献しうる上記のバイオマーカー,また未だ見出されていない新規バイオマーカーについてその発現プロファイル等を明らかにし、DMD治療薬の有効性評価に資するバイオマーカーに関して新たな知見を見出すことを目指す。
研究方法
1.DMD患者由来血清のマイクロRNA発現の解析
血清中のマイクロRNAは筋疾患の病態に関するバイオマーカーとなることが示唆されている。本年度はヒトDMD患者検体の定量的RT-PCRを行い、これらの患者におけるマイクロRNA発現量の予備的解析を行った。
2.イメージング解析によるジストロフィン定量測定法の検討
ジストロフィン蛍光免疫染色について画像解析ソフトウェアを用いた解析により、正常対照検体に対する相対的なジストロフィンの定量を試みる。本年度は最適な蛍光色素の選択について検討した。
3.バイオマーカーの変動に影響を与える因子の検討
DMD患者のバイオマーカー関連因子の一つとして、治療によって発現したジストロフィンに対する抗ジストロフィン抗体の出現が懸念されている。今年度は同抗体を検出する手法の検討を行った。
なお実施中の医師主導治験(UMIN000010964, NCT02081625)の検体を用いる場合は、国立精神・神経医療研究センター治験審査委員会の承認を得た方法で実施した。その他の実験においても各種研究指針を遵守して実施した。
結果と考察
1.DMDおよび健常者の血清をエクソソームの有無で2つの分画に分け、miR-1, miR-133a, miR-206レベルを定量的RT-PCRによって測定しところ、両分画において3つとも健常者よりも上昇していた。またBMD, DM1, LGMD, FSHD, 及びDMRV患者血清のマイクロRNA発現レベルを健常者と比較したところ、LGMD, FSHD, BMD患者血清においてmiR-1レベルが、またBMD患者血清においてmiR-133a及びmiR-206レベルが健常者と比べて有意に上昇していた。
2.ジストロフィン、及びコントロールとしてのスペクトリンとの二重蛍光免疫染色によるジストロフィンの相対定量法について、ジストロフィンを検出する蛍光のバックグラウンドを抑制する手法について検討した。その結果,使用する共焦点レーザー顕微鏡に装備されている励起レーザー波長の種類を踏まえた蛍光色素の選択が重要であることが明らかとなった。さらに画像解析アルゴリズムの最適化も行うことで,バックグラウンドのレベルを低減することが可能であった。
3.抗ジストロフィン抗体の出現が想定される被験者の血清を一次抗体、さらに標識された抗ヒトIgG抗体を二次抗体とするウェスタンブロットの系を構築し、メンブレンにブロットされた正常ヒトジストロフィンが検出されるかを検討したところ、正常ヒト由来血清ではジストロフィンは検出されなかった。
結論
本研究課題では、エクソン・スキップ治療薬の臨床開発に資するバイオマーカーの探索研究として、ジストロフィン関連マイクロRNA解析、並びに蛍光免疫染色とイメージング解析によるジストロフィン定量測定を中心的に実施して検討することとしている。平成26年度は概ね研究計画に沿った成果を得るとともに、次年度に向けた課題の抽出を完了することができた。平成27年度はこれまでの成果を踏まえて、NS-065/NCNP-01を投与された被験者由来検体を用いた解析を進めることとしている。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201446028C

収支報告書

文献番号
201446028Z