文献情報
文献番号
201445004A
報告書区分
総括
研究課題名
胃薬テプレノンのアルツハイマー病治療薬としての開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
水島 徹(慶應義塾大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 横山俊一(公益社団法人 鹿児島共済会南風病院)
- 清原 裕(九州大学大学院 医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 認知症研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
22,547,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在AD治療に用いられている薬はAβの凝集を抑えたり神経細胞を保護したりすることは出来ない。そのため、症状を一時的には改善するものの病気の進行を抑制することは出来ない。上述のように我々は、テプレノンがHSPを増やすことを発見した。また我々は、テプレノンがHSP70(代表的なHSP)を増やすことにより小腸潰瘍にも有効であることを動物モデルで示し、この効果は同じ年に臨床試験でも確認された。通常の創薬では基礎と臨床の間には5年以上の期間が必要であるが、DRでは両者を直結出来ることをこの成果は示している(ヒトでの安全性が担保されているため)。さらに我々は、HSP70がAβの凝集を抑制したり神経細胞を保護したりすることにより、ADモデルマウスの記憶学習能力を顕著に改善することを示し、テプレノンがADの根本的治療薬になる可能性を示した。
そこで本研究で我々は、テプレノンのAD治療薬としての開発を行う。具体的には、他の動物モデルでの評価、分子メカニズムの更なる解析、ADモデルマウスでの薬物動態解析、既存臨床データを用いたエビデンス構築、臨床研究などを行う。特に、既承認薬には豊富な臨床情報があり、それを利用して臨床試験前にエビデンスを構築できるのがDRのメリットであるので、本研究で実施し、その方法論を確立する。
そこで本研究で我々は、テプレノンのAD治療薬としての開発を行う。具体的には、他の動物モデルでの評価、分子メカニズムの更なる解析、ADモデルマウスでの薬物動態解析、既存臨床データを用いたエビデンス構築、臨床研究などを行う。特に、既承認薬には豊富な臨床情報があり、それを利用して臨床試験前にエビデンスを構築できるのがDRのメリットであるので、本研究で実施し、その方法論を確立する。
研究方法
本研究で我々は(1)テプレノンの作用機構等の更なる解析(研究課題①~③)、(2)既存臨床データを用いたエビデンス構築(研究課題④~⑥)、(3)臨床研究の準備と実施(研究課題⑦~⑧)、以上三項目の研究を行う。
結果と考察
HSP70の抗アルツハイマー病作用機構に関しては、ヒトTau過剰発現マウスとHSP70過剰発現マウスを掛け合わせ、研究の準備を行っている。また、HSP70がグリア細胞によるAβ貪食を促進する可能性を示唆した。一方、コホート研究を利用した臨床エビデンス構築に関しては、2002年にスクリーニング健診を受けた認知症のない60歳以上の高齢者1550人を対象者としてテプレノンの服用の有無を調査するとともに、全対象者について2012年までの10年間の追跡調査を終了し認知症発症の有無を確定した。さらに、既存のデータベースを用いて、テプレノン投与群と非投与群(他の胃薬が投与されている)のアルツハイマー病の発症リスクと進行の程度を比較しエビデンスを構築する研究(後ろ向きコホート研究)に関しては、①研究のデザイン、②エンドポイントの定義、③対象集団、④比較対照集団を決定した。一方、臨床研究に関しては、以下の項目を決定した:①研究のデザイン(単施設研究、二重盲検、無作為化群間比較試験)、②エンドポイント(主要評価項目、副次評価項目)、③目標症例数と研究実施期間、④実施場所、⑤対象集団(適格基準、除外基準)、⑥登録・割付(登録の手順、 割付方法、交絡因子に対する配慮)、⑦介入・治療内容(試験薬、 投与期間、実薬およびプラセボの製造、併用禁止薬、被験者に対する中止基準、追跡不能例に対する対処)、⑧観察・検査項目とスケジュール。また、ヒト血中のHSP70のmRNA量を量るシステムを確立し、バリデーションを完了した。また現在、実薬とプラセボを委託製造している(2015年3月完了予定)。2015年3月までに、後ろ向きコホート研究と共に、公益社団法人鹿児島共済会南風病院臨床研究倫理審査委員会に申請する予定である。
結論
それぞれの業務項目は、当初の予定通りにほぼ実施することが出来た。特に、臨床試験に関しては、治験薬の製造が完了し、来年度当初より、試験を開始出来る見通しである。このように研究は順調に進んでおり、研究期間内に胃薬テプレノンのアルツハイマー病治療薬としての開発に繋がる成果をあげることが期待できる。
公開日・更新日
公開日
2016-03-14
更新日
-