エビデンスに基づく地域包括ケアシステム構築のための市町村情報活用マニュアル作成と運用に関する研究

文献情報

文献番号
201444008A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づく地域包括ケアシステム構築のための市町村情報活用マニュアル作成と運用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
熊川 寿郎(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 悦司(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
  • 平塚 義宗(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
  • 玉置 洋(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
  • 森川 美絵(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
  • 松繁 卓哉(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 長寿科学研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,全国の市町村がそれぞれの地域の課題を把握するためのツールとして、国保データベース(KDB)やその他のデータを有効活用するためのマニュアルを作成すること及びKDBなどのデータ運用に関する実態の調査を行うことである。
本研究により、KDBや当該ツールで扱うデータの具体的な活用法がマニュアル化され、全市町村に提供されれば、地域包括支援センターは地域ケア会議に必要なエビデンスに基づいた資料(個別ケースと地域課題に対するデータ)を迅速かつ的確に用意できるようになる。それによって市町村内の医療や介護の資源を無駄なく、かつ必要とする被保険者に確実に提供するための基盤情報を構築できることが期待される。
また保険者である市町村が、医療や介護レセプトの中身KDB等を用いて分析する技術を蓄積することで、どのような医療・介護サービスが不足しているのか、逆にどのようなものが過剰に提供されているか、等についても把握できるようになる。
またマニュアル作成にあたっては全国におけるKDB導入の実態把握が必要となる。
研究方法
まずプレ調査として平成26年9月~12月に4か所の自治体(静岡県三島市、東京都国立市、東京都町田市、奈良県生駒市)に対して地域ケア会議におけるエビデンスデータ活用を用いた地域課題の把握・整理及びKDBに関する活用状況に関してインタビューを行った。
このインタビューの結果を基にアンケート用紙を作成し、平成27年度1月から全国の市町村自治体1,741(市790、特別区23、町745、村183、合計1,741を対象として、地域ケア会議等におけるKDBを含む客観的データの活用状況および今後の活用可能性等を把握するための実態調査(「地域ケア会議における客観的データの活用に関する調査」)を実施した。調査事項は「地域ケア会議の開催状況)」、「個別ケース検討タイプの地域ケア会議におけるアセスメント情報の標準化・共有、保健医療情報の把握、保健医療データベースの認知・活用(国保データベース(KDB)含)」、「地域支援事業の取組状況」、「地域課題検討タイプの地域ケア会議における客観的情報・データの参照状況(国保データベース(KDB)含)」とした。
 KDBマニュアル案については市町村の協力によりKDBを実際に操作することによって、地域ケア会議等に有用な情報を得るための簡易マニュアル(案)を作成した。
結果と考察
全国市町村のアンケート結果は全国の市町村621(回収率35.7%)から返答を得た。地域ケア会議は85%以上の市町村で開催されているが、「主治医との情報共有」がなされている市町村は約3割と低く、また「特定健診・特定保健指導の情報」はほぼ活用されていない(3.6%)ことがわかった。さらに「KDBに興味がある」と答えた自治体は7割を超えたものの、実際に「地域ケア会議でKDBを活用したことがある」と答えた自治体はわずか3.3%であった。このように 地域包括ケアシステム構築にむけた、「地域ケア会議」を活用した自治体の政策形成プロセスにおいて、 (とりわけ「地域課題の検討レベル」で)エビデンスデータの活用が普及していない状況が確認された。特に、医療・介護連携の分野は、今後の課題であり、エビデンスデータ活用に関する具体的手法の提示等、自治体へのサポートが必要(KDB等のナショナルデータベースの活用を含め)であることが明らかにされた。(詳細は分担研究報告を参照)
KDBマニュアルの作成においてはKDBから抽出される情報をピボットテーブルに変換して用いることができるマニュアル案を作成した。
結論
 インタビューの結果、地域ケア会議等におけるデータの活用において、一部の地方自治体(市町村)では個人情報保護の問題が立ちはだかっていることがわかった。
 地方自治体(市町村)へのアンケートの結果、地域ケア会議におけるデータ活用、とくにKDBの活用は進んでいないことが明確となった。
 地方自治体(市町村)でKDBの活用を促進するためには、データ活用の具体的手法等、地方自治体(市町村)へのサポート性が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201444008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域包括ケアシステム構築にむけた、「地域ケア会議」を活用した自治体の政策形成プロセスにおいて、 (とりわけ「地域課題の検討レベル」で)エビデンスデータの活用が普及していない状況が確認された。特に、医療・介護連携の分野は、今後の課題であり、エビデンスデータ活用に関する具体的手法の提示等、自治体へのサポートが必要(KDB等のナショナルデータベースの活用を含め)であることが明らかにされた。(詳細は分担研究報告を参照)
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
KDBは国保,後期高齢者医療制度の医療レセプトに加えて介護保険レセプト並びに特定健康診査・保健指導データも含む地域包括ケア推進の上で極めて有用な情報源として期待される。必要なデータをcsv形式で抽出し、キューブ化してExcelのピボットテーブルを用いて柔軟に分析する為のマニュアルを開発した。また地域保健・健康増進報告や医療給付実態調査等の公開データを用いて使用法を実演した。27年度は活用へ改訂した。平成28年度は改訂したKDBマニュアルを10の自治体で実際に使用してもらい、さらに修正を重ねた。
その他行政的観点からの成果
地域課題検討レベルの地域ケア会議は、H27年度では開催が4割程度であり、地域課題の把握分析に客観的データを参照しているのは、そのうち3割未満と非常に限られていた。KDBの活用について、地域ケア会議における活用は、現時点で、ほとんどなされていなかった(10自治体未満)。H29年度には地域課題検討レベルの地域ケア会議の開催は7割に達したことがわかったが、KDBの活用については個人情報への懸念などで、進んでいないことが明らかとなった。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国民との科学・技術対話社会」に対する取り組み:医療の質の地域格差是正に向けたエビデンスに基づく政策形成の推進”  シンポジウム(JST/RISTEX戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発))

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okamoto E, Kumakawa T.
Estimation of per-case hospitalization charges from Diagnosis-Procedure-Combination (DPC) data and an international comparison of hospital prices with OECD countries
J. Natl. Inst. Public Health. , 63 (6) , 532-537  (2014)
原著論文2
Morikawa M.
Are problems of underrecognition and devaluation of care work being resolved?: Japanese policy experience and prospects for securing the Long-term care workforce.
Taiwanese Journal of Social Welfare. , 12 (1) , 35-37  (2015)
原著論文3
Morikawa M.
Toward community-based integrated care: trends and issues in Japan’s long-term care policy.
International Journal of Integrated Care. , 14 , 1-10  (2014)
原著論文4
三宅貴之, 佐藤栄治, 三橋伸夫,他
アクセシビリティと受領割合から見た二次医療圏の検討-栃木県の二次医療圏を事例として-
日本建築学会計画系論文集 , 79 (702) , 1783-1790  (2014)
原著論文5
讃岐亮, 佐藤栄治, 熊川寿郎,他
大災害時における医療施設へのアクセシビリティ評価
厚生の指標 , 61 (11) , 1-6  (2014)
原著論文6
森川美絵
社会政策におけるケアの労働としての可視化:介護労働の評価からみた介護保険制度の課題
社会政政策 , 5 (3) , 25-37  (2014)
原著論文7
三浦宏子, 守屋信吾, 玉置洋,他
高齢期の地域住民の口腔機能の現状と課題
保健医療科学 , 63 (2) , 131-138  (2014)
原著論文8
玉置洋, 平塚義宗, 岡本悦司,他
レセプトデータ突合による医療費増加のリスク因子の検討-特定健康診査における質問表および各検査項目の分析-
厚生の指標 , 61 (6) , 1-5  (2014)
原著論文9
大口達也、大多賀政昭、森川美絵、玉置洋、熊川寿郎
高齢者へのケアに資する活動及び組織・団体の情報リストの開発-文献の定性的コーディングによる類型化をもとに-
地域福祉研究:日本生命済生会, 地域福祉研究 ,  (45) , 70-81  (2017)

公開日・更新日

公開日
2023-05-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201444008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,910,000円
(2)補助金確定額
4,910,678円
差引額 [(1)-(2)]
-678円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,715,058円
人件費・謝金 638,045円
旅費 995,018円
その他 1,562,557円
間接経費 0円
合計 4,910,678円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-06-07
更新日
-