ジストニアの分子病態解明と新規治療法開発

文献情報

文献番号
201442035A
報告書区分
総括
研究課題名
ジストニアの分子病態解明と新規治療法開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
梶 龍兒(徳島大学 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・臨床神経科学)
研究分担者(所属機関)
  • 瓦井 俊孝 (徳島大学 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・臨床神経科学)
  • 後藤 恵(徳島大学 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・機能脳神経外科学)
  • 長谷川 一子(国立病院機構相模原病院神経内科・臨床神経学)
  • 平 孝臣(東京女子医大脳神経外科学・機能脳神経外科学)
  • 小幡 文弥(北里大学・医療衛生学部・医療検査学科・免疫学教室・分子遺伝学)
  • 一瀬 宏(東京工業大学大学院生命理工学研究科・分子神経科学)
  • 横地 房子(東京都立多摩総合医療センター神経内科・臨床神経学)
  • 坂本 崇(国立精神神経医療研究センター・臨床神経)
  • 井上 治久(京都大学iPS細胞研究所・幹細胞医学)
  • 三村 治(兵庫医科大学眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(難治性疾患実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ジストニアに関してその病態解明に向けた研究を進めていくとともに、新規治療法開発に向けた研究を進めていく。
研究方法
1) ジストニア病態解明・治療法開発を行うために、ジストニア関連遺伝子のKnock-out (KO)マウスの作成や解析、またiPS細胞から大脳基底核作動性GABA神経細胞への分化誘導技術の確立開発を目指す。
2) 新たに発見されたものも含め、遺伝子検査を行えるシステムを整備し、遺伝子診断に応じた遺伝子相談や治療法の開発、治療ガイドラインの作成を目指す。
3) 治療法確立の観点から、内科的/外科的治療についての検討やまた心理面での治療介入など、具体的な症例検討を通じて、ジストニアの臨床、研究に関する情報の交換、検討を行う。
結果と考察
1) KOマウス、iPS細胞
ジストニアのモデルマウスとして期待されるSpr-KOマウスの生存期間を延長させることに成功した。成獣となったSpr-KOマウスには、胸椎の前屈や眼瞼下垂などいくつかの特徴的なフェノタイプが認められた。また筋電図検査にて、安静時にもリズミカルな上腕二頭筋と上腕三頭筋のほぼ同期した収縮が確認でき、れらの拮抗筋の同期した収縮はL-Dopa投与により消失することが判明した。
iPS細胞からの分化誘導技術の開発については、健常ヒト血球細胞より樹立したiPS細胞からSFEBq法による分化誘導を行い、大脳皮質神経細胞への分化誘導効率は、皮膚線維芽細胞から作製したiPS細胞と大きな差がなく、効率良く分化が可能でことが明らかになった。
2) 遺伝子検査
学会、ホームページで不随意運動の症例に関してのコンサルテーションを幅広く呼び掛け、寄せらせた症例の臨床情報、ビデオファイルを検討し、phenomenologyからの評価を行った。さらに表現型から推測される既知のジストニア遺伝子のシークエンス解析を行った結果、61症例のうち18症例(29.5%)においてジストニア遺伝子異常が見出された。さらに、TUBB4A遺伝子に変異を持つジストニア兄弟例が見つかり、臨床像を再評価すると、報告されているHypomyelination with Atrophy of the Basal ganglia and Cerebellum (H-ABC)に一致していた。
DYT5ジストニアが疑われた患者2名について、DYT5ジストニア原因遺伝子GCH1の変異解析を行った結果、1名の患者からGCH1のexon 1において新規遺伝子変異(c.T323T/C [Y109H])、残りの1名ではGCH1のexon 5において既報遺伝子変異(IVS5+1g>g/c)をそれぞれ検出した。また同様に、Sau96Iを用いたPCR-RFLP法においても、患者のGCH1のexon 1にc.T323T/C [Y109H]変異が確認された。さらに、今回検出されたY109H変異がSNPでないことを確認するために、健常者群98名についてSau96Iを用いたPCR-RFLP法による変異解析を行った。その結果、今回の新規遺伝子変異は、健常者群からは検出されなかった。DYT4ジストニア、DYT12ジストニアおよびDYT16ジストニアの原因遺伝子TUBB4A、ATP1A3、PRKRAについて変異解析システムを構築し、遺伝性ジストニア患者8名について、全エクソンを標的とした変異解析を行った。その結果、TUBB4AとPRKRAでは疾患特異的変異は検出されなかったが、ATP1A3のexon 17において患者1名から既報遺伝子変異(c.G2443G/A[E815K])を検出した。
3) 研究会
平成27年1月24日に学士会館にて、ジストニアに関する研究会を開催した。疫学調査や遺伝子検査、難治性症例の検討などを含め、厚生労働省精神・神経疾患研究委託事業「ジストニアの疫学・病態・治療に関する研究」(長谷川一子班長)、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「ジストニアの治療法の確立・治療指針策定のための調査研究」(研究代表者梶)から引き続くジストニアの臨床、研究に関する情報の交換を行った。
結論
ジストニアは症状が多彩であり、診断を含めて病態が不明な点が多く、治療も困難であることが多い。基礎研究ではKoマウスやiPS細胞などのジストニアモデルの作成やそれらを用いた病態解明、新規治療法開発に向けた研究の推進、また具体的な症例を通じた薬物・ボツリヌス・DBSなどによる治療など臨床面も踏まえて、今後も研究を続けていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-03-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201442035C

収支報告書

文献番号
201442035Z