経皮感作による重篤な小麦アレルギーの病態解明ならびに予防法の確立

文献情報

文献番号
201441005A
報告書区分
総括
研究課題名
経皮感作による重篤な小麦アレルギーの病態解明ならびに予防法の確立
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松永 佳世子(学校法人藤田学園 藤田保健衛生大学 医学部皮膚科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博久(国立成育医療センター)
  • 矢上 晶子(冨高 晶子)(学校法人藤田学園藤田保健衛生大学医学部皮膚科学講座)
  • 野口 恵美子(筑波大学医学医療系 遺伝医学分野)
  • 玉利 真由美(理化学研究所統合生命医科学研究センター疾患多様性医科学研究部門呼吸器・アレルギー疾患研究チーム)
  • 加藤 善一郎(岐阜大学大学医学部付属病院 小児科学・構造医学(附属病院小児科学講座))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、加水分解コムギ末であるグルパールGP19Sを含む旧茶のしずく石鹸使用者において重篤な即時型アレルギー症例が2,111例登録され、多くは回復傾向にあるが、回復の遅い症例が問題になっている。本研究では、GP19S による即時型コムギアレルギー確定例の患者のゲノムDNA を使用して、全ゲノム解析を行うこと、ならびに原因タンパク質を詳細に解析することにより、食物アレルギーおよび経皮感作の病態メカニズムの解明につなげることを目的としている。
研究方法
1)日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」に登録されている医療機関より、茶のしずく石鹸等に含まれた加水分解コムギGP19Sによる即時型コムギアレルギーの診断基準により確実例を対象とし、GP19S を含む石鹸の使用により重篤な小麦アレルギーを呈した症例で本研究について了解と同意の得られた血液サンプルを収集した。
2)全国の診療機関との共同研究でGP19Sにより重篤な小麦アレルギーを発症した患者のゲノム収集を開始し、480例のゲノム解析用DNA を収集した。
3)経皮感作の皮膚バリア機能に関する関連解析経皮感作であることが明らかな患者群であるため、皮膚バリア機能に影響を与えるフィラグリンを候補遺伝子として、関連解析を行った。タイピングはインベーダー法を用いた。
4)γグリアジン内に存在するエピトープの共通性等、及び潜在的エピトープモチーフについて、配列解析から検討した。
5)T細胞エピトープ解析の結果から、HLA立体構造とエピトープペプチドとの複合体解析技術の検討を行った。
6)食物由来抗原が引き起こす疾病としてセリアック病があるが、これまでに報告のある疾病に関連したHLAと脱アミド化されたエピトープペプチドとの複合体構造から、脱アミド化の与える影響を検討した。
結果と考察
1) 全国の医療施設よりGP19S による即時型コムギアレルギー確実例のゲノムサンプル収集全国の医療施設より総数485件を収集した。
2) er2554X, Ser2889X, Ser3296X, Lys4022X について症例480 人、一般集団528 人のタイピングを行ったが、機能喪失変異の頻度について有意差は認められなかった。Kono らの報告による北海道一般集団のアレル頻度との差は、ほぼ同一であった。
3) 18 か所の遺伝子多型とGP19S による食物アレルギーの発症との間に有意な関を認めなかった。
4)B細胞エピトープ解析先行文献により解析されたB細胞エピトープについては、異なった患者血清にて様々な程度で認識されており、さらに脱アミド化によりその結合が増強されることが判明している。今回の検討では、上記のコア配列以外にも異なった種類の配列が認識されていることを確認した。それらのエピトープでは、必ずしも患者における共通性は見いだされない場合もあるが、コア配列に準じて保存された配列を認識している可能性が示唆された。さらに、不完全モチーフにおける検討にて、特にP5のアミノ酸配列の変化により、その認識が変化することが認められた。また、B細胞エピトープについては、繰り返し配列の多いγグリアジンタンパクの前半に多く存在しており、T細胞エピトープについても類似したモチーフを利用している可能性が示唆された。
5)Protein Data Bank に登録されたHLA 立体構造データベースを利用してHLA タンパク単体の構造モデルを作成する技術に加え、認識ペプチドとの複合体モデル構造の解析に関する技術開発を行った。また、関連する立体構造決定技術の開発と実際のタンパク発現・結晶化等の技術開発を併行して行い、複合体解析の方法を確立することができた。結果として、HLAとペプチド2者複合体の解析にくわえ、T細胞レセプターの構造との3者複合体解析が重要と考えられた。
6)セリアック病に関連したHLAと脱アミド化されたエピトープペプチドとの複合体構造解析行った結果、B細胞エピトープだけでなく、T細胞エピトープの反応が著明に増強されるメカニズムとして、HLAと脱アミド化ペプチド間において、水素結合から、イオン結合への変化が生じることにより、結合が著明に増強し、結果として反応が増強すると考えられた。
結論
1)GP19Sにより重篤な小麦アレルギーを発症し患者のゲノムを使用して、フィラグリン機能喪失変異との関連解析を行ったが、関連は認められなかった。
2)GP19Sによる食物アレルギーとGWASで同定された18 ヶ所のアトピー性皮膚炎の疾患リスクアレルとの間に有意な関連は認められなかった。
3)今後エピトープの構造解析を進めることで、治療法確立に繋がる知見を得ることができると考えられ、構造解析が重要な役割を果たすことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201441005C

収支報告書

文献番号
201441005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,840,000円
(2)補助金確定額
18,559,945円
差引額 [(1)-(2)]
3,280,055円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,721,120円
人件費・謝金 2,395,794円
旅費 1,137,610円
その他 1,022,357円
間接経費 4,283,064円
合計 18,559,945円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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