免疫療法による花粉症治療の新しい展開を目指した研究

文献情報

文献番号
201441003A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫療法による花粉症治療の新しい展開を目指した研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 美孝(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 花澤 豊行(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 櫻井 大樹(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 下条 直樹(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 岡野  光博(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 藤枝 重治(福井大学 医学部)
  • 竹内 万彦(三重大学 大学院医学系研究科)
  • 大久保 公裕(日本医科大学)
  • 太田 伸男(山形大学 医学部)
  • 石井 保之(理化学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(免疫アレルギー疾患等実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
舌下免疫療法が有する特徴を活用して、アレルギー性鼻炎に対する早期介入も含め治療の有効な展開を図る。また、小児アレルギー性鼻炎の診断について検証し、アレルギー性鼻炎/花粉症の発症経過の解明、年少児での診断基準の作成を行い、早期介入の準備に向けた取り組みを行う。
研究方法
スギ花粉エキスを用いた舌下免疫療法を受療する患者を対象に、スギ花粉飛散前と飛散ピーク時にQOL調査、飛散終了後に効果の自覚、課題、継続の希望などについてアンケート調査を行った。このうち30名の患者には携帯端末を貸し出して、舌下免疫療法の実施に関して定期的な確認を行う一方、花粉飛散情報の提供や治療相談を提供して相互の情報交換を進めた。
①これまで本研究助成で明らかにした舌下免疫療法の効果予測因子、バイオマーカーについて検証を進める。
②スギ花粉感作陽性・未発症者に対して、花粉飛散2カ月前からのスギ花粉エキスの舌下投与がスギ花粉症発症を抑制するかどうか多施設共同プラセボ対照2重盲検試験で明らかにする。
③末梢血、鼻汁、鼻粘膜上皮擦過検体を採取し、免疫学的パラメーターの変動、遺伝子発現の変動などの検討から、スギ花粉症発症のマーカー、舌下免疫療法の効果のバイオマーカーについて検討した。
④舌下免疫療法の効果の向上を目指したアジュバントの開発を進めた
結果と考察
①舌下免疫療法の課題の改善のために、バイオマーカー、効果予測因子の確立に向けた取り組みを施設の倫理委員会承認後に進めた。新たにpathogenic Th2細胞の存在を明らかにして新たなマーカーとして確認した。また、アドヒアランスの向上に向けた携帯端末を用いた取り組み、QOL調査、費用便益に関する調査も本年2月からのスギ花粉飛散期に進めていく予定で倫理委員会の承認を得て準備した。シーズン終了後に解析を行う。 
②舌下免疫療法を利用した、スギ花粉感作陽性・未発症者に対する発症予防試験については新規に研究計画書を作成し、本年度は50名が参加して実施している。
③三重大学の研究班の検討ではIL-10産生CD4陽性T細胞、IL-10産生B細胞が舌下免疫療法の実薬群で増加していた。また、鼻水中のスギ特異的IL-4の測定についての検討からは感作陽性者では発症の有無に関わらず血清中のスギ特異的IgE値と正の相関がみられた。一方、山形大学の研究班の検討では、むしろ実薬群でこれらの細胞数の低下が見られ、またスギ抗原刺激IL-10 産生細胞数の増加がみられた。千葉大の検討ではスギ花粉感作陽性者では末梢血中にST2陽性Th2細胞の増加が見られるが,発症者ではその数の増加がみられ発症への関与が想定された。また、末梢血の好塩基球の遺伝子発現解析から感作、発症に伴って発現が変動する遺伝子が確認され検証が進められている。
発症候補遺伝子としてのCystatinについてはその誘導にIL-4,IL-13さらにtryptaseが関与し、tryptaseはIL-4とIL-13のCystatin誘導を増強した。Cystatinを鼻繊維芽細胞に作用させるとfibronectinとtype 1 collagenの遺伝子発現の増加がみられた(福井大)。
④舌下免疫療法のアジュバントとしてNKT細胞のリガンドを含むリボソームの頸部リンパ節移行、誘発症状の改善効果をマウスの試験で確認した。また、岡山大学の研究班の検討では、protein A/IgA複合体が末梢血単核球から著明なIL-10の産生を誘導することが確認された。
⑤260名の新生児を対象にしたコホート試験から、1歳時にアレルギー性鼻炎と診断したのは5例(2%)で、2歳時では8例(3.2%)であった。吸入抗原に対する特異的IgEが陰性であっても、鼻粘膜スメアで好酸球の浸潤を認める症例が多く存在し、診断での有用性は明らかではなかった。5歳以上の小児アレルギー性鼻炎の診断に関するアンケート調査は症例の集積を進めている。
結論
舌下免疫療法の有効な普及を図るため①治療効果の特徴、バイオマーカー、効果予測因子、②早期介入に向け舌下免疫療法の発症予防効果の有効性、③アジュバント開発、④小児アレルギー性鼻炎の診断法に向けた検討を進め、期待できる候補、項目を含めて研究を進めている。今後は得られた内容の検証、臨床展開に向けた取り組みを進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
2018-06-26

行政効果報告

文献番号
201441003C

収支報告書

文献番号
201441003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,896,000円
(2)補助金確定額
25,896,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,004,994円
人件費・謝金 1,483,227円
旅費 1,204,520円
その他 3,307,259円
間接経費 5,896,000円
合計 25,896,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
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