文献情報
文献番号
201439006A
報告書区分
総括
研究課題名
インスリン抵抗性を改善する新規薬剤の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
垣塚 彰(京都大学 京都大学大学院生命科学研究科高次生体統御学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肥満時にインスリン抵抗性が起こり、それが糖尿病の大部分を占める2型糖尿病の原因となっていることは周知の事実である。しかしながら、肥満時にインスリン抵抗性が引き起こされることの生物学的意義やメカニズムはよく解っておらず、その事が決定的な治療法が見つからない要因となっている。我々は、インスリン抵抗性の根幹は、「レプチン抵抗性」にあると考えている。この「レプチン抵抗性」は、脂肪が豊富に摂取出来る時には、糖に優先して脂肪をできる限り利用するために、生物が飢餓に対抗する手段として獲得した形質の1つである。従って、「レプチン抵抗性」を改善することができれば、肥満状態が改善することのみならず、今度は糖が使われるようになり、糖尿病状態(インスリン抵抗性)も改善できるであろうと考えた。
我々が、神経変性疾患の治療を目指して開発してきた化合物の中にin vivoでERストレスを抑制する作用を示すものが見つかった。近年、高脂肪食下の「レプチン抵抗性」に視床下部でのERストレスが関与することが示されるようになった。このような背景のもと、本研究では、我々が開発した新規化合物によって「レプチン抵抗性」が改善され、その結果インスリン抵抗性が改善できる可能性を検証することを目的とした。
我々が、神経変性疾患の治療を目指して開発してきた化合物の中にin vivoでERストレスを抑制する作用を示すものが見つかった。近年、高脂肪食下の「レプチン抵抗性」に視床下部でのERストレスが関与することが示されるようになった。このような背景のもと、本研究では、我々が開発した新規化合物によって「レプチン抵抗性」が改善され、その結果インスリン抵抗性が改善できる可能性を検証することを目的とした。
研究方法
1.大腸菌で作らせたレコンビナントレプチンによって誘導される食欲抑制が高脂肪食下で見られなくなるかどうか?さらに、この時の「レプチン抵抗性」が、我々の新規化合物によって解除されるかどうか?を検証した。
2.マウスを通常食から高脂肪食へ切り替えるのと同時に化合物を一日一回腹腔内に投与した。4週間この条件で飼育し、摂餌量、体重、空腹時の血糖値、血中インスリン値、脂肪酸値、総コレステロール値、中性脂肪値の等のメタボリックパラメーターの測定を行った。
3.マウスを高脂肪食下で4週間飼育後、非治療群、化合物投与群に分け、さらに高脂肪食下で4週間飼育を行い、メタボリックパラメーターの測定を行った。
4.レプチンが欠失したob/obマウスを非投与群と化合物投与群に分け、投与群には化合物を一日一回腹腔内投与し、4週間後、メタボリックパラメーターの測定を行った。
5.マウスを通常食から高脂肪食へ切り替えるのと同時に化合物を一日一回腹腔内投与した。4週間この条件で飼育した後、視床下部のRNAに対し、ERストレスマーカーであるCHOP mRNA及び成熟型XBP1 mRNAの発現量の比較を行った。
2.マウスを通常食から高脂肪食へ切り替えるのと同時に化合物を一日一回腹腔内に投与した。4週間この条件で飼育し、摂餌量、体重、空腹時の血糖値、血中インスリン値、脂肪酸値、総コレステロール値、中性脂肪値の等のメタボリックパラメーターの測定を行った。
3.マウスを高脂肪食下で4週間飼育後、非治療群、化合物投与群に分け、さらに高脂肪食下で4週間飼育を行い、メタボリックパラメーターの測定を行った。
4.レプチンが欠失したob/obマウスを非投与群と化合物投与群に分け、投与群には化合物を一日一回腹腔内投与し、4週間後、メタボリックパラメーターの測定を行った。
5.マウスを通常食から高脂肪食へ切り替えるのと同時に化合物を一日一回腹腔内投与した。4週間この条件で飼育した後、視床下部のRNAに対し、ERストレスマーカーであるCHOP mRNA及び成熟型XBP1 mRNAの発現量の比較を行った。
結果と考察
1.通常食で飼育したマウスでは、レプチンを腹腔内投与した群は非投与群に比べ、摂餌量に有意な減少を認めた。しかしながら、高脂肪食で飼育したマウスでは、両群で、摂餌量に有意な差は認められなかったが、レプチンと化合物を同時に投与した群では、摂餌量の有意な減少が認められた。
2.高脂肪食での飼育開始と同時に化合物を投与した群では、非投与群と比べて、摂餌量、体重増加が有意に抑制され、空腹時の血糖値、血中インスリン値、脂肪酸値、総コレステロール値、中性脂肪値も有意に低く、正常値を維持した。
3. 高脂肪食下で4週間飼育した野生型マウスで、さらに高脂肪食下で化合物を投与した群では、非投与群と比して有意な摂餌量の減少と体重減少が観察された。また、有意な空腹時の血糖値の低下、血中インスリン値の低下、脂肪酸値の低下、総コレステロール値の低下、中性脂肪値の低下が観察された。
4. ob/obマウスでは、化合物の腹腔内投与によって、体重、摂餌量も維持され、有意な減少は観察されず、空腹時の血糖値、血中インスリン値、脂肪酸値、総コレステロール値、中性脂肪値も非投与群に比して、有意な減少は観察されなかった。
5. 高脂肪食での飼育開始と同時に化合物を4週間投与した群では、非投与群と比べて、視床下部でのERストレスマーカーであるCHOP mRNAと成熟Xbp1 mRNAの発現が有意に低下していた。
2.高脂肪食での飼育開始と同時に化合物を投与した群では、非投与群と比べて、摂餌量、体重増加が有意に抑制され、空腹時の血糖値、血中インスリン値、脂肪酸値、総コレステロール値、中性脂肪値も有意に低く、正常値を維持した。
3. 高脂肪食下で4週間飼育した野生型マウスで、さらに高脂肪食下で化合物を投与した群では、非投与群と比して有意な摂餌量の減少と体重減少が観察された。また、有意な空腹時の血糖値の低下、血中インスリン値の低下、脂肪酸値の低下、総コレステロール値の低下、中性脂肪値の低下が観察された。
4. ob/obマウスでは、化合物の腹腔内投与によって、体重、摂餌量も維持され、有意な減少は観察されず、空腹時の血糖値、血中インスリン値、脂肪酸値、総コレステロール値、中性脂肪値も非投与群に比して、有意な減少は観察されなかった。
5. 高脂肪食での飼育開始と同時に化合物を4週間投与した群では、非投与群と比べて、視床下部でのERストレスマーカーであるCHOP mRNAと成熟Xbp1 mRNAの発現が有意に低下していた。
結論
我々が、神経細胞死を防ぐ目的で開発した新規化合物は、マウスに高脂肪食を与えた時に誘導される肥満、インスリン抵抗性、脂質代謝異常を抑制する作用を持つことが判明した。さらに、これらの作用は、視床下部での「レプチン抵抗性」を解消することで得られている可能性が強く示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-09-16
更新日
-