健康寿命延伸のための日本人の健康な食事のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201439004A
報告書区分
総括
研究課題名
健康寿命延伸のための日本人の健康な食事のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
古野 純典(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 笹月 静(国立研究開発法人国立がん研究センター)
  • 溝上 哲也(国立研究開発法人国立国際医療研究センター)
  • 宮地 元彦(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
  • 瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究はわが国に特有な食物・栄養要因の疾病予防効果を明らかにし、日本人の「健康な食事」に関する疫学的知見を集積することを目的とする。このために、属性が異なる5つのコホート研究の縦断研究あるいは断面研究によって食物要因と死因別死亡、糖尿病罹患、筋・骨格系疾患などの健康アウトカムとの関連性を検討する。また、国民健康・栄養調査のデータを活用して食事パターン解析を行い、「健康な食事」の構成食品について検討する。
研究方法
1.健康な食事のコホート研究
 九州大学福岡コホート研究では基礎調査(平成16~19年)と2次調査(平成22~24年)で得られた約8,500名のデータに基づき糖尿病罹患を把握し、食事パターンとの関連を検討した。多目的コホート研究(JPHC Study)では約9万人のデータをもとに緑茶飲用と全死亡および死因別死亡との関連について検討した。職域健康栄養コホート研究では古河栄養健康研究から得られた勤労者約2,000名のデータを用いて、食物要因と糖尿病およびうつに関する断面的解析を行った。佐久コホート研究では追跡データを整備するとともに、コホート研究における断面的解析および縦断的解析のために食事摂取基準2015が定める複数の栄養素の基準をいくつ満たすかにより栄養摂取状況をスコア化する方法を検討した。高齢者コホート研究では地域在住高齢者を対象とした2つのコホートの追跡データの整備を進めるとともに、体重減少あるいは低BMIを有する者について身体機能および健康状態等を検討した。
2.国民健康・栄養調査の活用研究
 平成24年国民健康・栄養調査参加者のうち、20~84歳の成人男女25,723名を対象に主成分分析による食事パターン解析を行った。
結果と考察
結果
1.健康な食事のコホート研究
 九州大学福岡コホート研究では主成分分析により2つの食事パターンが同定された。一つは野菜、果物、海藻、きのこ、大豆製品、魚の高摂取で特徴づけられる食事パターンであり、いわゆる健康的食事パターンと解釈される。もうひとつは牛肉・豚肉、肉加工品、鶏肉、卵などの動物性食品の高摂取で特徴づけられた。これらの食事パターンと糖尿病リスクとの関連を検討したが、いずれの食事パターンも明らかな関連を示さなかった。多目的コホート研究(JPHC Study)では緑茶飲用と全死亡との間に負の関連を観察した。死因別では、負の関連が心疾患死亡において男女ともに見られ、脳血管疾患、呼吸器疾患(男性のみ)、外因(女性のみ)による死亡においてもみられた。一方、男女ともにがん死亡との間には関連がみられなかった。
 職域健康栄養コホート研究の断面解析では野菜・きのこ類・いも・海藻・大豆製品・卵の高摂取で特徴づけられる「健康食パターン」と入眠困難と負の関連を認めた。佐久コホート研究では食事摂取基準にもとづく栄養摂取スコアを考案した。高齢者コホート研究の断面解析では介護認定を受けていない場合でも体重減少または低BMIのある者は歩行能力の低下、外出回数の減少、口腔機能の低下等がみられた。

2.国民健康・栄養調査の活用研究
 1日の食事全体では、野菜類やしょうゆの因子付加量が高い「和食パターン」、パンやマーガリンの因子付加量が高い「パン食パターン」、肉や油脂の因子付加量が高い「洋食パターン」、うどん・めん類の因子付加量が高い「めん類パターン」が同定された。朝食、昼食および夕食別で異なる食事パターンが同定された。

考察
 健康的食事パターンの構成食品として、野菜、果物、海藻、きのこ、大豆食品および魚が挙がってきた。しかし、この食事パターンは糖尿病リスクに対して予防的ではなかった。大規模コホート研究において観察された緑茶飲用と全死亡との予防的関連は日本人の嗜好飲料の有用性を支持する知見である。職域健康栄養コホート研究における「健康食パターン」と入眠困難との負の関連は興味深いが、いずれも断面的知見であり、縦断研究での検証が望まれる。食事摂取基準の栄養素基準をいくつ満たすかにより栄養摂取状況をスコア化する方法は他のコホート研究にも適用できるものであり、健康な食事を評価する上で有用なツールになると期待される。
 国民健康・栄養調査では食事パターンに主食の関与が大きいことが示唆されたが、これは2つのコホート研究における食事パターン解析の結果とは様相を異にする知見である。

結論
 健康的食事パターンが2型糖尿病に予防的であるとの知見は得られなかったが、習慣的な緑茶飲用には健康増進効果があることを示す知見が得られた。食事摂取基準2015が定める複数の栄養素の基準をいくつ満たすかにより栄養摂取状況をスコア化する方法が考案された。国民健康・栄養調査の解析では食事パターンに主食の関与が大きいことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201439004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人の健康的食パターンが複数のコホートにおいて共通して認められたが、糖尿病リスクとの関連は見られなかった。緑茶が死亡リスク低減に関連していることが明確にされた。
臨床的観点からの成果
糖尿病等生活習慣病予防につながる知見が得られた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
新たに考案した栄養素摂取スコアは食事摂取基準の活用に役立つ。国民健康栄養調査結果に基づく食事パターン解析は初めての試みであり、国民健康栄養調査の活用につながるものである。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
Saito E, Inoue M, Sawada N, Shimazu T, et al. Ann Epidemiol (in press)
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kurotani K, Akter S, Kashino I, et al
Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study.
BMJ , 352 (i1209)  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
2016-07-21

収支報告書

文献番号
201439004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,989,000円
(2)補助金確定額
14,989,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,860,042円
人件費・謝金 1,662,319円
旅費 277,286円
その他 5,760,157円
間接経費 3,459,000円
合計 15,018,804円

備考

備考
自己充当額29,804円

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-