文献情報
文献番号
201439001A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患の発症予測・重症化予測に基づいた診療体系に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
安田 聡(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
- 峰松 一夫(国立循環器病研究センター)
- 飯原 弘二(九州大学 脳神経外科)
- 松田 晋哉(産業医科大学)
- 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部、研究開発基盤センター)
- 豊田 一則(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
- 西村 邦宏(国立循環器病研究センター 統合情報センター)
- 中尾 一泰(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 宍戸 稔聡(国立循環器病研究センター 研究推進支援部)
- 安斉 俊久(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 小川 久雄(国立循環器病研究センター、熊本大学大学院 生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国においては、地域における登録の試みがあるものの、全国レベルでの包括的な循環器疾患登録の整備は未だ不十分である。本研究の目的は、1) 心・脳疾患データをナショナルセンターにおいて運営・統合し、全国規模の疾患登録のための整備を行う; 2) 集積された大規模データを用いて、発症・重症度予測モデルの開発、Quality Indicator(QI)を用いたプロセス・アウトカム指標を中心とした医療の質評価を行う ことにある。
研究方法
研究計画1:脳心循環器疾患登録システムの整備とその運用- 循環器データベースとしては、脳卒中データバンク(日本脳卒中協会)と 循環器疾患診療実態調査(日本循環器学会主導)を基本として、これらを公的機関である国立循環器病研究センターにおいて運営・統合する。
研究計画2:DPC情報を用いたQIによるQuality of Care研究- DPCデータに基づき対象疾患(例:急性冠症候群)に関連するICD-10病名を含む症例を抽出し、同疾患関連の大規模データベースを作成する。入院時より入院中の死亡または退院までを追跡期間とし、死亡率、転帰、在院日数をアウトカムとする。薬剤、処置内容に関してはEFファイルを参照する。アウトカムに影響する施設要因の確定:因子分析により施設要因(人的資源、診断機器、インフラ、専門的治療)を確定する。患者要因(性、年齢、重症度、併存症)、施設要因がアウトカムに与える影響を、階層化モデルにより検討する。
研究計画3:院内疾患登録システムの汎用化と発症、重症度予測モデルの開発- 併存疾患・検査値その他の情報を自動的に電子カルテから取り込むことを可能とする効率的な登録方法を開発する。院内循環器登録をモデルケースに、他施設においても利用可能な汎用版システムを構築する。
研究計画2:DPC情報を用いたQIによるQuality of Care研究- DPCデータに基づき対象疾患(例:急性冠症候群)に関連するICD-10病名を含む症例を抽出し、同疾患関連の大規模データベースを作成する。入院時より入院中の死亡または退院までを追跡期間とし、死亡率、転帰、在院日数をアウトカムとする。薬剤、処置内容に関してはEFファイルを参照する。アウトカムに影響する施設要因の確定:因子分析により施設要因(人的資源、診断機器、インフラ、専門的治療)を確定する。患者要因(性、年齢、重症度、併存症)、施設要因がアウトカムに与える影響を、階層化モデルにより検討する。
研究計画3:院内疾患登録システムの汎用化と発症、重症度予測モデルの開発- 併存疾患・検査値その他の情報を自動的に電子カルテから取り込むことを可能とする効率的な登録方法を開発する。院内循環器登録をモデルケースに、他施設においても利用可能な汎用版システムを構築する。
結果と考察
DPCを利用した悉皆調査:本研究では平成24年度のDPCデータを用いて出来高換算コストを求め、循環器疾患急性期医療費の地域間格差の現状について検討を行った。DPCデータ(6,852,048 症例/1057施設)から、虚血性心疾患(050030,050040,050050)を抽出し分析した結果、循環器の急性期入院診療及び在院日数について統計学的に有意な都道府県格差が存在することが明らかとなった。
DPC情報を用いたQIによるQuality of Care研究;循環器領域の全国規模の大規模データベースの作成に際して、脳卒中におけるDPC、電子レセプト情報を活用した先行研究である、厚生労働科学研究J-ASPECT Study(包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究・脳卒中急性期医療の地域格差の可視化と縮小に関する研究)の手法を検討した。ICD-10 codeを用いた対象疾患の抽出方法、アウトカム指標、プロセス指標の設定と統計学的解析種表いずれも、循環器領域へ十分応用が可能であることが示された。
日本循環器学会の教育施設を対象とした診療実態調査(JROAD-DPC)に参加した599施設において、心筋梗塞及び心不全の30日間死亡率と各施設のCase-volumeを計算し、Case-volumeを4分位に分類し、30日死亡率との相関を検討した。調整変数として、年齢、性、Charlsonスコア、Killip分類、NYHA分類を用い、その他の要因による施設間差を調整するために施設をランダムインターセプトとしたmultilevel modelによる階層化ロジスティクモデルを用いた。599施設における心筋梗塞30,663症例、及び心不全77,755症例であった。両疾患ともに、最も症例数の多い病院群は、最も症例数の少ない病院群に比べ、有意に死亡率が高い傾向にあった。これは多変量解析を行った後も有意であり、心筋梗塞では63%(OR=1.63, 95%CI, 1.22 -2.17)、心不全では20%(OR=1.20, 95%CI, 1.03 -1.41)増加していた。
院内疾患登録システムの汎用化;我が国における全国規模の循環器疾患登録の整備を目指し、電子カルテから米国NCDRのレジスストリと同項目の患者基本情報、臨床情報、検査データを半自動的に抽出するシステムの開発を進めた。現在、米国NCDRにおけるPINNACLEレジストリの集積項目の中で、厚生労働省電子的診療情報交換推進事業によって開発されたSS-MIXを用いて電子カルテから抽出可能な項目について検討を行い、今後、電子カルテのベンダーによらない疾患登録システムの開発を行っていく。
DPC情報を用いたQIによるQuality of Care研究;循環器領域の全国規模の大規模データベースの作成に際して、脳卒中におけるDPC、電子レセプト情報を活用した先行研究である、厚生労働科学研究J-ASPECT Study(包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究・脳卒中急性期医療の地域格差の可視化と縮小に関する研究)の手法を検討した。ICD-10 codeを用いた対象疾患の抽出方法、アウトカム指標、プロセス指標の設定と統計学的解析種表いずれも、循環器領域へ十分応用が可能であることが示された。
日本循環器学会の教育施設を対象とした診療実態調査(JROAD-DPC)に参加した599施設において、心筋梗塞及び心不全の30日間死亡率と各施設のCase-volumeを計算し、Case-volumeを4分位に分類し、30日死亡率との相関を検討した。調整変数として、年齢、性、Charlsonスコア、Killip分類、NYHA分類を用い、その他の要因による施設間差を調整するために施設をランダムインターセプトとしたmultilevel modelによる階層化ロジスティクモデルを用いた。599施設における心筋梗塞30,663症例、及び心不全77,755症例であった。両疾患ともに、最も症例数の多い病院群は、最も症例数の少ない病院群に比べ、有意に死亡率が高い傾向にあった。これは多変量解析を行った後も有意であり、心筋梗塞では63%(OR=1.63, 95%CI, 1.22 -2.17)、心不全では20%(OR=1.20, 95%CI, 1.03 -1.41)増加していた。
院内疾患登録システムの汎用化;我が国における全国規模の循環器疾患登録の整備を目指し、電子カルテから米国NCDRのレジスストリと同項目の患者基本情報、臨床情報、検査データを半自動的に抽出するシステムの開発を進めた。現在、米国NCDRにおけるPINNACLEレジストリの集積項目の中で、厚生労働省電子的診療情報交換推進事業によって開発されたSS-MIXを用いて電子カルテから抽出可能な項目について検討を行い、今後、電子カルテのベンダーによらない疾患登録システムの開発を行っていく。
結論
本研究が、俯瞰した視点から構築される全国レベルでの循環器疾患データベースとして今後貴重な情報を提供することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-09-16
更新日
-