成人T細胞白血病に対する標準治療としての同種造血幹細胞移植法の確立およびゲノム解析に基づく治療法の最適化に関する研究

文献情報

文献番号
201438139A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病に対する標準治療としての同種造血幹細胞移植法の確立およびゲノム解析に基づく治療法の最適化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 信和(東京大学医科学研究所 臨床検体専用FACSコアラボラトリー)
  • 渡邉 俊樹(東京大学医科学研究所 新領域創成科学研究科 メディカルゲノム専攻)
  • 村上 善則(東京大学医科学研究所 人癌病因遺伝子分野)
  • 松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所 ウイルス制御研究領域)
  • 鬼塚 真仁(東海大学 血液腫瘍内科)
  • 松岡 賢市(岡山大学 血液・腫瘍内科)
  • 緒方 正男(大分大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)
  • 内丸 薫(東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科)
  • 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学部 血液内科)
  • 宇都宮 與(公益財団法人慈愛会 今村病院分院)
  • 田口 潤(長崎大学原爆後障害医療研究所 血液内科学研究分野(原研内科))
  • 野坂 生郷(熊本大学医学部附属病院 がんセンター・外来科学療法室)
  • 長藤 宏司(久留米大学 血液・腫瘍内科)
  • 加藤 光次(九州大学病院 血液腫瘍内科)
  • 崔 日承(独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター 血液内科)
  • 中前 博久(大阪市立大学 血液内科)
  • 山本 久史(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科)
  • 山口 拓洋(東北大学 医学統計学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
76,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病(ATL)の8割を占める急性型・リンパ腫型ATL(aggressive ATL)に対して、mLSG15などの化学療法や抗CCR4抗体療法が開発されたが、依然として生存期間中央値は1年未満であり治癒は期待できない。一方、同種造血幹細胞移植(同種移植)はドナーの免疫力による抗腫瘍効果(GVL効果)が強力であり、治癒を目指すaggressive ATL患者において標準治療と考えられているが、70歳以下のaggressive ATL患者の約1/3しか同種移植を受けていないのが現状である。本研究班の目的は、最適なタイミングで安全性の高い同種移植を行えるシステムを構築し、検体バンキング基盤と付随研究によりaggressive ATLに対する治療法の最適化を目指すことである。
研究方法
【臨床研究】
(1)Aggressive ATLの前向き登録システムの確立
(2)ATLに対するHLA半合致血縁ドナーからのハプロ移植法の開発
(3)臍帯血移植患者におけるホスカルネット(FCN)を用いたヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)脳炎予防試験
(4)ATLにおける同種移植の至適タイミングおよび移植源決定の為の臨床決断分析
(5)ATLに対する臍帯血移植に関する研究

【検体バンキング基盤の確立】・【付随研究】
(1)ATL細胞の遺伝子解析
(2)HTLV-Iのウイルス学的検討
(3)移植後の微小残存病変モニタリング解析
(4)移植後免疫機能解析
(5)ATL治療における薬剤代謝関連遺伝子の解析
結果と考察
平成26年10月4日および11月15日に班会議を開催し、臨床研究および付随研究について詳細に検討した。

【臨床研究】
(1)「Aggressive ATLの前向きコホート研究」は平成26年12月に当院IRBで承認された。国内多施設でのIRB審査を行った後、平成27年度より症例登録開始予定である (年間50例, 2年間)。
(2)「HLA半合致血縁ドナーからのハプロ移植」のプロトコールコンセプトを完成した。今後、各施設でIRB審査を行い、平成27年度より症例登録開始予定である。
(3)臍帯血移植患者におけるFCN予防試験は、平成26年11月より症例登録を開始した(目標症例数50例)。平成26年3月現在、12施設でIRB承認が得られており、既に8例が登録されている。
(4)平成26年12月より臨床決断分析を行うための後方視的調査を開始しており、症例登録のペースは順調である。
(5)先行研究班で行っていた「ATLに対する非血縁臍帯血ミニ移植試験」の長期フォローアップを行った。

本研究班でaggressive ATL と診断された全症例を前向きに登録してフォローすることにより、移植を行わなかった場合も含めた現行治療の実態を把握することが可能となる。化学療法や抗体療法ではATLの治癒が期待できないため、最適なタイミングで安全性の高い同種移植を行えるようなシステムを構築することにより、aggressive ATLの長期予後を短期間で大幅に向上させることの意義は大きい。またQOLやコストも考慮した臨床決断分析を行うことで、ATLにおける同種移植の位置づけや、最適なドナー選択・移植のタイミングを明らかにすることは、厚生労働行政へ貢献する。

【検体バンキング基盤の確立】・【付随研究】
分担研究者と協議を行い、参加施設からの検体搬送経路の調整が終了し、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に基づいた新規付随研究プロトコールのコンセプトを完成した。検体バンキング基盤については、将来的にバイオバンクジャパンへの統合も視野に入れた全国共同研究組織JSPFADへの検体バンキングに切り替えプロトコールを作成している。平成27年度上半期に倫理審査を行い、症例登録を開始する予定である。また先行研究班から継続して行ってきた「Multicolor FACSを用いたATL移植後モニタリング試験」は平成26年10月に目標25例の登録を完了し、経過観察中である。
 ATLの治療反応性やGVL効果等を予測する新規マーカーを同定することにより、オーダーメイド医療の実現につながることが期待される。近年、ATLに対して抗CCR4抗体投与後に行われる同種移植が増加しており、制御性Tリンパ球を含めた解析は世界的なエビデンスとなることが期待される。
結論
本研究班の目的は、最適なタイミングで安全性の高い同種移植を行えるシステムを構築することにより、aggressive ATLの治療成績を短期間で向上させることである。平成26年度は前向きコホート研究を基盤として、複数の前方視的臨床試験や付随研究・検体バンキングを行う研究体制の準備を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438139C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班の目的は、最適なタイミングで安全性の高い同種移植を行えるシステムを構築することにより、aggressive ATLの治療成績を短期間で向上させることである。平成26年度は前向きコホート研究を基盤として、複数の前方視的臨床試験や付随研究・検体バンキングを行う研究体制の準備を行った。ATLの治療反応性やGVL効果等を予測する新規マーカーを同定することにより、オーダーメイド医療の実現につながることが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究班でaggressive ATL と診断された全症例を前向きに登録してフォローすることにより、移植を行わなかった場合も含めた現行治療の実態を把握することが可能となる。化学療法や抗体療法ではATLの治癒が期待できないため、最適なタイミングで安全性の高い同種移植を行えるようなシステムを構築することにより、aggressive ATLの長期予後を短期間で大幅に向上させることの意義は大きい。
ガイドライン等の開発
平成26年度より開始された研究班であり、今年度は該当なし。
その他行政的観点からの成果
ATLにおける同種移植の至適タイミングおよび移植源決定の為の臨床決断分析を行うために、造血幹細胞移植だけではなく化学療法で治療された70歳以下のaggressive ATL患者も含めた国内最大規模のデータベース(目標:2000例)を構築している。QOLやコストも考慮した臨床決断分析を行うことで、ATLにおける同種移植の位置づけや、最適なドナー選択・移植のタイミングを明らかにすることは、厚生労働行政へ貢献する。
その他のインパクト
造血細胞移植研究班合同公開シンポジウム(平成27年1月11日:国立がん研究センター国際交流会館にて開催)

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
85件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
82件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
造血細胞移植研究班合同公開シンポジウム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201438139Z