未治療原発不明癌に対する次世代シークエンスを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う第II相試験

文献情報

文献番号
201438137A
報告書区分
総括
研究課題名
未治療原発不明癌に対する次世代シークエンスを用いた原発巣推定に基づく治療効果の意義を問う第II相試験
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 宝保(関西医科大学附属枚方病院)
  • 鶴谷 純司(近畿大学 医学部)
  • 西尾 和人(近畿大学 医学部)
  • 藤田 至彦(近畿大学 医学部)
  • 冨田 秀太(近畿大学 医学部)
  • 竹内 文乃(慶応義塾大学 医学部)
  • 掛谷 秀昭(京都大学大学院・薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原発不明がん(Cancer of Unknown Primary: CUP)を対象とした次世代シークエンシング技術 (Next generation sequenicing: NGS)を用いた遺伝子発現解析により原発巣の推定を行う新しい治療戦略を臨床第II相試験にて評価する。同時にNGSを用いて特定のがん種において既に使用されている遺伝子変異/増幅を解析し、特定の分子を標的とした分子標的治療薬がCUPの治療戦略に応用可能であるかを評価する。CUPにおける遺伝子発現プロファイルを用い、より精度の高いCUP診断薬およびCUP特異的分子標的薬の創生を目指す。
研究方法
1. 対象となりうる患者に対して、適格性確認、同意説明を行い、同意が得られればデータセンターに登録、同時に採取済みのFFPE組織検体を近畿大学ゲノム生物学教室に送付する。
2. A. 抽出したRNAから得られた遺伝子発現データをもとに原発巣の推定を行う。具体的には、CUPSignatureの発現データは正規化処理後、発現量に基づいて算出された重みが加算された各癌腫の得点(Weighted-voting)が算出される。もっとも高い得点を示した臓器(18癌種)が推定原発部位として診断される。B. DNAの解析から治療方針に重大な影響を与える癌種特異的な遺伝子変異および遺伝子増幅を検索する。具体的には肺癌における活性型EGFR遺伝子変異、GISTにおける活性型c-KIT遺伝子変異、乳癌、胃癌におけるHER2遺伝子の増幅および大腸癌におけるRAS遺伝子変異を検索する。これらの遺伝子変異・増幅情報をAのアルゴリズムにおける癌種推定に組み込み、また主治医にその情報を提示する。これらの遺伝子変異、増幅が存在したときにはそれぞれEGFR遺伝子変異陽性肺癌(ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブのいずれかによる治療)、消化管間質腫瘍(イマチニブによる治療)、HER陽性乳癌もしくは胃癌(トラスツズマブの併用治療)と推定し保険診療に応じた治療を行う事を許容する。
3. 2によって推定された癌種に対する、もしくは遺伝子変異に対する治療を各参加施設にて施行する。
4. 目標症例数は110例、登録期間2年、追跡期間1年とし、主要評価項目は試験参加から1年後の生存率とする。追跡期間終了時にデータセンターは最終解析を行い、「最終解析報告書」を作成する。試験期間中はWJOGデータセンターにてモニタリング、監査などを行い、また、有害事象情報等を適宜参加施設に知らせる。これは前述の中川班によるCUPを対象とした前臨床試験と同様の体制であり、既に実績を有する。
5. 本試験で得られた遺伝子発現や変異プロフィールを用いた付随研究として、CUP特異的分子標的薬の早期探索研究を実施する。我々は高転移性細胞株をもちい、マウス足底投与による膝下リンパ節への転移能を評価する方法を見出した(平成25年度がん臨床研究成果発表)。現在、CUP特異的遺伝子群のうち、我々はMIFに対する阻害薬としてレスベラトロール誘導体の有効性を示しており(Invest New Drugs 30:1878, 2012)、さらにdruggableな標的分子については、掛谷らが新規阻害剤を創製する予定である。これらの化合物のCUPに対する効果を含むPOCを上記in vivo転移モデルにて評価し、最適化を計ってゆく。
6. 全体責任者を近畿大学医学部腫瘍内科 中川和彦、研究事務局として市立岸和田市民病院 林秀敏を、また遺伝子発現解析責任者として近畿大学医学部ゲノム生物学 西尾和人、臨床・生物統計解析責任者を国立環境研究所 竹内文乃とする。
参加施設代表者は研究協力者とした。
結果と考察
本年度は原発推定アルゴリズムを作成、Validationを行い確定した。
試験の遂行に際しスタートアップミーティングを行い、近畿大学医学部付属病院における倫理委員会で承認され試験が開始、第1例目が登録された。
臨床試験が開始された。進捗状況としては予定通り遂行されている。18施設が本試験に参加し、2015~2016年度にかけて110例の登録が予定されている。
結論
NGSを用いたCUPの原発巣推定の治療戦略を策定した。
臨床試験が開始された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438137C

収支報告書

文献番号
201438137Z