臨床試験、発症ハイリスクコホート、ゲノム解析を統合したアプローチによるATL標準治療法の開発

文献情報

文献番号
201438136A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床試験、発症ハイリスクコホート、ゲノム解析を統合したアプローチによるATL標準治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
塚崎 邦弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科)
  • 宇都宮 與(慈愛会宇都宮病院分院血液内科)
  • 鵜池 直邦(国立病院機構九州がんセンター血液内科)
  • 石塚 賢治(福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科)
  • 丸山大(国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科)
  • 福島 卓也(琉球大学医学部病態検査学講座、血液免疫検査学講座)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院血液内科)
  • 根津 雅彦(国立がん研究センター東病院血液腫瘍科)
  • 内丸 薫(東京大学医科学研究所附属病院)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
  • 鈴木 穣(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
  • 森下 和広(宮崎大学 医学部機能制御学講座 腫瘍生化学分野)
  • 天野 正宏(宮崎大学医学部皮膚科学)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部皮膚科学)
  • 村上 善則(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
76,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1が病因のATLは、多様な病態をとり難治性である。未治療indolent ATLへの有用な治療法を開発するため、其々欧米伯と日本で標準治療とされるインターフェロンα(IFN)/ジドブジン(AZT)療法とwatchful waiting(WW)療法との第Ⅲ相比較試験(JCOG1111)をJCOGリンパ腫班(LSG)で先進医療Bとして行う。併用療法の有用性が検証されれば、両剤の本疾患に対する薬事法上の適応拡大の承認と保険適用を目指す。さらにJCOGバイオバンク/バイオバンクジャパン(BBJ)に保存しつつある試験参加患者検体と、既存のHTLV-1キャリア・患者コホート(JSPFAD)検体を統合しゲノム解析して、治療反応性と予後に関するバイオマーカーの同定を試みる。
研究方法
1)JCOG1111試験:分担研究者、JCOGデータセンター、製薬企業と附随研究の研究協力者と協同で、プロトコールに従って先進医療Bとして行う。参加施設の先進医療手続きを順次進めるとともに、承認された施設での患者登録とその中央モニタリングを行う。
2)附随研究:JSPFADのハイリスクキャリア、indolent ATL患者、皮膚病変を有するindolent ATL患者を対象とし、ゲノム変異と遺伝子発現プロファイル等を包括的に解析する。
結果と考察
本研究は、医療技術実用化総合研究事業(H20)で立案したプロトコールコンセプトをもとに、平成22年度からの3年間のがん臨床研究事業ではプロトコールを最終化するとともに先進医療B評価制度によって臨床試験を開始する準備を進めたのに引き続いて以下のように研究を行い、患者登録を開始した。1)先進医療B評価制度による本臨床試験の登録開始。2012年10月からの高度医療制度変更後に、LSG基幹施設のIRB承認を経て12月に先進医療Bとして本試験を申請したが、これまで日本で臨床使用実績のない治療法であったので、早期・探索的臨床試験拠点、臨床試験中核病院での少数例での安全性の確認を前提として、翌2013年7月に承認。9月には未治療低悪性度のATL患者に対するより有用な治療法を開発するため、先進医療B評価制度によって、JCOG1111試験の患者登録をJCOG-LSGで開始。昨年度は2例であったが今年度新たに8例が本試験に登録された。試験治療群の1、2例目についてJCOG効果・安全性評価委員会の審査承認を受け、安全性情報レポートを厚生労働省医政局研究開発振興課へ提出し、平成27年1月22日に先進医療技術審査部会の承認が得られた。他のJCOG-LSG施設でも先進医療Bとしての申請準備を進めている。またJCOGバイオバンク/BBJに末梢血試料の保存を継続しつつ、附随研究として個別のゲノム解析実験を進めている。IFN/AZT併用療法の有用性が検証された場合、両薬剤の本疾患に対する薬事法上の適応拡大の承認(効能追加)、保険適用を目指している。そして日常診療への導入される時期には皮膚・末梢血病変などの臨床病態の解明、分子マーカーに基づく治療対象者の選別と効果予測に基づく個別化医療の実現が期待される。
結論
本研究(JCOG1111)は、厚生労働省によるHTLV-1総合対策の中でも、関連疾患の中で最多であるATLに対する海外での標準治療の有用性の検証とその日本への導入を目指し先進医療B評価制度により進めている。またJCOGバイオバンク/BBJに末梢血試料の保存を継続しつつ、個別改良を目指して附随研究としてゲノム・発現解析実験を進めている。さらに本試験は恒常的な多施設共同臨床試験グループであるJCOGで初の先進医療B制度下の臨床試験であり、本試験の実施に伴って得られるノウハウは今後他の先進医療B制度下でのJCOG試験やJCOG以外のグループの試験にも活用されることが期待でき、間接的な社会貢献も大きいと見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438136C

成果

専門的・学術的観点からの成果
indolent ATLの治療法開発のため、其々欧米伯と日本で標準治療とされるインターフェロンα(IFN)/ジドブジン(AZT)療法とwatchful waiting(WW)療法との第Ⅲ相比較試験(JCOG111)をJCOGリンパ腫グループで計画。WW群の2年無増悪生存割合を60%と仮定し、IFN/AZT療法は20%上回る必要があるとし、有意水準片側5%、検出力70%、登録期間3年、追跡期間2年とし74例を予定。2013年9月に登録開始した。
臨床的観点からの成果
先進医療Bとして本試験を承認された37施設から今年度8例、総計31例が登録された。今年、登録期間の延長および有害事象や逸脱などに対応してプロトコールを改訂した。2019年までに登録終了し、その後2年間追跡した後に主たる解析を行う。87%と高率に付随研究のためバンキングされている。探索的にハイリスクキャリア、indolent ATL患者のゲノム変異と発現プロファイル等を解析している。本併用療法の有用性が検証されれば、両剤の本疾患への適応拡大を得るとともに、付随研究結果を層別化治療へ繋げる。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省での第4回HTLV-1対策推進協議会(2013年1月30日)、第9回HTLV-1対策推進協議会(2015年9月30日)で塚崎が、HTLV-1総合対策の一環として、ATLに対する臨床試験の中でのJCOG1111の意義とその進捗状況を報告した。 第11回HTLV-1対策推進協議会(2017年3月22日)では塚崎が総合討論の中で、その進捗状況を報告した。
その他のインパクト
先進医療BとしてJCOG1111試験を登録中であることは、関連する患者会、学会などで継続的に紹介されるとともに、新聞、雑誌、患者会等で取り合あげられた。 本試験は恒常的な多施設共同臨床試験グループであるJCOGで初の先進医療B制度下の臨床試験であり、本試験の実施に伴って得られるノウハウは今後他の先進医療B制度下でのJCOG試験やJCOG以外のグループの試験にも活用されることが期待でき、間接的な社会貢献も大きいと見込まれる。
ラジオNIKKEI ドクターサロン 演題「HTLV「成人T細胞白血病」2017,7月4日放送

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-16
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201438136Z