BIM遺伝子多型陽性癌におけるHDAC阻害薬の耐性克服効果を最適化する薬力学的効果の指標を探索する研究

文献情報

文献番号
201438112A
報告書区分
総括
研究課題名
BIM遺伝子多型陽性癌におけるHDAC阻害薬の耐性克服効果を最適化する薬力学的効果の指標を探索する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
矢野 聖二(金沢大学がん進展制御研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田 直也(がん研究会がん化学療法センター)
  • 清川 悦子(金沢医科大学医学部)
  • 長谷川 好規(名古屋大学医学部)
  • 片上 信之(公益財団法人先端医療振興財団 先端医療センター病院 )
  • 井上 彰(東北大学附属病院)
  • 竹内 伸司(金沢大学がん進展制御研究所 )
  • 安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院)
  • 藤原 忠美(名古屋大学医学部附属病院)
  • 清水 忍(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,769,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、BIM遺伝子多型陽性癌の耐性克服におけるHDAC阻害薬の至適投与量を決定する薬力学的効果の指標を同定することである。

研究方法
①活性型BIM測定系の確立と臨床検体の測定
a.プロジェクトの総合推進
活性型BIM測定系の開発状況や医師主導治験(VICTORY-J)における臨床検体の収集状況などを把握し、プロジェクトの円滑な進行を推進する。
b.活性型BIM測定系の確立
HDAC阻害薬の薬力学的効果の指標候補分子を特定し、その測定系の確立を目指す。
c.臨床検体の収集
EGFR変異肺がんにおけるBIM遺伝子多型測定を行い、BIM遺伝子多型陽性症例の選択を行う。さらに、BIM遺伝子多型陽性症例のうち現在進行中の医師主導治験(VICTORY-J)に登録された症例において、末梢血検体の収集を行う。
d.臨床検体に付随するデータ管理
EGFR変異肺がんにおけるBIM遺伝子多型の有無や、医師主導治験(VICTORY-J)における臨床検体に付随する情報の管理を行う。

②他癌種への展開
Driver oncogene(ALK融合遺伝子、ABL融合遺伝子、HER増幅・変異など)を有する他の癌種においてもBIM遺伝子多型が分子標的薬耐性を惹起するかを検討し、EGFR変異肺癌で得られた知見を他の癌種にも適応可能か否かを明らかにする。

③HDAC阻害薬の薬力学的効果の新しい指標の探索
BIM遺伝子多型を有するEGFR変異肺癌細胞株を用いたゼノグラフトモデルなどにおいて、HDAC阻害薬の耐性克服活性のモニタリングに有用な活性型BIM以外の新しい指標を探索する。
結果と考察
結果
①活性型BIM測定系の確立と臨床検体の測定
a.プロジェクトの総合推進:班会議を開催し、適格症例の積極的な治験登録を周知した。
b.活性型BIM測定系の確立:健常人のPBMCを用いてWestern blot法による活性型BIM蛋白量の測定系、real-time RT-PCR法によるBIM exon 4およびexon3 mRNAの測定系を確立した。in vitroでPBMCにHDAC阻害薬ボリノスタットを添加すると活性型BIM発現が上昇することを見出し、薬力学的効果の指標としての妥当性を確認した。
c.臨床検体の収集: ボリノスタット+EGFR-TKI併用療法の医師主導治験(VICTORY-J)で、6月17日に名古屋大学で1例目の治療を開始し、治療開始前及び治療2日目のボリノスタット投与4時間後の末梢血を薬力学的効果解析用に採取した。さらにPBMCを抽出し蛋白・RNA解析用に保管した。
d.臨床検体に付随するデータ管理
EDCシステムを構築し、EGFR変異肺がんにおけるBIM遺伝子多型の有無や、医師主導治験(VICTORY-J)における臨床検体に付随する情報の管理を行った。

②他癌種への展開: ALK転座肺癌15例から15の癌細胞株を樹立し、うち1株がBIM多型をヘテロ接合型で有していることを見出した。
③HDAC阻害薬の薬力学的効果の新しい指標探索: 新規指標候補として、免疫染色による活性型BIM検出が可能な特異的抗体の作成に取り組み、5つの候補抗体を得た。また、アポトーシス活性(Caspase3/7活性)を生体で検出できるFRETバイオセンサーの作成を完了した。
考察
ボリノスタットによるBIM遺伝子多型陽性EGFR変異肺がん細胞株のEGFR-TKI耐性克服のための薬力学的効果の指標候補として、活性型BIM蛋白量とBIM exon 4/exon3 mRNAを取り上げ、それぞれWestern blot法とreal-time RT-PCR法による測定系を確立した。実用化に向けては、これらを正確に評価できるより簡便な測定法が必要かもしれない。
結論
ボリノスタットによるBIM遺伝子多型陽性EGFR変異肺がん細胞株のEGFR-TKI耐性克服のための薬力学的効果の指標候補の測定系確立を完了した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438112C

収支報告書

文献番号
201438112Z