文献情報
文献番号
201438111A
報告書区分
総括
研究課題名
アンメットメディカルニーズにおける抗がん薬のPK/PDに基づく最適化医療の実施
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
濱田 哲暢(国立がん研究センター研究所 TR総合支援グループ臨床薬理部門)
研究分担者(所属機関)
- 田村 研治(国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科)
- 河本 博(国立がん研究センター中央病院・小児臨床腫瘍)
- 上野 秀樹(国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科)
- 北野 滋久(国立がん研究センター中央病院・先端医療科)
- 斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
- 井岡 達也(大阪府立成人病センター・検診部消化器検診科)
- 山田 一彦(久留米大学病院・呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品の有効性・安全性評価に薬物動態・薬力学(PK/PD)試験が重要であるが、抗がん薬の分野においてPK/PDに基づき最適化された投与方法の開発は不十分である。その理由として、早期臨床開発試験では、臓器機能が正常で比較的若い患者を対象に、薬物動態パラメータと毒性との相関解析を目的としたものであり、至適投与量を予測するには国内外の情報が少ない。PK/PDに基づく最適化医療を臨床に応用するには、血中濃度から投与量を最適化するアルゴリズムが必要であり、日本人を対象とした前向き臨床試験において検討されることが不可欠と考えている。
本研究では、小児がん(神経芽腫)、難治性がん(膵がん)、ハイリスク患者における乳がん・肺がんを対象とする臨床試験を実施している臨床研究グループと連携し、抗がん薬の至適投与方法の確立を目指したPK/PD研究とトランスレーショナルリサーチを実施し、至適投与量と治療域濃度を推定、さらに個人差の変動要因探索として、薬理遺伝学解析、免疫学的解析を行い、薬剤の直接的な影響に加え、宿主の薬剤反応応答性についても検討する。
本研究では、小児がん(神経芽腫)、難治性がん(膵がん)、ハイリスク患者における乳がん・肺がんを対象とする臨床試験を実施している臨床研究グループと連携し、抗がん薬の至適投与方法の確立を目指したPK/PD研究とトランスレーショナルリサーチを実施し、至適投与量と治療域濃度を推定、さらに個人差の変動要因探索として、薬理遺伝学解析、免疫学的解析を行い、薬剤の直接的な影響に加え、宿主の薬剤反応応答性についても検討する。
研究方法
①小児がん(神経芽腫)に対するデシタビン・タミバロテンおよびレチノイド濃度測定方法の開発
脱メチル化薬(デシタビン)を5日間投与後、分化誘導薬(タミバロテン)を2週間内服するPhaseⅠ試験を行う。デシタビンは、細胞毒性が強く血液毒性がDLTとなるため、用量設定試験にて薬物動態試験を実施し、毒性との相関を評価する。さらに、PhaseⅡ試験にて、血漿および末梢リンパ球と骨髄病変の薬剤濃度と組織分布は、質量分析装置を用いて評価し、推奨投与量におけるPK/PD試験を実施する。
②難治性がん(膵がん)に対するFOLFIRINOX療法のPK/PD試験およびnab-Paclitaxel /Gemcitabineを対象とした分子イメージング解析
膵癌診療ガイドライン(2013年)では、切除不能膵癌に対する標準化学療法として、ゲムシタビン単剤、S-1単剤、ゲムシタビン+エルロチニブ併用療法が推奨されているが、新たな治療選択としてL-OHP+CPT-11+5FU/l-LV(FORFIRINOX)療法、およびnab-paclitaxel/Gemcitabine併用療法が承認された。しかしながら、イリノテカンの下痢、オキサリプラチンの末梢神経障害、3剤併用による重度の骨髄抑制に特に注意すべきである。そこで、日本人膵がん患者を対象に、イリノテカン、オキサリプラチン、5-FUの血中動態を評価し、骨髄毒性、末梢神経障害、下痢について相関解析を実施する。
③高齢者(乳がん)に対するトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)のPK/PD試験
HER2陽性手術不能又は再発乳がんに適応を持つT-DM1は、抗体医薬トラスツズマブにチューブリン重合阻害作用を有するエムタンシン(DM1)を結合させた抗体薬物複合体である。作用機序は、HER2に結合後の細胞内へのDM1送達による作用とトラスツズマブが有する抗体依存性細胞障害作用(ADCC)活性によるとされる。国内第Ⅱ相臨床試験においてDM1によると推定されるGrade3以上の血小板減少が注意すべき有害事象である。本研究計画では、日本人のHER2陽性進行・再発乳がん患者を対象に、血漿中のトラスツズマブ・エムタンシン結合体およびfreeのDM1を質量分析装置により解析する。更に、腫瘍部位へのDM1の到達を評価するため、生検検体を用いてイメージング質量分析装置を用いた組織分布も解析する。
④ハイリスク患者(Frailityを有する高齢者・肝機能腎機能低下)に対する低用量エルロチニブ試験
標準的な化学療法による毒性増強が懸念されるfrailtyを有するEGFR遺伝子変異陽性再発・進行非小細胞肺がん患者70例に対して、低用量エルロチニブは、十分な有効性を示し、毒性の軽減とQOL向上に寄与するか検討する。定常状態のトラフ値の血中濃度を測定し、薬理遺伝学的影響を含めて治療効果との関連を検討する。
脱メチル化薬(デシタビン)を5日間投与後、分化誘導薬(タミバロテン)を2週間内服するPhaseⅠ試験を行う。デシタビンは、細胞毒性が強く血液毒性がDLTとなるため、用量設定試験にて薬物動態試験を実施し、毒性との相関を評価する。さらに、PhaseⅡ試験にて、血漿および末梢リンパ球と骨髄病変の薬剤濃度と組織分布は、質量分析装置を用いて評価し、推奨投与量におけるPK/PD試験を実施する。
②難治性がん(膵がん)に対するFOLFIRINOX療法のPK/PD試験およびnab-Paclitaxel /Gemcitabineを対象とした分子イメージング解析
膵癌診療ガイドライン(2013年)では、切除不能膵癌に対する標準化学療法として、ゲムシタビン単剤、S-1単剤、ゲムシタビン+エルロチニブ併用療法が推奨されているが、新たな治療選択としてL-OHP+CPT-11+5FU/l-LV(FORFIRINOX)療法、およびnab-paclitaxel/Gemcitabine併用療法が承認された。しかしながら、イリノテカンの下痢、オキサリプラチンの末梢神経障害、3剤併用による重度の骨髄抑制に特に注意すべきである。そこで、日本人膵がん患者を対象に、イリノテカン、オキサリプラチン、5-FUの血中動態を評価し、骨髄毒性、末梢神経障害、下痢について相関解析を実施する。
③高齢者(乳がん)に対するトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)のPK/PD試験
HER2陽性手術不能又は再発乳がんに適応を持つT-DM1は、抗体医薬トラスツズマブにチューブリン重合阻害作用を有するエムタンシン(DM1)を結合させた抗体薬物複合体である。作用機序は、HER2に結合後の細胞内へのDM1送達による作用とトラスツズマブが有する抗体依存性細胞障害作用(ADCC)活性によるとされる。国内第Ⅱ相臨床試験においてDM1によると推定されるGrade3以上の血小板減少が注意すべき有害事象である。本研究計画では、日本人のHER2陽性進行・再発乳がん患者を対象に、血漿中のトラスツズマブ・エムタンシン結合体およびfreeのDM1を質量分析装置により解析する。更に、腫瘍部位へのDM1の到達を評価するため、生検検体を用いてイメージング質量分析装置を用いた組織分布も解析する。
④ハイリスク患者(Frailityを有する高齢者・肝機能腎機能低下)に対する低用量エルロチニブ試験
標準的な化学療法による毒性増強が懸念されるfrailtyを有するEGFR遺伝子変異陽性再発・進行非小細胞肺がん患者70例に対して、低用量エルロチニブは、十分な有効性を示し、毒性の軽減とQOL向上に寄与するか検討する。定常状態のトラフ値の血中濃度を測定し、薬理遺伝学的影響を含めて治療効果との関連を検討する。
結果と考察
本研究で解析対象となる薬剤の血中濃度測定方法を構築することができた。本研究で対象とする薬剤の評価系(血中濃度測定・免疫モニタリング)は計画通りに準備することができた。併せて、本研究班で検討すべき薬剤に関して討議を行ったところ、ATLにおけるモガリズマブ、ならびに肺がんを対象としたアレクチニブ、アファチニブを検討すべきとの指摘を受け、次年度より解析を行うことを目指してプロトコール作成行い、新たに分担研究者を加えて準備を行う。
結論
初年度であるため、プロトコール作成と評価系の構築を中心に行った。
公開日・更新日
公開日
2015-09-15
更新日
-