難治性神経芽腫に対する分化誘導療法併用下でのエピジェネティック治療開発

文献情報

文献番号
201438105A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性神経芽腫に対する分化誘導療法併用下でのエピジェネティック治療開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究分担者(所属機関)
  • 河本 博(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院 小児腫瘍科)
  • 佐藤 暁洋(独立行政法人国立がん研究センター 研究支援センター 研究企画部)
  • 尾崎 雅彦(独立行政法人国立がん研究センター 東病院 治験管理室)
  • 濱田 哲暢(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 臨床薬理部門)
  • 原 純一(大阪市立総合医療センター)
  • 仁谷 千賀(田中 千賀)(大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 田口 智章(九州大学大学院 医学研究院 小児外科学分野)
  • 吉村 健一(金沢大学附属病院 先端医療開発センター)
  • 木村 利美(東京女子医科大学病院 薬剤部)
  • 野村 尚吾(独立行政法人国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
  • 服部 奈緒子(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
86,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①難治性神経芽腫に対し、分化誘導療法併用下でのエピジェネティック治療の医師主導治験を実施し、高度なDNAメチル化異常(CIMP)をもつ神経芽腫を対象にしてエピジェネティク治療の確立を目指す。
②治療承認後の投与方法最適化や新しいDNA脱メチル化剤への置換を視野に入れ、奏効の分子機構の詳細の解明と治療効果マーカーの開発を行う。
研究方法
①医師主導治験
(1)プロジェクトの総合推進
分化誘導剤(TBT)とDNA脱メチル化剤(DAC)の併用療法の開発では、TBT単剤の用量探索(第I相試験)後に、TBT推奨用量下にDACの用量探索および両剤の推奨用量での安全性、有効性確認試験(併用第I/II相試験)と進め、両剤同時承認を目指す。
(2)試験資料作成と治験開始届け提出
治験薬提供者から情報を得ながら、GCPおよび関連法省令、通知に適する必要な試験資料を作成する。
(3)調整業務・試験管理準備と実施
CROおよび治験薬提供者、輸送業者等、治験実施予定施設との間での調整業務を開始し、試験管理準備を行う。
(4)薬物血中濃度測定準備と実施
測定系の構築と検体の安定性試験を実施し、測定する。
(5)各施設での試験実施準備と実施
治験実施3施設でIRB承認を行い、試験実施準備、症例登録を行う。
②奏効の分子機構と治療効果マーカー
(1)治療標的遺伝子の同定
CIMP標的遺伝子から治療標的となり得る遺伝子として、分化誘導・細胞増殖抑制に重要と考えられるもの3個以上を同定する。
(2)奏効性マーカーの開発
治験登録症例について、骨髄中腫瘍細胞および血中遊離DNAを収集する。マウス移植腫瘍治療モデルでも残存する腫瘍細胞と血中遊離DNAを回収する。
(3)治験におけるPOC取得
治療奏功マーカーとして最適と考えられた材料・遺伝子について、治験症例でのPOCを取得する。
結果と考察
【結果】
①医師主導治験
(1)プロジェクトの総合推進
TBT単剤第I相試験について、適宜、PMDAに確認をとりながら、(2)~(4)の準備、治験薬概要書作成、治験薬提供者と治験開始前要件として溶出試験、薬剤の安定性試験の実施情報を共有した。また、治験薬ラベルや治験薬搬入の方法・時期を確定した。
(2)試験資料作成と治験開始届け提出
GCPに従って、治験実施計画書、同意説明文書、アセント文書、各種標準手順書を作成した。国立がん研究センター中央病院から開始、初期の安全性を確認後に他の2施設が開始となるようIRB承認を受け、治験開始届けを提出した。
(3)調整業務および試験管理準備
データマネージメント計画の作成、登録システム、症例報告フォーム作成とデータベース作成を行った。モニタリングおよび監査計画の立案も終了した。ウェブ上に治験実施施設、研究支援センターが共有できる情報共有サイトを作成した。
(4)薬物血中濃度測定
PK解析のための質量分析方法の検討を進め、TBT、DACの同時定量法の予備的測定条件を決定した。GLP準拠施設を有するCROとの測定、報告の契約をすすめた。また検体輸送の方法確定を含めSOPを確定した。
(5)各施設での試験実施準備と実施
2月にキックオフミーティングを行った。国立がん研究センター中央病院では3月にIRB承認を得て、他の2施設でも申請準備が終了した。承認を行い、試験実施準備、症例登録を行う。
②奏効の分子機構と治療効果マーカー
マウス移植腫瘍を用いて、低容量TBT投与でも著しい腫瘍減少の作用を確認、分化マーカーの発現上昇を確認した。また、複数のCIMP標的遺伝子を同定した。さらに、血中遊離DNA解析を目的として、がん細胞株を処理後、DNA脱メチル化効果を生存細胞とメディウム中遊離DNAで測定する系を確立した。

【考察】
(1)医師主導治験
TBTは、神経芽腫のハイリスク集学的治療後症例での再発予防として確立している分化誘導療法のドラッグラグ解消としても期待されるが、レチノイドは他の小児固形がん、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、滑膜肉腫、ラブドイド腫瘍、腎腫瘍、髄芽腫、膠芽腫、胚細胞性腫瘍などでも分化誘導効果を示す。TBT単剤第I相では、神経芽腫以外の疾患も登録を進めることで、他疾患の開発にもつながることが期待される。
(2)奏効の分子機構の解明と治療効果マーカーの開発
マウス移植腫瘍のTBT投与の結果、腫瘍減少の作用および腫瘍中での分化マーカーの発現を確認したことから、TBT奏功機構のひとつとして、分化誘導作用が示された。今後は、分化誘導効果を最大限発揮するような、DACの濃度およびプロトコールを検討する必要がある。
結論
CIMPをもつ難治神経芽腫に対し、TBTによる分化誘導とDACとの併用は、治療効果を発揮すると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438105C

収支報告書

文献番号
201438105Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
112,450,000円
(2)補助金確定額
112,285,556円
差引額 [(1)-(2)]
164,444円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 59,934,783円
人件費・謝金 9,050,989円
旅費 714,060円
その他 16,635,724円
間接経費 25,950,000円
合計 112,285,556円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-09-04
更新日
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