同種移植後再発の成人T細胞白血病リンパ腫に対する次世代型レトロウイルスベクターによるT細胞レセプター遺伝子導入ドナーリンパ球輸注療法

文献情報

文献番号
201438102A
報告書区分
総括
研究課題名
同種移植後再発の成人T細胞白血病リンパ腫に対する次世代型レトロウイルスベクターによるT細胞レセプター遺伝子導入ドナーリンパ球輸注療法
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
池田 裕明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 俵 功(三重大学 医学部附属病院)
  • 珠玖 洋(三重大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
60,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)に対し同種造血幹細胞移植は有効だが3年非再発生存は30%前後である。再発例にドナーリンパ球輸注療法が試みられるが、深刻な合併症としてのGVHD克服と有効性の向上が課題である。
本研究では同種造血幹細胞移植後の再発ATLLの治療として、ATLLに高発現するNY-ESO-1抗原特異的なT細胞レセプター(TCR)遺伝子を導入したドナーリンパ球輸注療法の医師主導治験実施を目指し実用化研究を行う。独自開発の内因性TCR発現を抑制するレトウイルスベクターを用いてTCR遺伝子導入し、腫瘍特異的反応性(GVL)を強めGVHDを低減し、有効かつ安全性の高いドナーリンパ球輸注療法を開発する。
研究方法
①In vitroにおけるヒトATLL細胞への特異的反応性、正常細胞への低反応性を確認する。②免疫不全マウスを用いATLLの造血幹細胞移植後ドナーリンパ球輸注療法のin vivo評価系樹立する。近交系マウスを用い白血病の造血幹細胞移植後ドナーリンパ球輸注療法のin vivo評価系樹立する。これらのin vivo評価系を用いて薬効薬理、薬物動態、安全性薬理、毒性データ獲得する。また、これらのデータを基に治験プロトコルを作成する。③品質データ(治験薬提供者作成)と合わせ、薬事戦略相談、治験準備を実施する。具体的には、同種リンパ球を用いた治験製品概要書の作製、治験プロトコルの検討、治験実施施設の選定、参加施設の組織化と実施体制ネットワーク作成、規制当局との相談、を行う。
結果と考察
研究結果: ①「TCR遺伝子導入T細胞の薬理活性と安全性に関する非臨床試験」①-1. NY-ESO-1陽性腫瘍細胞に対するin vitroの細胞傷害性試験を実施した。TCR遺伝子を導入したヒトT細胞はNY-ESO-1抗原とHLA-A*24:02を発現する腫瘍細胞を抗原特異的に傷害することを確認した。①-2. 免疫不全マウスを用いた、TCR遺伝子改変ヒトT細胞によるドナーリンパ球輸注療法の評価系を作製した。本評価系を用いて、ドナーリンパ球中のCD4、CD8陽性両T細胞サブセットがGVHDと抗腫瘍効果に果たす役割を検討した。その結果、GVHD発症にはCD4、CD8陽性両T細胞が関わるが、siTCRベクターを用いてTCR遺伝子改変することでCD4、CD8陽性T細胞は共にGVHDを起こさなくなることが示された。一方、抗腫瘍効果は主にTCR改変されたCD8陽性T細胞が担うことが示された。また、本評価系におけるGVHD病態の解析を行い、GVHDにより顕著な骨髄破壊が起こるが、siTCRベクターを用いてTCR遺伝子改変することで骨髄破壊を起こさなくなることが示された。①-3. 近交系マウスを用いた、白血病の造血幹細胞移植後ドナーリンパ球輸注療法のin vivo評価系の作製を行った。①-4. TCRの認識する抗原ペプチドについてアラニン置換による交差反応性を検討し、正常タンパク質由来のペプチドに対する予期せぬ交差反応性の可能性が極めて低い事を確認した。②「治験薬概要書の作成」NY-ESO-1特異的TCR遺伝子導入ヒトリンパ球に関して、自家細胞を用いた治験製品概要書(2014年12月2日第1版完成)を作製した。②-1. ③「PMDAとの相談等」③-1. 9月30日 薬事戦略相談の事前面談(NY-ESO-1-TCR 遺伝子導入自家Tリンパ球を用いた場合の輸注療法プロトコルについて)を行った。
考察: TCR遺伝子導入T細胞の薬理活性と安全性に関する非臨床試験を行った。また、自家細胞を用いた場合の試験薬概要書を作成し、自家リンパ球を用いた場合の輸注プロトコルについてPMDAと薬事戦略相談の事前面談を行った。
結論
平成26年度はTCR遺伝子導入T細胞の薬理活性と安全性に関する非臨床試験を行い、自家細胞を用いた場合の試験薬概要書を作成し、自家リンパ球を用いた場合の輸注プロトコルについてPMDAと薬事戦略相談の事前面談を行うことにより治験開始に向けて順調に準備が進んだ。平成27年度にさらに追加非臨床試験の実施と薬事戦略相談、治験準備を行い、平成28年度に第I相医師主導治験実施を目指すことが可能と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438102C

収支報告書

文献番号
201438102Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
78,650,000円
(2)補助金確定額
78,650,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 43,490,401円
人件費・謝金 4,824,524円
旅費 387,730円
その他 12,205,093円
間接経費 18,150,000円
合計 79,057,748円

備考

備考
当初の計画より消耗品やその他に経費がかかったので、超過分は自己負担とした。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-