文献情報
文献番号
201438093A
報告書区分
総括
研究課題名
肺腺がんの個別化・層別化・早期発見のための高危険度群捕捉手法の確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
河野 隆志(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 白石 航也(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 ゲノム生物学研究分野)
- 松尾 恵太郎(九州大学大学院 医学研究院・予防医学分野)
- 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所疫学予防部)
- 松田 文彦(京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
- 久保 充明(理化学研究所統合生命医科学研究センター)
- 醍醐 弥太郎(東京大学医科学研究所)
- 柿沼 龍太郎(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院放射線診断科)
- 島津 太一(独立行政法人 国立がん研究センター疫学研究部・がん疫学)
- 横田 淳(独立行政法人 国立がん研究センター研究所・ゲノム生物学研究分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肺腺がん予防のための高危険度群捕捉には、喫煙以外のリスク因子の同定が必要である。本研究では肺腺がんリスクと遺伝子多型について、発がん経路による関連の特異性、年齢・生活習慣因子との相互作用を明らかにし、さらにCT検診におけるすりガラス様陰影(GGO)発生との関連を明らかにすることで、肺腺がんリスクモデリング手法、高危険度群捕捉手法を確立する。また、ヨーロッパ、米国、アジアとの国際コンソーシアム共同研究に参画し、本邦症例を用いて同定されたリスク因子の特異性や一般性を明らかにする。
研究方法
各施設で既に取得されたゲノム情報(バイオバンクジャパン[BBJ]・東京大学、BBJ・国立がん研究センター病院[NCCH]、愛知県がんセンター・京都大学)を精査した。その結果、検出研究1としてNCCHにて収集された肺腺がん1,669例とBBJにて収集された非がん対照群約4,300例を、検出研究2としてBBJにて収集された肺腺がん1,026例と非がん対照群1,900例を、検出研究3として愛知県がんセンター並びに京都大学にて収集された肺腺がん1,579例と長浜コホートなどで収集された健常群4,916例を選定した。各施設において、下記の方法に従ってゲノム解析を行った。全ゲノムimputationを行うためのレファレンスゲノムは、既に公開されている1000 Genomesよりダウンロードした。その際、レファレンスゲノムはアジア人集団をレファレンスゲノムとして、全ゲノムimputationを実施し、千数百遺伝子多型を各症例に対して推定した。推定した遺伝子型情報を基に症例対照研究を行い、三施設によるメタ解析を実施した。しかしながら、三施設によるメタ解析の結果では既報の肺腺がん感受性遺伝子座のみ全ゲノムレベルに到達したが、新規感受性遺伝子は同定されなかった。そこで、研究デザインを下記の通りに変更した。検出研究1は、BBJとNCCHの症例を統合した肺腺がん3,931症例と対照は三つコホートサンプル(多目的コホート研究:JPHC、東北メディカル・メガバンク:ToMMo、日本多施設共同コホート研究:J-MICC)27,120例とし、検出研究2は、京都大学と愛知県がんセンターを中心とする肺腺がん1,485症例と愛知県がんセンターと長浜コホート2,576例とした。解析方法は、解析ソフトウエアーが推奨している全人類をレファレンスパネルに変更し、全ゲノムimputation法の条件検討並びに各集団に対して行った。また候補感受性遺伝子座に対する検証研究用の試料の収集を継続して行った。一方、前がん病変であるGGO発症リスに関わる因子の同定については、2005~2011年に国立がん研究センターがん予防・検診研究センターにおいて肺がんCT検診を受けた6,809名のうち、GGO(すりガラス状陰影:AAHがその主体となる)が検出された症例群318名と検出されなかった対照群714名を対象とした症例対照研究を行った。
結果と考察
各施設で全ゲノムimputation並びに関連解析を行うと共に、複数の解析結果を基に検討をさらに加えた結果、研究デザインが確定した。肺腺がんに対するメタ解析については、メタ解析結果ができ次第、候補となる感受性遺伝子座を30程度に絞込を行い、検出研究で用いた同程度の規模の検証研究を準備中である。GGO発症リスクに関しては、いくつかの肺腺がん感受性多型がGGOリスクと統計学上有意な関連を示した。オッズ比の向きは、肺がんリスクと同じ方向を向いており、同程度の関連を示した。従って、一部の多型は、肺内のAAHのできやすさに影響することで、肺腺がんの発生リスクに関与していると考えられた。国際貢献に関しては、2つの肺がんの国際コンソーシアムに積極的に参画しており、一部の研究成果を報告した。
結論
各施設における全ゲノムimputationが終了しており、研究計画通りに推移している。関連解析終了後、新規感受性遺伝子座の同定の為の検証研究を実施する予定である。国際貢献についても、着実に研究結果を報告しており、来年度以降も継続して注力していく予定である。また、GGO発症リスクにも関わる知見については、今後、国際科学誌への投稿や学会発表などを行い、研究成果を社会に還元する予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-14
更新日
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