前向き大規模コホート研究において既に収集されているがん罹患前試料・情報を用いた発がんリスク要因の探索と層別化に関する研究

文献情報

文献番号
201438092A
報告書区分
総括
研究課題名
前向き大規模コホート研究において既に収集されているがん罹患前試料・情報を用いた発がんリスク要因の探索と層別化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 基(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山地 太樹(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 疫学研究部)
  • 倉橋 典絵(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 疫学研究部)
  • 口羽 文(国立がん研究センター 研究支援センター 生物統計部)
  • 吉田 優(神戸大学大学院医学研究科 病因病態解析学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,769,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本委託事業においては、生活習慣要因にゲノム情報および血漿バイオマーカー情報を取り入れたリスク予測モデルの構築を目的として、1)既知の遺伝要因及び血漿バイオマーカーとがん罹患リスクについての再現性の確認を行うこと(a. SNPタイピングおよび血漿バイオマーカーの分析、b. 既存情報とがんリスクとの関連の検討)、2)メタボローム解析による新規リスク要因の探索を行うこと、3)リスク予測モデルの構築と検証を行うことを業務の柱としている。
研究方法
本委託事業の研究基盤となる「多目的コホート研究」において、主に1990年から追跡が開始された4つの保健所管内に在住する住民と、主に1993年から追跡が開始された5つの保健所管内に在住する住民のうち、研究開始時の質問票に回答し、健診などの機会に研究のために血液を提供した40歳以上70歳未満(調査開始時年齢)の男女約3.4万人を本研究の母集団としている。
結果と考察
1)a. 本委託事業では、ケース・コホート研究デザインを採用し、SNPタイピングおよび血漿バイオマーカーの分析を実施することとした。分析時期の違いを検討したり、研究の拡張性を担保したりする目的でQCサンプルを加えて、血漿バイオマーカーの分析を行っていくこととした。

1)b.【大腸がん】本研究では、29のビタミンD受容体の遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連を4つの遺伝学的モデルで検討したが、検討の多重性まで考慮すると、統計学的有意な結果は得られなかった。症例375名と対照750名を含む大腸がんのコホート内症例対照研究であっても、多数の遺伝子多型を検討するにはサイズが十分でない可能性がある。【前立腺がん】本研究の25(OH)D濃度(28.0-39.0 ng/ml)は、他の先行研究と比較して、高濃度で範囲が狭かった。25(OH)Dの産生には日照時間と肌のメラニン色素が関与しており、先行研究が行われた国と日本とでは状況が異なるため、25(OH)D濃度に差が見られたものと考えられる。

2)ガスクロマトグラフ質量分析計、あるいは、液体クロマトグラフ質量分析計を用いた4つの分析プラットホームを採用することで、数多くの血漿中代謝物の分析が可能となる。分析できる代謝物数が多ければ、大腸がんに対する新規リスク要因を発見できる可能性が高くなり、大腸がんのリスク予測モデル構築に寄与できるものと考えられる。

3)Inverse Probability Weighting(IPW)法では、まず各対象者への重みwを求める必要がある。デザインに基づくサンプリング確率のほか、あるデータが観測されるかどうかを適切な回帰モデルを用いて推定する方法も考えられる。C-index推定に対する重みの推定方法の影響は今後の検討課題である。また、分散の推定方法も整理する必要がある。
結論
1)a. 平成26年度は、肥満および糖尿病との関連から特に有望と考えられるC-peptideの測定を用いて行った。平成27年度は、基礎研究と疫学研究の知見から抗腫瘍効果が期待されるビタミンDに着目し、血漿濃度の測定を行う予定である。

1)b.【大腸がん】本年度は、ビタミンD受容体の遺伝子全体にわたって大腸がんとの関連を検討したが、統計学的有意な結果は得られなかった。来年度は、血漿中ビタミンD濃度とビタミンD受容体の遺伝子多型との遺伝-環境交互作用を検討することで、発がんリスクの層別化に寄与するエビデンスの構築を目的に、日本人集団での再現性を確認したい。【前立腺がん】来年度は、発がんリスクの層別化に寄与するエビデンスの構築を目的に、血漿中25(OH)D濃度と前立腺がんとの関連について日本人集団での再現性を確認する予定である。

2)平成26年度は、大腸がんのTraining set(60症例、120対照)でメタボローム解析を開始した。平成27年度も引き続き、大腸がんのTraining setの分析を進めていき、大腸がんに対する新規リスク要因候補を見出していく。

3)予測モデルの良さを評価するための指標の一つであるC-indexに対して、ケース・コホート研究あるいはコホート内症例対照研究から推定するために重み付きC-indexの定義をまとめた。平成27年度は、C-index以外の予測性能評価指標についても整理を行い、本委託事業で構築する予測モデルの評価方法を確立する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438092C

収支報告書

文献番号
201438092Z