文献情報
文献番号
201438085A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床検体を用いた多層的オミクス解析による分子標的薬の肉腫への適応拡大のための基盤的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 格(国立がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 川井章(国立がん研究センター中央病院)
- 小林英介(国立がん研究センター中央病院)
- 吉田朗彦(国立がん研究センター中央病院)
- 落谷孝広(国立がん研究センター研究所)
- 市川仁(国立がん研究センター研究所)
- 太田力(国立がん研究センター研究所)
- 土屋直人(国立がん研究センター研究所)
- 齊藤秀(株式会社オプト データサイエンスラボ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、肉腫への抗がん剤の適応拡大を促進するための知見を得ることである。近年新たな分子標的薬が次々と開発され、さまざまな悪性腫瘍において治療成績の向上に貢献している。市場規模が限られる肉腫においては、既存の分子標的薬の適応拡大は現実的な戦略である。肉腫においては治療法が限られていることから、ドラッグ・ラグの解消を望む希少がんの患者団体の声には切実なものがあり、製薬企業も盛んに適応拡大を試みている。一方、肉腫研究においては症例や基礎研究に使用できるサンプルの数が少ないことから分子標的の網羅的解析はほとんど行われておらず、適応拡大に資する基礎的な検討が不足している。本研究によって分子背景の解析データに基づいて希少がんで適応拡大が図られるようになれば、既存の分子標的薬の肉腫への適応拡大の流れは大きく促進され、ドラッグ・ラグの解消が進むことが期待される。また、個別的に奏効性を予測できる診断技術は、分子標的薬の適応拡大の承認のプロセスにも大きく貢献すると考えられる。本研究のアプローチの有効性が肉腫で実証されれば、他の希少がんにも同様のアプローチを当てはめることでドラッグ・ラグの解消が波及していくと予想される。
研究方法
1. 肉腫の網羅的解析データの解析を行い、新規に適応拡大が可能な分子標的薬の候補の同定を試みた。臨床検体と肉腫培養細胞を用いたクリニカルシークエンス解析およびアレイ実験をそれぞれ実施した。得られた候補遺伝子に関して検証実験および機能解析を行った。網羅的データを用いた肉腫研究のためのConnectivity Mapシステムを構築した。
2. 肉腫で承認されている分子標的薬(パゾパニブ)について、奏効すると予測される肉腫の組織型の決定、奏効予測診断技術の開発を試みた。肉腫細胞内のタンパク質・mRNAの網羅的解析データを取得し、肉腫細胞の薬剤感受性データも得て、統合的な解析を行った。
2. 肉腫で承認されている分子標的薬(パゾパニブ)について、奏効すると予測される肉腫の組織型の決定、奏効予測診断技術の開発を試みた。肉腫細胞内のタンパク質・mRNAの網羅的解析データを取得し、肉腫細胞の薬剤感受性データも得て、統合的な解析を行った。
結果と考察
1. 特定の組織型の肉腫40症例を対象として、原発腫瘍組織を対象にターゲットシークエンスを実施した。特徴的な遺伝子の異常を同定中である。培養細胞を用いたアレイ実験を行い、mRNAとmiRNAの網羅的発現データ解析から、転移・再発に発現相関する遺伝子の異常を同定し、機能解析を進めた。研究計画通りに進捗している。
2. 分子標的薬への抵抗性に関して多様性のある肉腫細胞において、特徴的な膜型チロシンリン酸化酵素を抗体プロテオミクスで同定した。網羅的解析(抗体と質量分析)を継続しつつ、培養細胞を用いた阻害実験に着手した。コンパニオン診断薬のためのバイオマーカー候補を同定する途上にある。研究計画通りに進捗している。
3. 臨床病理データおよび病理アーカイブの整理を行い、病理診断のアップデートを行った。研究計画通りに進捗している。
4. 治療に応答して培養上清に放出されるエクソソームを回収し、miRNAの網羅的発現実験に着手した。研究計画通りに進捗している。
5. 肉腫のConnectivity Mapデータのための基盤的システム開発を行った。また、Connectivity Mapのためのデータの取得を、肉腫培養細胞を用いて行った。網羅的解析の既存データの活用と新規データとの統合を進める。実験は計画通りに進捗している。研究計画通りに進捗している。
2. 分子標的薬への抵抗性に関して多様性のある肉腫細胞において、特徴的な膜型チロシンリン酸化酵素を抗体プロテオミクスで同定した。網羅的解析(抗体と質量分析)を継続しつつ、培養細胞を用いた阻害実験に着手した。コンパニオン診断薬のためのバイオマーカー候補を同定する途上にある。研究計画通りに進捗している。
3. 臨床病理データおよび病理アーカイブの整理を行い、病理診断のアップデートを行った。研究計画通りに進捗している。
4. 治療に応答して培養上清に放出されるエクソソームを回収し、miRNAの網羅的発現実験に着手した。研究計画通りに進捗している。
5. 肉腫のConnectivity Mapデータのための基盤的システム開発を行った。また、Connectivity Mapのためのデータの取得を、肉腫培養細胞を用いて行った。網羅的解析の既存データの活用と新規データとの統合を進める。実験は計画通りに進捗している。研究計画通りに進捗している。
結論
既存分子標的薬の標的となる異常を検出するために、肉腫の網羅的かつ多層的なデータを取得しつつある。得られたデータの統合的解析が次年度の課題である。バイオインフォマティクスによるデータマイニングが鍵であり、バイオインフォマティシャンとの共同研究が順調に進んでいる。本研究で得られたデータをデータベース化し、さまざまな研究に応用できるようにする。全体的に研究計画通りに進捗している。
公開日・更新日
公開日
2015-09-14
更新日
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