文献情報
文献番号
201438079A
報告書区分
総括
研究課題名
膵癌症例の術後転移再発抑制を目差した慢性肝炎治療薬3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体を用いた臨床治験に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中山 敬一(国立大学法人九州大学 生体防御医学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 三森 功士(国立大学法人九州大学 九州大学病院別府病院)
- 森 正樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 永野 浩昭(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
- 杉町 圭史(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
膵癌は浸潤・転移能が非常に高く、転移抑制剤は膵癌の進行を抑制する戦略として期待される。われわれは予備的研究からケモカインCCL2の抑制がマウスにおいて強力に癌転移を阻害することを発見した。本申請課題の対象薬剤である3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体(商品名:セロシオン)はCCL2に対し拮抗作用を持ち、現在は慢性肝炎の治療薬として使用されているが、実際に癌転移モデルマウスに投与したところ、3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体には強い癌転移抑制作用があることが判明した。そこで本研究では、膵癌に対する3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体の抗腫瘍効果あるいは承認済み薬剤との併用による上乗せ効果、さらにCCL2を治療標的とした新たな分子標的療法の確立をめざす。また既に前臨床研究を終えている乳癌について、臨床試験あるいは医師主導型治験を目指して鋭意準備中である。膵癌症例に用いるための準備として進めている。さらに、膵癌症例において3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体を将来的に使用する際のコンパニオン診断マーカーとしてCCL2活性あるいはFBXW7の有用性も検討する。
研究方法
1)動物モデルによる膵癌進展・転移抑制効果の検討に関する研究
マウス膵癌細胞株PANC02に蛍光タンパク質tdTomatoを発現する株を樹立する。それを野生型またはFbxw7遺伝子を破壊したマウスの膵臓に同種同所移植し、転移率や転移巣の大きさを評価し、宿主側のFbxw7の有無が転移率や転移巣の増大に影響するかどうかを検討する。
2)3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体による癌転移抑制効果に関する臨床研究:トリプルネガティブ型の根治術可能乳がんにおいて、根治術後補助療法患者に対して投薬。被験者数:9~12例(シングルアーム)を計画している。治験薬投与から1年間。試験終了後、同意を得られた患者に対して治験薬を投与し治験終了後4年間まで経過観察。1)安全性 ①主要評価項目:術後アジュバンド(抗がん剤)との併用投与における有害事象(身体所見、血算、血液生化学検査)。2)有効性 ①主要評価項目:治験薬投与後1年間の最大対量(MTD)及び用量制限毒性(DLT)をプライマリーエンドポイントとする。5年間まで経過観察する。
3)固形がんの再発転移においてコンパニオン診断マーカーとなるCCL2関する研究:大腸癌初回根治術を行ったstage Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのうち、本研究に同意を得られた80例を対象とした。術前、術後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年にCCL2を測定し、臨床病理学的因子および臨床経過との関連について解析を行った。
マウス膵癌細胞株PANC02に蛍光タンパク質tdTomatoを発現する株を樹立する。それを野生型またはFbxw7遺伝子を破壊したマウスの膵臓に同種同所移植し、転移率や転移巣の大きさを評価し、宿主側のFbxw7の有無が転移率や転移巣の増大に影響するかどうかを検討する。
2)3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体による癌転移抑制効果に関する臨床研究:トリプルネガティブ型の根治術可能乳がんにおいて、根治術後補助療法患者に対して投薬。被験者数:9~12例(シングルアーム)を計画している。治験薬投与から1年間。試験終了後、同意を得られた患者に対して治験薬を投与し治験終了後4年間まで経過観察。1)安全性 ①主要評価項目:術後アジュバンド(抗がん剤)との併用投与における有害事象(身体所見、血算、血液生化学検査)。2)有効性 ①主要評価項目:治験薬投与後1年間の最大対量(MTD)及び用量制限毒性(DLT)をプライマリーエンドポイントとする。5年間まで経過観察する。
3)固形がんの再発転移においてコンパニオン診断マーカーとなるCCL2関する研究:大腸癌初回根治術を行ったstage Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのうち、本研究に同意を得られた80例を対象とした。術前、術後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年にCCL2を測定し、臨床病理学的因子および臨床経過との関連について解析を行った。
結果と考察
1)動物モデルによる膵癌進展・転移抑制効果の検討に関する研究:マウス膵癌細胞株PANC02に蛍光タンパク質tdTomatoを発現する株を樹立し、野生型マウスの膵臓に移植し、死亡するまでの時間を検討した。死亡個体を解剖してみると、肝臓に1~数個の肉眼的な転移巣を認めた。さらに骨髄由来細胞におけるFbxw7遺伝子を破壊したマウスの膵臓に同種同所移植し、転移率や転移巣の大きさを検討中である。
2)3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体による癌転移抑制効果に関する臨床研究:本治験計画については、平成26年11月25日にPMDA薬事戦略相談(事前面談)を受けた結果を反映させ作成している。これはあくまで膵癌症例対する試験にむけての予備的研究であるが、安全性、有用性が確認できれば、トリプルネガティブ乳癌の社会的ニーズは大きく、こちらも併せて有用な治験が得られることが期待される。
3)固形がんの再発転移においてコンパニオン診断マーカーとなるCCL2関する研究:CCL2は術後3ヶ月まで緩やかに上昇し6ヶ月から陰転化していた。この推移はstage毎でも同じであったが、再発6例で、再発確認時まで上昇もしくは再上昇していた。CCL2の発現由来は宿主側であり、術後なんらかの理由で常にCCL2が過剰に発現している状況下としては、すなわち、cancer nicheが形成されようとしている状態が保たれている症例では高頻度に転移再発が生じていることが推察される。
2)3-オキシゲルミルプロピオン酸重合体による癌転移抑制効果に関する臨床研究:本治験計画については、平成26年11月25日にPMDA薬事戦略相談(事前面談)を受けた結果を反映させ作成している。これはあくまで膵癌症例対する試験にむけての予備的研究であるが、安全性、有用性が確認できれば、トリプルネガティブ乳癌の社会的ニーズは大きく、こちらも併せて有用な治験が得られることが期待される。
3)固形がんの再発転移においてコンパニオン診断マーカーとなるCCL2関する研究:CCL2は術後3ヶ月まで緩やかに上昇し6ヶ月から陰転化していた。この推移はstage毎でも同じであったが、再発6例で、再発確認時まで上昇もしくは再上昇していた。CCL2の発現由来は宿主側であり、術後なんらかの理由で常にCCL2が過剰に発現している状況下としては、すなわち、cancer nicheが形成されようとしている状態が保たれている症例では高頻度に転移再発が生じていることが推察される。
結論
本年度はマウスにおける膵癌同種同所移植系の確立と、その時間経過および対照と検討群(骨髄特異的Fbxw7コンディショナルノックアウトマウス)における転移能の比較を行った。野生型マウスに比較して骨髄特異的Fbxw7コンディショナルノックアウトマウスにおいてPANC02の転移能の増加傾向は認められたが、統計的に有意な差は得られなかった。しかし、サンプル数を増やせば統計的な有意差が得られることが期待され、今後も同様の検討を続けている方針である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-14
更新日
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