難治性小児悪性固形腫瘍における診断バイオマーカーの同定と新規治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201438066A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児悪性固形腫瘍における診断バイオマーカーの同定と新規治療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
檜山 英三(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原 章(佐賀県医療センター好生館)
  • 田尻 達郎(京都府立医科大学 大学院医学研究科小児外科学)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 臨床研究開発センターデータ管理部小児がん登録)
  • 大喜多 肇(国立成育医療研究センター研究所 小児血液・腫瘍研究部分子病理研究室)
  • 松本 公一(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 七野 浩之(国立国際医療研究センター 第一小児科)
  • 副島 俊典(兵庫県立がんセンター 放射線治療科)
  • 上條 岳彦(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所)
  • 手良向 聡(金澤大学附属病院 先端医療センター)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 大植 孝治(兵庫医科大学 小児外科)
  • 矢野 道広(秋田大学医学部附属病院 小児科)
  • 井上 健(大阪市立総合医療センター 病理部)
  • 星野 健(慶應義塾大学医学部 小児外科)
  • 西川 正則(大阪府立母子保健総合医医療センター 放射線科)
  • 福澤 正洋(大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科)
  • 越永 從道(日本大学医学部 小児外科)
  • 金子 安比古(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所)
  • 陳 基明(日本大学医学部 小児科)
  • 中舘 尚也(国立成育医療研究センター 総合診療部小児期思春期診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児特有の固形がんである神経芽腫、腎芽腫、肝芽腫は小児期特有の悪性固形腫瘍で、外科的切除が可能なものは予後良好である一方、遠隔転移のあるような高リスク群の治癒率は未だ20~40%である。本研究は日本小児がん研究グループ(JCCG)研究として、予後不良な小児固形特有の固形腫瘍として、高リスク神経芽腫、高・超高リスク肝芽腫、予後不良腎腫瘍である悪性ラブドイド腫瘍(RTK)に対して、ICH-GCP基準の臨床試験を基本として実施、外部監査と相互モニタリングシスムを導入して施行する体制を整備し、この臨床検体をバイオバンクジャパン(BBJ)と協力して保管運用し、中央画像診断・病理診断・分子診断などのJCCGとしてインフラを整備しつつ、新たな臨床試験を推進することを目的とした。
研究方法
高リスク群の臨床試験は発生数が希少(年間10-80例程度)なため「第Ⅱ相試験」を基本として、神経芽腫高リスク群に対する遅延局所療法に「ICE療法にBU/MEL大量レジメンを組み込んだ第Ⅱ相試験」、超高リスク肝芽腫では「用量増大シスプラチン療法と外科療法の安全性を検討する多施設共同臨床試験」「腎ラブドイド腫瘍(RTK)に対する集学的治療法による臨床試験」を計画し、IRB承認後実施し、さらに上記を含めた臨床試験は、その質的な担保と確実な診断のために治療前検体の中央病理診断を必須とし、臨床試験への適合性、その後の臨床試験レポートも一括して管理し、試験終了後のフォロー体制も確立するとともに、JCCGとしての検討会を開催して協議し、臨床試験の準備状況、開始、進捗に関する検討会を実施した。さらに臨床試験登録症例の検体バンキングを検体センターとともにBBJなどと協力してより安全かつ効率的に保管する仕組みを検討した。本邦で開発した独自の新しい神経芽腫リスク分類を開発し、その前方視的臨床試験への導入を検討する。肝芽腫、腎芽腫も予後不良例のゲノム解析(エクソーム解析、RNAシークエンス解析、miRNA解析など)からリスクに関連する因子の検討を試みた。
結果と考察
高リスク群の臨床試験として、神経芽腫高リスク群に対して先行した「遅延局所療法試験の第Ⅱ相試験」は、予定登録数66例が登録され終了し、新規臨床試験として「遅延局所療法にICE療法にBU/MEL大量レジメンを組み込んだ第Ⅱ相試験」の実施計画書の作成が終了し、成育医療センターの倫理審査委員会承認を得て、症例登録を開始した。超高リスク肝芽腫に対する「用量増大シスプラチン療法と外科療法の安全性を検討する多施設共同臨床試験」は、小児血液・がん学会の臨床研究審査委員会に承認を受けて開始した。腎ラブドイド腫瘍(RTK)に対する集学的治療法による臨床試験は学会の臨床研究審査に提出した。小児固形腫瘍の検体バンキング体制構築として、既存のこのシステムを利用して、一次登録から中央診断を経て検体保存に至る流れを構築するための改変を行い、国立成育医療研究センターにおいて倫理委員会承認を取得し、各施設での承認を得る段階となった。JCCGとしての中央病診断体制、画像診断体制を検討して、前者は全腫瘍で、後者は一部の腫瘍で運用を開始した。また、ゲノム解析に関しては、神経芽腫では11qLOH、肝芽腫ではWntシグナル活性化が見出され、腎ラブドイドではSMARCB1胚細胞変異についての検討を開始した。本研究班にて、小児固有の固形腫瘍の高リスク群腫瘍を日本で統一した日本小児がん研究グループ(JCCG)として検討することで、本年度、その臨床試験体制が構築され、有意義な臨床試験が運用可能となった。特に、データーセンターを統一し、中央病理診断や中央画像診断体制を整えたことは、こうした腫瘍を扱う小児診療施設が同一であることから、患児のリクルート、診断、リスク分類、臨床試験の開始がスムーズに行えるようになった。一方、希少疾患であることから、国際共同の臨床研究推進が必要で、肝芽腫、腎ラブドイド腫瘍は次期共同研究への検討を開始した。また、現在進行している神経芽腫に対する抗GD-2抗体療法、転移性肝芽腫への分子標的療法薬を用いた臨床試験等とともにシームレスな臨床試験体制を検討しており、肝芽腫、腎腫瘍への国際共同臨床試験の推進ともに、新規治療法の開発の道筋が明らかになりつつあり、本邦においてドラッグラグのない有効な治療法の提供が可能となりつつあると考えている。また、本研究でのゲノム解析データをから難治性小児がんのドライバー変異が見出される可能性が示唆された。
結論
難治性の小児固形がん、神経芽腫、肝芽腫、腎ラブドイド腫瘍の新たなプロトコールが策定され、当初の目的は達成した。また、JCCGとしてこれらの基盤整備やゲノム解析体制整備も進行し、小児がんの新たな診断法や新規治療法開発の道筋が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438066C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難治性の高リスク群の新たなバイオマーカーによる層別法の開発と、高リスク腫瘍の新規治療法開発を目的して検討を行い、神経芽腫、肝芽腫は予定通りに開始し、腎ラブドイド腫瘍は、開始までに至らたなかったが、臨床試験プロトコールが作成され開始準備状況となった。さらに、データーセンター機能を充実させ、臨床検体のバンキングと中央病理診断体制を整えた。神経芽腫の分子診断による層別化、肝芽腫の次世代シークエンサー解析によるWntシグナル活性化解析、腎ラブドイド腫瘍でのマイクロアレイ解析を行った。
臨床的観点からの成果
従来、小児固形腫瘍は、それぞれが独立の臨床試験グループにて臨床試験を行ってきたが、本研究班にて、小児特に乳幼児に発症する固形腫瘍の予後不良な高リスク群を日本で統一した日本小児がん研究グループ(JCCG)として検討し、本年度、その臨床試験体制が構築され、運用可能となった。特に、データーセンターを統一し、中央病理診断や中央画像診断体制を整えたことは、こうした腫瘍を扱う小児診療施設では極めて運用しやすく、患児のリクルートから、診断、リスク分類、臨床試験の開始がスムーズに行えるようになった。
ガイドライン等の開発
小児特有の固形がんで高リスク群は予後が未だに不良であるが、一方で発症例が限られることから、こうした難治性の希少がんに対しての薬剤開発がほとんど皆無である。こうした希少がんへの標準治療あるいは新規治療法の開発には本研究のような全国統一試験さらに国際共同臨床試験によってエビデンスを得ることが必須であり、ICH-GCP基準に則り、共通のプロトコールにて国全体で臨床試験を遂行することによる難治性希少がんに対する標準療法開発のガイドラインを提示できた。
その他行政的観点からの成果
がん対策推進基本計画の中で小児がん対策が施行され、小児がん拠点病院の設置と共にそれを中心としたネットワークによる診療体制が構築されつつあるが、その中でも特に小児特有の固形腫瘍のうち予後不良な高リスク腫瘍への全国統一プロトコールを提供する事により、こうした症例を臨床試験が施行しうる施設への集約化を推進することができた。小児がん領域で全国統一プロトコールと用いた臨床試験体制が構築され小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討で参考とされ、今後の小児がんの臨床試験の推進の基盤が整備された。
その他のインパクト
小児がん領域で全国の施設が一つのグループとしてを臨床試験を行う体制を構築したことで、国際水準での共同臨床試験の必要性が理解された。また、難治例の集約化の推進とともに、一方で、診断から治療、治療後の長期フォローアップを行う小児がん診療ネットワークの中で、こうした難治例を地域の基幹病院にて診断、治療を行うこととともに、治療後の長期フォローアップ体制の構築の必要性の理解も向上した。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
63件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
85件
学会発表(国際学会等)
73件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
遺伝子の変異検出キット及び遺伝子の変異検出方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2017-006625
発明者名: 檜山 英三
権利者名: 国立大学法人広島大学
出願年月日: 20170118
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Eiso Hiyama
Pediatrics hepatoblastoma: diagnosis and treatment
Translational Pediatrics , 3 (4) , 293-299  (2014)
10.3978/j.issn.2224-4336.2014.09.01.
原著論文2
Sho Kurihara, Eiso Hiyama, Yoshiyuki Onitake, et al.
Clinical features of ATRX or DAXX mutated neuroblastoma
Journal of Pediatric surgery , 49 (12) , 1835-1838  (2014)
10.1016/j.jpedsurg.2014.09.029.

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
2018-06-12

収支報告書

文献番号
201438066Z