最新のIVRによる症状緩和についての研究

文献情報

文献番号
201438054A
報告書区分
総括
研究課題名
最新のIVRによる症状緩和についての研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 保明(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 放射線診断部)
研究分担者(所属機関)
  • 蒲田 敏文(金沢大学大学院医学系研究科経血管診療学)
  • 谷川 昇(関西医科大学医学部 放射線科学講座)
  • 竹内 義人(京都府立医科大学附属北部医療センター)
  • 松枝 清(がん研有明病院・画像診断部)
  • 稲葉 吉隆(愛知県がんセンター中央病院 放射線診断・IVR部)
  • 新槇 剛(静岡県立静岡がんセンター 画像診断科)
  • 穴井 洋(奈良県立医科大学放射線医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、薬物療法にて症状緩和が図られる症例に対し、症状の原因となっている病態自体を改善あるいは症状を軽減するIVRについて、日本腫瘍IVR研究グループ (JIVROSG)における多施設共同臨床試験により評価することを目的とする。
研究方法
各IVRの臨床試験概要は以下の如くである。
JIVROSG-0204: 悪性骨盤内腫瘍に対する経皮的ラジオ波凝固療法(RFA; radiofrequency ablation)の安全性ならびに臨床的有効性を評価する。主要評価項目:安全性の評価、副次的評価項目:臨床的有効性の評価。有害事象の発現頻度と程度
JIVROSG-0803:難治性腹水に対する腹腔‐静脈シャント治療(Peritoneo-Venous Shunt: PVS)の臨床的有効性をPVS以外の治療とのランダム化比較試験により評価する。主要評価項目:腹水貯留に伴う症状の改善、副次的評価項目: 包括的QOLの改善、有害事象の内容と頻度、生存期間、目標症例数40例
JIVROSG-0804:有痛性悪性椎体、仙骨病変による背部疼痛緩和に経皮的骨形成術(Percutaneous Bone Plasty:PBP)の臨床的有効性を薬物療法の強化とのランダム化比較試験により評価する。主要評価項目: 背部疼痛症状の改善副次的評価項目: 包括的QOLの改善、背部痛QOLの改善、有害事象の内容と頻度、生存期間、目標症例数40例
JIVROSG-0805:悪性腫瘍による上部消化管狭窄や癌性腹膜炎など、がん末期の消化管通過障害に対する経皮経食道胃管挿入術(Percutaneous Trans Esophageal Gastro-tubing: PTEG)の臨床的有効性を、標準的治療である経鼻胃管挿入とのランダム化比較試験により評価する。主要評価項目: 症状スコアの改善、副次的評価項目:包括的 QOL の改善、有害事象の内容と頻度、目標症例数40例。
JIVROSG-1106:有痛性骨腫瘍に対する球状塞栓物質を用いた動脈塞栓療法の安全性ならびに臨床的有効性を評価する。
JIVROSG-1107: アンスラサイクリン系薬剤・タキサン系薬剤を含む3レジメン以上の治療歴および放射線治療歴がある初発進行乳がん患者もしくは術前化学療法術後化学療法併せ、アンスラサイクリン薬剤・タキサン系薬剤を含む4レジメン以上の治療歴および放射線治療歴のある再発乳がん患者において、RESAIC療法(動注ポート造設およびエピルビシン・5-FU併用動注療法)の緩和的局所療法としての有用性を評価する。主要評価項目:局所奏効割合副次評価項目: 疼痛スケール(NRS)の変化、QOLの変化(EORTC QLQ-C30,EORTC QLQ-BR23)、手技の実行可能性、有害事象、局所無増悪生存期間、無増悪生存期間、全生存期間。
本研究では、ヘルシンキ宣言等の国際的倫理原則を遵守して研究計画書を作成し、施設倫理審査委員会(IRB)の承認を必須とし、患者に文書を用いて説明を行い、同意を患者本人より文書により取得する。試験中に発生した有害事象、有害反応の速やかな報告体制、独立した委員で構成される効果・安全性評価委員会への報告、対応について承認を必須とする体制を敷いている。また、患者の個人情報保護についても万全の構えを敷いている。
結果と考察
JIVROSG-0204は2014年8月22日に21例で登録を終了し、重篤な有害事象なく、臨床的有効率95.2%の結果を得た。速やかな論文投稿が課題である。JIVROSG-0805は、2015年1月6日に症例登録を終了し、follow upデータを収集。近日中に、key openが予定されている。緩和IVRの標準的治療への導入を企図したランダム化比較試験であり、優越性が確認された場合には、緩和医療に大きなインパクトを与えるものと期待される。JIVROSG-0803は、登録継続中(登録22例)であり、症例登録がやや遅延しているが、緩和IVRの標準的治療への導入を企図した重要な試験であり、このまま継続する。JIVROSG-0804も症例登録遅延が著しいが、臨床現場における椎体形成術の認知度が高まっていることより登録加速の可能性は十分にあると考えられ、症例登録の加速を図る。JIVROSG-1107は、登録継続中(登録1例)。JIVROSG-1106は、プロトコール作成に時間を要し、2015年内に症例登録開始予定。
結論
進捗が遅延している臨床試験はあるものの、本研究により緩和治療におけるIVRの有効性が確実に示されつつある。ランダム化比較試験によりIVRの優越性が示されれば、既存の緩和治療を大きく塗り替えることも期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438054C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬物の増量でしか対処困難ながん終末期の病態に対するIVRの有効性を臨床試験を通じたエビデンスとして示しつつある点で、本研究の意義は極めて大きい。特に、緩和IVRといえども、臨床試験の手続きに則って標準的治療を決定するという手続きが可能であることを示した点は大きな成果と考えられる。 また、IVRと既存治療とのランダム化比較試験は、緩和における標準的治療の塗り替えを企図して行われたものであり、結果の如何によっては、緩和医療に大きなインパクトを与えるものと予測される。
臨床的観点からの成果
緩和ケアにおけるIVRの有効性に関するエビデンスは、世界的に見ても皆無である。このため、有効性が期待されるIVRについても、緩和ケアの臨床現場でこれを標準的治療として行うことができない。本研究は、緩和ケアの臨床現場においてエビデンスに基づいて治療を選択する上でのIVRの扱いを明確にするものであり、臨床的意義は極めて大きい。特に、現在進行中のランダム化比較試験の結果が明らかとなった場合には、臨床上の治療選択に大きな影響を与えると予測される。
ガイドライン等の開発
本研究の前研究に属すが、有痛性骨転移に対する経皮的骨セメント注入術は、本研究を行うJIVROSGの臨床試験「骨形成術についての第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(JIVROSG-0202)」の結果が厚生労働省医療機器・体外診断薬部会(平成21年10月16日)において臨床的参考資料として使用、薬事承認された。エビデンスについても、今後薬事承認における参考資料として活用されるものと推測される。また、IVRと既存治療とのランダム化比較試験は、IVRの優越性が証明された場合、ガイドラインを大きく書き換える可能性をもつ。
その他行政的観点からの成果
本研究で対象としているがん終末期症状に対する効果的な治療法は確立しておらず、鎮痛薬などの薬物療法に頼らざるを得ないのが現状である。しかし、これらの薬物は眠気、嘔気、倦怠感などの症状も引き起こすため、患者のQOL維持に好ましくない面も有している。加えて、薬物療法に要す費用も軽視し難い。これに対し、IVR治療は薬物量を大幅に減少させ得るため、これが標準的治療として確立すれば、がん終末期患者のQOL向上や医療経費の軽減にも寄与することが期待される。
その他のインパクト
2014年以降、緩和IVRがマスコミでもしばしば取り上げられ徐々に認知度が高まっている。また、本研究による緩和IVRのエビデンスは海外でも注目されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mimura H, Arai Y, Yamakado K, et all.
Phase I/II Study of Radiofrequency Ablation for Malignant Renal Tumors: Japan Interventional Radiology in Oncology Study Group 0701.
Cardiovasc Intervent Radiol.  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201438054Z