切除可能進行胃癌に対する網嚢切除の意義に関する研究

文献情報

文献番号
201438044A
報告書区分
総括
研究課題名
切除可能進行胃癌に対する網嚢切除の意義に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
土岐 祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 寺島 雅典(静岡県立静岡がんセンター・胃外科)
  • 深川 剛生(国立がん研究センター中央病院・胃がん外科)
  • 木村 豊(市立堺病院・消化器外科)
  • 福島 紀雅(山形県立中央病院・胃がん外科)
  • 栗田 啓(国立病院機構四国がんセンター・上部消化管外科)
  • 黒川 幸典(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学)
  • 西田靖仙(恵佑会札幌病院・消化器外科)
  • 二宮基樹(広島市立広島市民病院・外科)
  • 加治正英(富山県立中央病院・外科)
  • 高木正和(静岡県立総合病院・消化器外科(同上)
  • 和田郁雄 (都立墨東病院・外科)
  • 吉田和弘(岐阜大学大学院医学系研究科・腫瘍外科学)
  • 布部 創也(がん研究会有明病院・消化器外科)
  • 藤原 義之(大阪府立成人病センター・外科)
  • 西崎 正彦(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学)
  • 平原典幸(島根大学大学院医学系研究科・消化器総合外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
網嚢腔は、大網、小網、胃後壁、膵臓、横行結腸間膜前葉、胃脾間膜によって囲まれた空間で、胃癌細胞はまず網嚢腔内に散布され微小転移を来すと考えられていた。そこで網嚢腔表面を覆う腹膜を広範囲に切除することにより腹膜再発の予防を狙った術式が考案され、1980-90年代には進行胃癌の外科切除に際して日本全国で広く行われていた。
網嚢切除は煩雑かつ高度の技術を要するものの、これまで有用性に関する臨床試験のエビデンスがないまま慣習的に行われてきたこともあり、最近では網嚢切除を併施する施設はむしろ少数派となってきた。そこで我々は200例規模の多施設共同RCTを実施したところ、網嚢非切除群(n=103)の3年生存割合79%に対し、網嚢切除群(n=104)の3年生存割合は86%と良好な傾向を示していた(Fujita J, et al. Gastric Cancer 2012)。サブ解析の結果では、網嚢内に限局した腹膜播種を生じると考えられている胃後壁病変では両群間に差を認めなかったのに対し、それ以外の病変で両群間に大きな差を認めたことから、網嚢切除には微小な播種の予防的切除という古い考えでは説明できない治療上のメリットがある可能性も否定できなくなった。
本研究では、進行胃癌に対して胃切除時に網嚢切除を追加することで全生存期間が延長するか否かを大規模ランダム化比較第Ⅲ相試験で検証することを目的とする。
研究方法
1.選択規準
1) 組織学的に胃癌、術前深達度がSS/SE
2) cN0-2 H0 P0 M0。bulky N2を認めず、網嚢切除が可能
3) R0切除または洗浄細胞診陽性(CY1)のみによるR1切除が可能
4) 食道浸潤がないか、食道浸潤が3 cm以内
5) 肉眼型が4型または大型(8 cm以上)の3型ではない
6) 上腹部手術・腸管切除を伴う手術の既往がない
7) 化学療法や放射線治療の既往がない
8) 20歳以上80歳以下、PS(ECOG)が0 - 1、BMI 30未満
9) 骨髄・肝・腎機能に関する臨床検査値の条件を満たす
10) 患者本人からの文書同意

2. 治療計画
術前の一次登録後、術中に適格規準を再確認の上、二次登録を行って網嚢非切除群か網嚢切除群にランダム割付する。両群とも、開腹による幽門側胃切除または胃全摘を行い、大網と小網を切除し、D2郭清を行う。網嚢切除群では、横行結腸間膜前葉と膵被膜を切除し、網嚢をできる限り切除する(手術手技の詳細はプロコールに記載)。術後病理所見にてpStage II、IIIA、IIIBかつR0と診断された場合、術後補助化学療法として1年間S-1の内服を行う。

3. 統計学的事項
本研究は、網嚢切除を追加することの優越性の検証を目的とした第III相試験であり、primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは、無再発生存期間、出血量、手術時間、手術合併症発生割合、術後補助化学療法の有害事象発生割合である。
網嚢非切除群の5年生存割合を75%と仮定し、網嚢切除群が5%上回るか否かを検証、登録5年、追跡5年、有意水準片側5%、検出力80%とすると、Schoenfeld & Richterの方法による必要解析対象数は1群582例となる。若干の追跡不能例を考慮して予定二次登録数を1,200例とした。

4.解析方法
主たる解析における両群の全生存期間が等しいという帰無仮説の検定は、二次登録全例を対象に、施設以外の割付調整因子を用いた層別ログランク検定により行う。網嚢切除群が網嚢非切除群を統計学的に有意に上回った場合、網嚢切除がより有用な治療法であると結論する。有意に上回らなかった場合は、網嚢非切除が引き続き有用な治療法であると結論する。有効性の中間解析は、登録中と登録終了後に計2回行う。α消費関数を用いて多重性の調整を行う。
結果と考察
本研究は、JCOG胃がんグループの全56施設において実施されている。
本研究の研究実施計画書は、JCOG1001として、2010年5月にJCOGプロトコール審査委員会にて承認され、同6月に患者登録が開始された。その後順調に症例登録が進み、2015年3月末をもって1204例の二次登録完了となった。手術後に1年間の補助化学療法を要するため、全登録症例のプロトコール治療が完遂するのは2016年3月末の予定である。以上のように、本研究は当初の計画どおり順調に進行中である。
結論
本研究は、当初の計画どおり順調に進行中である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438044C

収支報告書

文献番号
201438044Z