文献情報
文献番号
201438033A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器がん治療における医用画像処理技術を用いた統合的個別化手術支援システム開発と臨床応用
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三澤 一成(愛知県がんセンター中央病院 消化器外科)
研究分担者(所属機関)
- 森 健策(名古屋大学 情報連携統括本部)
- 小田 昌宏(名古屋大学大学院情報科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、個々の患者の解剖構造の自動理解といった医用画像処理技術を利用した統合的個別化手術支援システムの開発とその臨床応用である。医用画像処理システムを使用し、消化器癌の術前CT・MRI等の画像から、医用画像認識理解に基づいた詳細な解剖診断支援画像を作成かつ自動認識することにより、術前自動診断システムの構築を目指す。さらに腹腔鏡手術中、内視鏡位置を計測することでリアルタイムに術野に相当する支援画像を提示する手術ナビゲーションシステムの開発により、外科手術を統合的に支援するシステムの開発ならびに臨床応用を目指す。
研究方法
当該研究は平成26年度から開始された研究である。平成28年度までに、1.術前病変範囲診断や解剖診断の自動化(平成26年度) 2.術中血管切離位置決定や腹腔鏡手術ポート位置決定などの手術プランニングシステム(平成27年度) 3.術中ナビゲーションにより目的とする組織(血管・リンパ節など)の位置を高精度に提示する(平成27・28年度)など各機能を統合した手術支援システムの構築とその臨床応用を行う予定である。
今年度(平成26年度)は、予定している3年間の研究の初年度であり、最終的に開発を目指す統合的個別化手術支援システムの基本となるデータ収集と、システムを構成する基本技術の開発を行う。
①手術症例における術前画像データ、術中データ取得:次年度以降の術前プランニング、術中ナビゲーションシステム開発のため、本研究における最も基本となる症例データの取得を行う。②術前解剖自動診断システムの基本技術の研究・開発:術前画像データを活用、解析することよって、より確実な自動診断基本技術の開発および臨床評価を行う。③個別化外科解剖実体モデル作成技術の研究・開発:術前プランニング、シミュレーションに有用な、3Dプリント技術を用いた個別化外科解剖実体モデル作成のための技術の開発を行う。
今年度(平成26年度)は、予定している3年間の研究の初年度であり、最終的に開発を目指す統合的個別化手術支援システムの基本となるデータ収集と、システムを構成する基本技術の開発を行う。
①手術症例における術前画像データ、術中データ取得:次年度以降の術前プランニング、術中ナビゲーションシステム開発のため、本研究における最も基本となる症例データの取得を行う。②術前解剖自動診断システムの基本技術の研究・開発:術前画像データを活用、解析することよって、より確実な自動診断基本技術の開発および臨床評価を行う。③個別化外科解剖実体モデル作成技術の研究・開発:術前プランニング、シミュレーションに有用な、3Dプリント技術を用いた個別化外科解剖実体モデル作成のための技術の開発を行う。
結果と考察
①76例分の術前CT画像データ、17例分の術中生体データ・機器動作データを計測収集した。腹腔鏡手術開始時に行われる気腹操作に対し、気腹前および気腹後の腹壁形状データを3次元スキャナまたは3次元位置センサにより取得した。腹壁上の手術器具用ポート位置、術中のスコープ位置についても3次元位置センサにより計測した。さらに術中ナビゲーションシステムにおける位置合わせ手法の初期検討を行った。体表の点を用いて行う位置合わせではある程度誤差が出ること、体内の点を用いることにより誤差を減少できることが確認でき、来年度以降の術中ナビゲーションシステム開発にとって重要な情報が得られたと考えている。②CT画像からリンパ節領域を自動検出する手法では、開発した2つの手法を組み合わせることにより、リンパ節検出率94.5%を実現した。今後の課題として拾いすぎ(FP)の削減があげられる。また今後、実際の手術症例における検出率の評価や、正解データを学習データとして追加することにより、より精度の高い手法に改良することを目指す。また血管名自動命名手法および血管診断レポート自動作成手法の開発では、手術に関わる主な血管の診断率はおおむね良好であったが、一部診断率の低い血管もあった。特に診断率の低かったRGAやIMVについては、命名プログラム適応前の血管領域セグメンテーションが不十分であるため命名できない症例が多かった。今後血管セグメンテーションプログラムの改良などよってより精度の高い血管名自動命名システムの構築を目指す。③個別化外科解剖実体モデル作成技術の開発では、一部自動化できない部分があるが、おおむね実現できた。これまで解剖情報の提示がモニタ画面上のみであったものが、外科医にとって手に取れる形での情報提示となり、より立体的な解剖情報を直感的に理解しやすくなった。術前だけでなく術中の解剖情報確認にも有用であると考えている。
結論
術中画像データおよび術中データの収集においては、多くの症例データを蓄積できた。また術中ナビゲーションシステムの肝である位置合わせ手法の初期検討が行えたのは来年度以降の研究に有用と思われた。血管名自動命名システム、リンパ節自動診断システム、個別化外科解剖実体モデルの作成が可能となり、今年度に実施を予定した研究において良好な成果を得た。次年度以降に行う術中ナビゲーションシステムの開発に向けたデータ収集を行い、システムに求められる機能の一部を開発できた。次年度も引き続きデータ収集、プランニングシステム開発、術中ナビゲーションシステム開発を行う。
公開日・更新日
公開日
2015-09-14
更新日
-